【#94】大人こそ読解と作文に骨太の技術を『レトリックのすすめ』
●●●こんな人にオススメです●●●
・話す技術を磨きたい人
・書く技術を磨きたい人
・文学作品をより深く味わいたい人
理性と真直ぐな心があれば
技巧など拙くとも言葉は出る
言うべきことが真剣ならば
何で言葉の先をひねる必要がある?
光彩陸離と輝く雄弁の言葉などは
人類をいかなる美辞麗句で飾り立てようとも
秋の枯葉をいたずらに鳴らす湿った風に似て
ひとの心を甦らす力を持たぬ
すごく良い一節だと思いませんか?
これは、今回ご紹介する『レトリックのすすめ』のまえがきで引用されているゲーテ『ファウスト』の一節です。
(つまり上記は引用の引用です)
僕は本業は学習塾の経営&講師です。
10代の生徒たちに語りかけ、そこに少なからぬ影響を与えてしまう立場として、この言葉はずっと大切にしています。
表現の技巧を否定しているかのようにも見える文ですが、紹介するのはレトリック、つまり「表現の技巧」に関する本です。
本当の技術の本当の意味
矛盾じゃないか。
と思われるかもしれません。
「理性と真直ぐな心があれば、技巧など拙くとも言葉は出る」のであれば、技巧などいらないじゃないかと。
僕の考えは違います。
冒頭のゲーテの一節で批判しているのは
技巧ばかりを追いかけて中身を伴わない言葉のことであり、
やはり自分の思いや考えを真直ぐに相手に理解してもらうために技術は必要です。
この本のまえがきでも説明されていますが、レトリック(表現の技術)とはヨーロッパ由来のものです。
日本と違って地続きで色々な国が隣接しているヨーロッパでは、異なる思想や文化を持つ人たち同士の交流が当たり前でした。
だから自分の考えをより正確に、力強く相手に伝える技術が発達したわけです。
この本が教えてくれるレトリックとは
「中身のない人でも、この技術を使えば相手を説得できたり、力のある文章が書けるよ」
というものではなく
「あなたが本当に思っていることを伝えたいなら、本当の技術を身につけませんか?」
ということです。
読解と作文の教科書
これまたまえがきに載っているのですが、この本におけるレトリックとは「読解と作文のための便利なマニュアル」なのだそうです。
本編では表現の技術を12にカテゴライズして、文学作品からの実例を交えながら解説しています。
少しだけ列挙してみると
・比喩
・擬人法
・対照法
・婉曲法
・反復法
まるで国語の教科書に出てきたような言葉に拒否反応を起こす人もいるかもしれません。
確かに内容として読書慣れしていない人にはキツいかもしれません。
引用される作品も文学感が強い文章ばかりです。
ただ、ちゃんと解説はついていますし、読める部分だけを読んでも勉強になると思います。
名文の中で使われるレトリックをいくつも見ることで「目」が養われます。
それによって文章を読む力だけでなく、自分が表現側に回った時にも自分の表現の良し悪しがわかるようになり、表現技術も向上します。
ちょっとおカタめの本に見えるかもしれませんが、骨太の技術を身につけるために挑戦してみたい方は是非!
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