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【創作小説】佐和商店怪異集め「榊の誕生日」

いつもの佐和商店。
閉店後の片付けも一段落したところで、菫は傍らにいる榊を見やる。
「榊さん、お誕生日おめでとうございます」
「今朝もメッセージくれたけど、やっぱ直接言って貰う方が嬉しいな。サンキュー」
照れるでも茶化すでも無い笑みを浮かべ、榊も菫を見やった。菫はその笑顔を見、ほんのり頬を染める。
「プレゼントも用意してますけど、外出る時の方が良いかもしれません」
「なになに?じゃあもうさっさと上がろうぜ」
目を輝かせる榊に、菫はやや呆れた表情をした。
「仕事はちゃんとしてください」
「分かってるよー」
分かっていなさそうな調子の声に、菫は溜息をついた。

「で、プレゼントって何?菫から貰えるなら何でも嬉しいけど」
帰り道。榊はうきうきと菫を見る。菫は少し笑いながら、そんな恋人に紙袋を渡した。
「直ぐに使えるものです」
早速、榊が中の包みを開けてみれば。
「マフラーか!」
深い緑色のマフラーを広げ、榊はパッと笑う。
「シンプルなものにしてみました。何を着ても、合わせやすいかなと」
「暖かいな!」
早々にマフラーを巻き、榊は嬉しそうに無邪気に笑う。
(こんな風にも笑う人なんだ)
知らない表情。それを、自分だけに向けてくれている。菫は吸い込まれるように、榊を見つめた。
「すみちゃん?」
菫はぎゅ、と榊を抱き締める。榊は一瞬目を丸くしたが、直ぐに笑う。
「最高の誕生日だよ。ありがとな」
菫は榊を真っ直ぐに見上げる。
「これからもよろしくお願いします」
「おう、よろしく」
榊は菫の力よりも強く優しく、抱き締め返した。

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