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映画『白蛇:縁起』感想




※このnoteは作品についてのネタバレを含みます。
今後映画をご覧になる予定の方は閲覧をお控えください。



数日前に映画『白蛇:縁起』を鑑賞した。
中米共同制作のフル3DCGアニメーションで、2019年に中国で公開され大ヒットした作品の日本語吹替版だ。中国の四大民間伝説のひとつである「白蛇伝」を元に、主人公である白蛇(ハク)の前生譚を描いた。


元ネタである「白蛇伝」や派生する作品類を知らなくても十二分に楽しめる作品だが、知っていたら100倍楽しめるので、鑑賞後でも構わないので一度調べて見てみてほしい。


一度観ただけなので、覚え間違えているところや、解釈の違い等あるかもしれない上に、箇条書きテイストになるのをご了承いただきたい。








・妖怪大戦争
アクションの迫力が予想以上だった。私自身フル3DCG作品を見るのが初だったのもあって、若干目が疲れるくらいアクション満載で見応えがあった。ゴジラ対キングギドラみたいな怪獣映画が好きな人にも刺さりそう。デッカい動物が好きな人は絶対好き。爬虫類と鳥類が嫌いな人は絶対に行っちゃダメ。
(同名の映画が上映されていることを先日知りました。)



・ヘビという生物に対してのこだわり
私はヘビが大好きなので、この映画のヘビに対するこだわりを強く感じた。
まずは白のしなやかな身のこなし。半獣や大蛇になった時はもちろんだが、人間の姿がヘビの滑らかなボディラインを感じさせるキャラメイクだったのに驚いた。
一番驚いたのは、ヘビが変温動物であることをきちんと描写しているところだ。凍りついた部屋で白よりも宣の方が寒さで身震いをしているところでそれを感じ、クライマックスのシーンでもそれを感じた。宣は妖怪になっても体温調節の部分は人間の機能を引き継いでいるところとかやけにリアルだった。クライマックスで、宣は静かに凍死して身体が砕けた一方、白は一瞬走馬灯のように意識が遠のいて(=冬眠状態)、絶命を免れたところも、描写力の高さを感じた(白の妖力の方が宣よりも勝っていたことが要因かもしれないが)。ここまで描写してくれると最高に気持ちが良い。



・日本語訳
最近私が中国語を勉強していることもあって、どんなふうに日本語訳されているのか気になるセリフが何点かあり、中国語バージョンも見たいなと思った。
おそらく会話の文末につけられるHuh?とかAha?とかみたいな感嘆の音が、日本語になると「〜〜〜だと思わないかい、ん?」みたいな、相手に共感を促す音になって、キャラクターの喋り方の癖のようなセリフになっているのがおもしろかった。翻訳家がそのように文字起こししているのか、演出家の指示なのか、はたまた役者本人の技術なのかは不明であり、あくまで私が聞きとった範囲での推測なので、中国語バージョンと見比べて確認したいところである。



・人間も妖怪もエゴイズムを抱えている
国師が自身の名声と力の増幅のために動いていたのは明白だが、同族のために指揮を奮っているように見えた蛇母も最後は私欲に溺れてしまった。この二人が二大巨頭完全悪のように見えるが、果たしてそうなのだろうか。愛のために何もかも捨てて生きようとした白と宣も、自身の欲望のために生き、身を滅ぼし永遠に愛を探し続ける呪いにかかったと見えなくもない。元ネタの『白蛇伝』が、元々妖魔で男性を惑わせて陥れる存在だったことを考えると、そういう見方があってもいいのかなと思った。ありがちな勧善懲悪より、生き物らしさが出ていて良い。



・青の生き方をどう感じるか
中国では7月末から、続編である『白蛇2:青蛇劫起』が公開されている。こちらでは白の妹である青が主人公として物語が展開する。今作では人間を忌み嫌う妹として、姉のサポートをする立場にとどまっていたが、姉のために永遠に添い遂げることを決めた青が今後どう生きていくのかが非常に気になる。
白と青は妖怪だが、宣は人間である。人間は輪廻転生しても必ず人間に生まれ変わるとは限らない(ラストシーンでハラマキに似た人間の男性が出てきたことから)、前世の記憶は同期されずに生まれ変わる。白は宣が何に生まれ変わってても、いつか巡り会えると信じて何百何千年も生き続けるのだろう。
問題はそれに付き合い続ける青の生き様をどう捉えるかである。不憫と思うか、永遠の愛と思うか。宣と出会った物語の時点で100年一緒にいるのでさえ人間感覚だと長く感じるが、そこから500年、主題歌に擬えたら1000年以上、はっきり言及はされてないが永遠の命なのかも。宣の愛とは違うベクトルの深い愛を姉に向け続けている青が、愛おしくて切なくて仕方ない。






さて、続編の『白蛇2:青蛇劫起』の日本公開が今から待ち遠しいが、その前に今作をあと5回くらい観なければならないなと思った。ハマると何回も咀嚼するのはオタクの性である。
他の方の感想も読みながら、今日も映画館に向かう。






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