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『裸のランチ』の私流楽しい読み方(合法)




本を読むことは子どもの頃からの趣味だ。
私が小学一年生の時に憧れていた知り合いのお兄さんが、「今のうちに本をたくさん読んでおくといいよ」と当時言ってくれたのがきっかけで、読書にのめりこんだ。憧れの人に近付きたいという大変不純な動機ではあったが、お陰で私は活字中毒少女に成長した。当時あのお兄さんは中学三年生だったが、あの歳であんなに素晴らしい助言をできた彼は何者だったのだろうか。今どこで何をしているのかも分からないが、私にとって人生の指針となった人である。


さて、そんな綺麗な思い出話をしておきながら、肝心の現在の読書量は人並み程度かそれ以下である。社会人になるまで、戯曲とホラーと好きな作家の本ばかり読み、読まず嫌いをしていたジャンルの作品が多々あった。これではいけないと、社会人になってからそういったジャンルの本も手にとるようになった。恋愛小説、ミステリー、サスペンス、専門書、ベストセラー本etc―――。



さまざまなジャンルにチャレンジしてるうちに出会ったのが、ウィリアム・バロウズ『裸のランチ』(河出文庫)である。
https://www.amazon.co.jp/dp/4309462316/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_27BH7PV3XX77MR525NCD





この本との出会いは、小説やゲームなど様々なコンテンツを解説する、双頭アト氏というYouTuberの動画を見たのがきっかけだった。
解説を聞いているうちに、これはなんとしても活字で読みたい!と思い、その日のうちにインターネットで購入した。




【双頭さんの動画】
書いた本人すら読めなかった奇書『裸のランチ』をゆっくり紹介するよ
https://youtu.be/wm8ROvuOEc4 





本書の大まかな内容、作成までの過程、ウィリアム・バロウズ本人については、双頭氏の動画を見てもらった方が分かりやすいと思う(この方の動画はどれも分かりやすく、作品に触れてみたいと思わせる力があり、私は『裸のランチ』以外でも作品を知るきっかけになった動画が多くある。是非一度チャンネルを見ていただきたい)。



ここでは『裸のランチ』の私流楽しい読み方を紹介したい。





①しっかり読まない。
どういうこっちゃ、と思われるかもしれないが、「読まない」のではなく「読めない」という方が正しい。「これはどういう意味なんだ?」と一文節毎に立ち止まって考えていても埒が明かないので、一度頭の中を無にして、「ふぅーん、へぇー」みたいな感じで活字を右から左に目で追う。なんとなく情景が浮かんでは消え、また浮かんだと思ったら場面転換して、さっきまでいなかった人間がなんの脈絡もなく登場していたりする。考えるな感じろの精神で読む。でも読めない。


②パッとテキトーに開いて途中から読む。
ストーリーというストーリーはほとんどない、いや、ストーリーはしっかりあるが読者が読もうと思うと失敗するので、好きな時間に、好きなページを開いて、『裸のランチ』の世界へダイブしよう。そしてすぐに戻ってこられる。この読み方も①と同じように読むこと。決して考えてはいけない。


③箸休めにオマケを読む。
最後の方に付いている作者が使ったことのあるドラッグのレビューみたいなのが最高に面白い。とんでもない内容を整った文体で書いているので、「この人は何を真面目に言っているんだ?」みたいなことを冷静に思える楽しさがある。今後ドラッグをする予定は一切ないが、本当に興味深い内容で面白い。訳者である鮎川信夫氏の付記も読みごたえがある。本文の箸休めにドラッグレビュー・訳者付記を読むと、トリップ状態を初期化できるのでオススメだ。



読み方紹介は、簡素だがこんな具合だ。



最後に、「ブクログ」という読書記録アプリで、本書の感想を書いた際の文章をそのまま引用する。

「高熱の時に見る支離滅裂な夢のような作品。その一瞬一瞬を味わえるので、途中で読むのを辞めてもはたまた途中から読んでも大丈夫だ。」

これは原文から日本語訳されているため、このような印象を受けたのかもしれない。ドラッグとの関わりももちろんないし、バロウズの体験してきた時代のゲイカルチャーも想像がつかない。ましてやそれが「カットアップ」で支離滅裂な文章になっているものだから、終始ふわふわとモノクロの夢の世界を漂っているような感覚に陥ってしまう。



『裸のランチ』は映画にもなっていて、映像化されている分、原作よりも理解はしやすい。とはいえ原作を一度読んでいないと、頭にハテナが大量に残る映画にはなっているし、原作を完全再現できているわけではないので、映画は小説と別作品と捉えた方が正しい。おそらく、ルイス・ブニュエル監督の『アンダルシアの犬』の映像とストーリーが好きな方には刺さるのではないか。映画をご覧になって、その後原作を読んでも良し、原作を読んでから映画を観ても良し。ちなみに私のオススメは交互に複数回観る・読むことだ。



反芻するごとに、スルメのごとく味が染み出てくるこの作品は、一度諦めてもまた読みたくなる中毒性を持ち合わせている。まさに「読むドラッグ」。パンケーキと大好きなアールグレイティーと『裸のランチ』。私はこの組み合わせが一番トリップできる、最高のドラッグだ。



このnoteを読んでくださったあなたも、是非『裸のランチ』を手に取ってもらい、独自の反芻方法を見つけてみてほしい。あくまでも合法な範囲で。



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