昭和の暮らし:(25)アイロン

最近アイロンを衣類スチーマーに買い替えた。そのときに、昔のアイロンの様子を思い出した。

母が新婚のときに買ったらしきアイロンは、まだスチーム機能がなく、太い電気コードがほつれてきていた。昔のコードは糸で巻かれていたから。母によると、そのアイロンの前まで、つまり婚前は熱湯を入れるアイロンを使っていたという。

アイロンは木の箱に入っている。
蓋も木の薄い板に、ひっかかるところを作って本体を納める箱の上にはめるような蓋だった。その蓋を裏返して畳の上に置くと、熱いアイロンを載せられるようになっている。
木の箱を開けると、銀色に輝くアイロンが入っていた。アイロン本体は熱湯時代の形とそれほど変わりなく、取っ手は前後にまっすぐ、傾けることなくついていた。
木箱の前面(アイロンの咲が収まる方の側面)には、「ナショナル」のロゴが大きく入っていた。

アイロンがけの様子はよく見た。
電気を入れてしばらく待たないと熱くならない。ようやく熱くなったら父のズボンや子供のハンカチなどにアイロンを次々に当てていく。あて布をしたり、霧吹きをしたり、作業としては見て楽しいもんだった。

霧吹きは乳白色の逆三角の大きな水入れに、銀色の霧吹き機構が蓋を兼ねるものだった。真上からプッシュすると水が出る。

アイロン板は分厚くて、裏側にふすまの紙のようなものが貼ってあったような気がする。そのアイロン板を畳の上に置いて、その上にズボンをおいて、あて布の日本手ぬぐいを置いて、その上から霧吹きをする。

アイロンのコードは傷つきやすく、巻かれた糸がボサボサになってしまったので、父が何かで修理したという記憶がある。

そのアイロンをいつ頃まで使っていたかは覚えていないが、私が子供のうちはずっと使っていたと思う。家庭科の裁縫や、ミシンで縫うものを、そのアイロンで縫い代を押さえたりした。ある日、修理した電気コードが結局切れてしまったのか、電気を入れてもじゅうぶんに熱くならなくなって、買い替え時と判断された。

新しく購入したアイロンはスチーム式で、霧吹きは不要になった。スチームが出るアイロンを使うのが楽しくて、私も妹もよく使った。そのアイロンも長持ちしていて、私が家を出るときもまだ実家はそのアイロンを使っていた。