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貴方のいる空に唾を吐く

叔父が亡くなった。
もう何度も会ってる人だった。
なんなら正月に電話した。

でもその時から既におかしかった。

電話口の叔父は酒に酔っていて、でもそれにしても何を話しているのかわからなかった。
(おそらく)シラフでもヘラヘラ笑うように陽気に話して、30分に1回はタバコを吸うような人だった。それにしてもだ。

死因はまだ調査中らしいが、衰弱死の可能性が高いらしい。
数ヶ月前、叔父が精神を病んでいるのではという話を小耳に挟んだ。叔父は少し遠いところに住んでるので、親戚と呼べる人は近くにいなかった。でも仕事柄連絡を取れそうな人はいそうだった。
きっとどの連絡も無視していたのだろう。
1人で考え込んで出てきた答えにもならない答えを、何度も飲み込んでは吐いてを繰り返していたのだろう。
今となっては全て想像に過ぎない。

この季節だ。形は残っているのだろうか。それとも、発見に至るくらい……。

親は(どちらかは伏せておく)遺品整理や本人確認のためか、しばらく叔父の住んでいた場所に行くらしい。葬式は……どうなるのだろうか。

わたしは葬式を経験したことがない。葬式に参列するほど近い人間が亡くなったことがなかった。今日までは。
服は何を着れば良いのだろう。抹香の手順はどうだったか。何か控えなければいけないことはあるだろうか。年賀状を出してはいけないとは聞いている。
全てわからない。身内がみんなして元気でいてくれた証だ。でももうこの歳だから、これから、近いうちに、もしかすると。

初めて"死"を身近に感じた。学生時代の後輩も、テレビの向こうの有名人も、こんなにヒヤリとした温度を持ってこちらに来なかった。この文章を書いていて、今やっと涙がおさまっている。
でもひとつ言うなら、空が馬鹿みたいに青く綺麗なのが嫌だ。なんだ、このクソッタレ。

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