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【#100】ミステリー短編の最高到達点『満願』

なんやかんやで第100回になりました。
せっかくの節目なので縁起の良いタイトルの本を紹介したいなと思い、今回は『満願』という本を選びました。
(内容は全然縁起良くないんですが笑)

第27回山本周五郎賞受賞
2015年版「このミステリーがすごい! 」第1位
2014「週刊文春ミステリーベスト10」 第1位
2015年版「ミステリーが読みたい! 」 第1位

2014年のミステリー年間ランキングで3冠に輝いた、米澤ワールドの新たなる最高峰!

人生を賭けた激しい願いが、6つの謎を呼び起こす。人を殺め、静かに刑期を終えた 妻の本当の動機とは――。驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、交番勤務の警官や在 外ビジネスマン、美しき中学生姉妹、フリーライターなど、切実に生きる人々が遭遇 する6つの奇妙な事件。入念に磨き上げられた流麗な文章と精緻なロジックで魅せる、 ミステリ短篇集の新たな傑作誕生!

「ミステリー短編の最高到達点」なんてちょっと帯みたいなタイトルにしてみたんですが。

第27回山本周五郎賞受賞
2015年版「このミステリーがすごい! 」第1位
2014「週刊文春ミステリーベスト10」 第1位
2015年版「ミステリーが読みたい! 」 第1位


この圧倒的な受賞歴を見れば決して誇張ではないことがおわかり頂けるかと思います。

ストーリー展開。
心情の奥行。
文体の美しさ。

読書の良さの全部が無理なく自然に詰まっているような名作。

特徴は普通のミステリーとは違って純文学っぽさを感じるところです。

普通のミステリーは登場人物の心情や、人間としてのリアリズムなどは割と淡泊に描かれて、トリックやストーリーの面白さを際立させる感じになっています。
(わかりやすい例がマンガですが、名探偵コナンです。他殺死体に直面するなんて普通はトラウマレベルですが、高校生の蘭姉ちゃんはおろか、小学生の歩美ちゃんたちですらすぐに平常心を取り戻します(笑)ここにリアリティを追求しちゃったら面白くないですよね)

ですが、この作品は夏目漱石あたりの作品を読んでるのかな?と思わせるぐらい人間描写・心情描写が真に迫っていて、ミステリー要素がなくても楽しめてしまいます。

「そういうことかー!」
とか
「面白かったー」
という爽快な読後感のミステリではなくて

一話読むごとに本を閉じて天井を見て何か考えてしまうような味わい深さがあります。

なんだかすごく玄人っぽいことを書いている気がするんですが、難しい描写があるわけではなく、むしろ文体としては読みやすい方です。

この読みやすさと格調の高さが同居してる感じがカッコいいですよね。

この本は

「ミステリーなら読めるけど純文学には敷居の高さを感じている」
という人にこそ読んで欲しいです。
これをきっかけに読書の幅が広がることは間違いないでしょう。

内容はちょっとダークですが、記念すべき第100回の記事に文句なしの名作を、ということでご紹介してみました。

ミステリーの面白さと純文学の奥深さが奇跡の両立を果たしている傑作。
ご興味のある方は是非。


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