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落書き

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小説と絵の落書きをまとめます。
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2020年10月の記事一覧

緑人間の一人ご飯

緑人間の一人ご飯

食事は心の栄養
人口爆発による食糧危機を経験した人類は人体に直接葉緑素を埋め込み光合成によるエネルギー補給を可能にした。その結果生まれた緑人間は食事の必要性がさがり、安価な労働力として重宝されるようになった。
その緑人間にも当たり前だが人権はある。
私は今日は仕事を休んでローカル線を乗り継いで一人旅だ。車窓に映る潮騒は普段にはない景色で、軽い冒険心を掻き立ててくれた。
目的地に着いたので駅の周りを

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最終ラインポイントゲッター

最終ラインポイントゲッター

俺はまだやれる……っ!サッカーにおいて、ディフェンスというポジションが得点を期待されることは少ない。それは単純にポジションが相手ゴールから遠いということもあるし、それよりも自陣のゴールを守ることが求められるというのもある。
そんな中でチーム一のスコアラーが最終ラインに居るクラブがあった。
そのクラブはセットプレーからの得点に強みがあった。セットプレーにおいては空中戦が求められるというタイミングであ

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デブの少食

デブの少食

彼女についていたのはほんとに悪霊だったのか?私は自分に自信がなかった。とにかく自信がなかった。職場でもよく体型をネタにいじられ、なにも言い返せない自分が情けなかった。
「なに食ったらこんな腹になるんだよ。」
そう言われても苦笑いで誤魔化すしか出来なかった。私の家系はどうも太りやすい血筋らしく、一般の一人前の食事でも十分以上にふくよかな体つきになってしまう。
ダイエットを試みなかったわけではない。し

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醜い墓守

醜い墓守

醜い顔に生まれたものは信心深いが機会が恵まれることはなかった。金の魅力に抗うだけの温もりを誰も与えてくれなかったのだ。

俺は物心つく前に教会の前に捨てられていたらしい。
孤児だった俺は教会の神父様に拾われることになった。しかし、醜く顔の歪んだ俺は誰の愛も受けることはなかった。教会を訪れる人の前には姿を見せるな、というのが神父様からの最初の指示だった。やがて一人で自分の世話をみられるようになったこ

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言い切られると弱い系女子

言い切られると弱い系女子

彼の自信はどこから来るのだろう?幼い頃から私は周囲の視線に敏感だった。
始まりは小学校で同じクラスの男子に悪口を言われたことだった。私にはまるで心当たりがない、本当にただの悪口だった。当時の私はそれでもひどく傷つき、泣いてしまった。そのことを友達に相談すると、友達は親身になって話を聞いてくれて同情してくれた。それで私は一人ではないのだと心強く感じた。それも友人が私の陰口を叩いてるのを知るまでだった

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藍色のスカーフ

藍色のスカーフ

人の大切なものを奪うことの、なんと甘美なことでしょう?

私には年の近い妹がいる。
昔からよく一緒に遊んでいた。小学生の頃までは私が友達と遊ぶのにも妹はついてきた。
私は妹が好きだった。だから一緒に遊べて楽しかった。しかし、ある時学校で友達に言われたのだ。
「妹ちゃん、同じクラスにちゃんと友達はいるの?」
盲点だった。その時まで私は妹が学年で孤立しているかもしれないということに考えが至らなかった。

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妻に秘密のお楽しみ

妻に秘密のお楽しみ

思いやりがすれ違う、優しさゆえの勘違い

私には妻と娘が一人いる。最近は娘の世話にも手がかからなくなり、一人の時間を持てるようになった。
「ねえ、お父さん。夜に一人でなにしてるの?」
娘のその一言が食卓の空気を凍りつかせた。
「一体なんの話かな?」
私は背中に冷や汗が伝うのを感じた。
その話は私には都合が悪いものだった。すぐにこの話は終わらせなければならない。
「えー、なになに?お母さん、その話詳

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魔法使いが魔女になる理由

魔法使いが魔女になる理由

信じていた姉に期待を裏切られた時、彼女と自分のどちらを信じればいい?
私は幼い頃からお菓子作りが好きだった。
お菓子作りは厳しい両親が見逃してくれた数少ない趣味だった。
学校から帰ってくると宿題よりも先にお菓子の仕込みを始め、待ち時間を利用して宿題を終わらせて、お菓子の出来上がりを確かめた。
そうやって作るのは好きだったが、人付き合いに難があった私はそのお菓子を食べてもらう相手がいなかった。
そん

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谷間の世代と誰が決めた?

谷間の世代と誰が決めた?

見下されたら黙ってはいられない。実力でもって見返してやる。
出来損ない、谷間の世代。
高校時代、私たちの学年の新体操部は顧問にずっとそう呼ばれてきた。
その言葉を聞くたびに私は酷く傷ついた。
確かに先輩方に比べると覚えが悪かったり、いたずら好きが多かったりするのかもしれない。それは普段の練習や休み時間の遊び方からもなんとなく察していた。
しかし、それを面と向かって怒鳴られると流石に気分が悪くなった

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シャドーイラストレーター

シャドーイラストレーター

やりたいことと向いていることが違ったら、どちらを選ぶ?
SNSでバズりたい。
そんな承認欲求がない人間がいるのだろうか?
私はネットで絵師をしている。
私はバズりたい。何をしてでもバズりたかった。毎日更新は欠かさず、リクエストにも積極的に応えていった。しかし、リツイートが伸びない。話題のネタには乗り遅れていないはずなのに。
私は次第に焦りはじめた。どうしたらいいのかわからなくなった。
そんな時、相

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君は笑えばそれでいい

君は笑えばそれでいい

人のために人は変われる
あの子は特別だから。
私がそう言われていることに気づいたのは、小学生の頃だっただろうか。
実際のところは少しばかり聞き分けが良かっただけだ。ただそのせいでノリが悪い、みんながやっているのに私だけやらない、ということが多少あった。
無視されるようなイジメにはつながらなかったが、なにか面白そうな、そした少し悪いことをする時には私は誘われなくなった。
そんな自分に少し違和感を感じ

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私だけのタカラモノ

私だけのタカラモノ

美しい花は私だけのために咲くべきだ貴女は美しい。
咲き誇る花のように視線を集めて離さなかった。
日の光のように温かな笑顔は人の心の壁を溶かし、堅物も含めて貴女を意識しない人はいなかった。
そんな貴女が私は憧れた。
少しでも貴女に近づけるように努力を惜しまなかった。学校の勉強、立ち居振る舞い、お花やお茶の練習から経済の話題まで、どんなことにも全力で取り組んだ。
しかし、私は貴女に近づくどころか、返っ

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ホトトギスの君

ホトトギスの君

後輩の存在が自分が成長したと教えてくれるホトトギスが鳴いている。風にそよぐ桜並木の影に二人の少女の姿があった。
木陰で寝転ぶ小柄な少女とそれに膝を貸して髪をもてあそぶ短髪の少女。
春ののどかさが日の光を心地よいものに感じさせた。
女学校では年長の生徒が年少の生徒の面倒を見るという姉妹制度があった。姉妹の枠を超えて情熱に身を焦がすもの、反発を覚えるもの、姉妹制度への受け止め方は人それぞれだが、親元を

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