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再演熱望!アデス×角野隼斗

行ってきましたアデス! すごかったです!
歴史の目撃者になっちゃいました! 日本初演! アジア初演ですよ!
念願のショパンコンチェルトの感動が凄すぎて、ちょっとやそっとじゃ感動しない体になってたはずなのに2日経っても興奮がおさまらない笑
というわけで今回は冷静を装ういつもの文体ではなく、このまま素の状態でいきたいと思います。

宇宙に行けそうな銀座線渋谷駅。ここからアデスとホルストの宇宙大冒険の旅へ!

はじめに【今回の公演について】

まず、今回の公演について。
今公演は、東京ニューシティ管弦楽団が【パシフィックフィルハーモニア東京】と名称を新たにして一期目の定期公演のひとつとして約1年前に予定が組まれたものでした。ショパコン本大会前、9月の発表でした。

新音楽監督に就任した指揮の飯森範親マエストロは、今年度の定期演奏会に日本初演の曲を3曲取り入れ、そのうち1曲のソリストに ” かてぃん ” こと角野隼斗を大抜擢!
かてぃんさんに依頼があったのはトーマス・アデスの【ピアノと管弦楽のための協奏曲】でした。

終演後のTwitterSpace(ツイッターのキャスみたいなやつ)では飯森マエストロが当時を振り返り、「正直言ってね、楽譜みないで(音源だけ聴いて)決めちゃった、あとで楽譜みたら唖然としちゃって」と明かし、「僕もファーストインプレッションは楽譜じゃなかった気がします」とかてぃんさんも応じて一同大爆笑の一場面がありました。

なんかもう、この時点で既にマエストロの決め方とかてぃんさんの引き受け方がジャズのグルーヴじゃないですか! ノープランで楽器持ち寄って「じゃとりあえずテキトーに合わせてみよっか」みたいな。
※TwitterSpaceでのアフタートークのリンクはレポの最後にあります。

↓ 作品について二人が語り合っている記事

それから、飯森マエストロのお話がすごく共感できたので一緒に貼っておきます。来シーズンは古典に影響を受けた近現代の作曲家たちの作品を織り交ぜたいとのお話も! あれ? 最近似たようなこと言ってる人がいたような……(もしかして:Reimagine

アデスと【ピアノと管弦楽のための協奏曲】

ここでアデスや曲についての情報を備忘録兼ねて少しだけ書いておきます。

◆トーマス・アデス(Thomas Adès, 1971年3月1日 ロンドン - )
・イギリスの作曲家でピアニスト、指揮者でもある
・映画やオペラの音楽なども手掛ける
・ショパンが好き(MIKIKIより)
・オフィシャルサイト:http://thomasades.com/

ピアノと管弦楽のための協奏曲(音楽出版社のサイト(英語) 楽譜あり)
ボストン交響楽団キリル・ゲルシュタインのために書かれた曲
・全三楽章からなる
・ゲルシュタインについて
  ・バークリー音大でジャズを学ぶ
  ・ガーシュウィンの録音もしている
  ・ルービンシュタイン優勝
・そのため、曲の中にジャズのエッセンスがちりばめられている
・アイ・ガット・リズムが見え隠れ(npr musicより (英語) )

この情報だけでも、「これ、角野隼斗にぴったりじゃん」状態。

ちなみに、レポの時系列が前後して先出しになってしまうけれど、この日のアンコールにアイ・ガット・リズム(角野隼斗編曲版 10 levels of "I got rhythm")が演奏されたのは上記の繋がりによるものですね。

今回の公演のレポは、もうたくさんの方が詳細に上げていらっしゃる上、私は2階の最後列からの鑑賞だったため、私からは、かてぃんさんが一体どんな音で、どんな歌い方で弾いていたかの印象をお伝えしたいと思います。
お暇な方はお付き合いくださると嬉しいです!

※個人の感想です!!



トーマス・アデスの音楽から感じたこと

定期演奏会の発表があった1年前から時々アデスを聴いては思っていました。
当時はショパコンの真っ最中&激凹みの時期があったので、よく聴くようになったのは年明けのツアー頃からかな。でもこの公演、平日なので自分は行くことは諦めていました。もともと自分が遊びに行くという理由で子供たちを義父母にお願いするのは気が引けるし、しかも稲刈り時期だしっていうのもあって、こりゃ言い出せないなと。なのでそんなに熱心に情報を拾いに行くことはなかったんです。なので行けそう! となったここ一週間くらいでぶわーっと。前に見た記事とかもすっかり忘れていたりもしたし笑

初めて聴いたアデスの曲は今回の協奏曲の音源だったわけですが、他の曲も聴いたらアデスをもう少し理解できるんじゃないかと思って、サブスクでいろいろ聴いたんです。全部は聴ききれてないんですが。そしたらですね、なんというか、なまめかしいなと。それも正面から直接的なものではなく、内側からじわりと滲んでくるようなじれったさで。
音楽としては現代音楽というものに抱きがちな偏ったイメージ(前衛的、実験的、意味不明、など)はあまり感じず、メロディアスでキャッチー。クラシックの歴史や秩序、文脈にもきちんと従っていて、その上で個性的な音楽という感じがして、そのギャップなんでしょうね。そこに禁欲的な不自由さと、自由奔放な享楽性とが同居するような……独特のエロティシズムを感じていました。好きなんですよ、こういう世界観。

ここで聴いていただきたいのは、エマニュエル・アックスのために作曲されたというマズルカ。ええ、マズルカですよ! しかもエマニュエル・アックスといえば、突然のハヤト大好き宣言の人です!
詳しくはコチラ

どうです? 滲んできませんか?

かてぃんさんは、普段はこういう、ある意味で芸術と切り離せないエロティシズムの美学に興味を見せることはあまりないと思います。少なくとも自分は聞いたことなくて。
だから今までは、彼の音楽性の中にあるであろうとは感じつつも、あまりこの部分にはなるべく触れずにいたのだけれど。
だってほら、女性ファンが男性アーティストにこういうのって、一歩間違うと生々しくて事故るじゃないですか笑

ただ時々、ラテンものといっていいのかな? リベルタンゴとかそういうのを弾くときに垣間見ることがありました。彼の弾くリストやショパンなどからも時折ものすごく感じます。
そういうとき、「あー……本質に持ってんだこの人は」と、自分が好きな世界観を見せてもらえて嬉しかったりしていました。

なのでそれが今回のアデスで顔を出すかどうかというところも、実は個人的な見どころ聴きどころのひとつでした。かてぃんさんは楽譜に書かれている情報から作曲者本人の意図を探り当てて、それを再構築して聴く側に届けてくれる人だと思うので、アデスの曲たちから感じるものが本当にアデスの成分であるなら、必ずかてぃんさんも掴んで見せてくれるはずだと。

結果……どストライクなアデスが私の脳を満たしました!
でもアデスに限らず音楽は単色ではないし、感じ方もそれぞれ。音楽家が音楽を発信したとき、それを受け取る観客は、あらゆる要素の中から一番共感が持てる部分を強く聴き取るのだとも思います。
今回の私は、アデスのエロティシズムにフォーカスしていたから、余計にそこが聴こえたんじゃないかと思っています。

【ピアノと管弦楽のための協奏曲】

一言で言うと、めっちゃくちゃ楽しかったです!
演奏する方たちはめっちゃくちゃ大変だったんじゃないかとは思いますが、その大変さがこっちに押し付けられるようなことは一切なかったし、飯森マエストロの集合テクがものすごい安心感にもなってて、それはたぶん弾いているメンバーにとってもそうだったんじゃないかと思います。
公演後のトークでは「合流地点」と言っていましたね。その合流地点まで、みんなノリでいいよ! という大らかなフレキシブルさもあって、変な話、楽譜通り弾かなきゃ死ぬデスゲームでもないわけですよ。コンサートは楽しむのが最優先でしょ! って。最悪の最悪、迷子になってもココはビシっと揃える所、というのが随所に配置されていて、そこに飯森マエストロのタクトが本当にビシ! っと決まるわけです。あれはクセになる。ちょっとヤミツキ感ありました。かてぃんさんがアフタートークで合流地点のことを「アデスの優しさ」「(エゲツない楽譜の)ムチの中にアメがある」とか言っててそれも笑いました。

かてぃんラボでのかてぃん先生曰くの「ジャズの即興を敢えて楽譜にしたらどうなるかのようなもの」という趣旨もある曲だとすると、ものすごい雑な汲み取り方をするとしたら、もうこれは、合流地点以外は全部が即興! という話になるんだと思うんです。なので、臆して音楽が止まってしまうくらいなら、アデスの掌の上でハチャメチャ遊んで楽しんだほうがいいよ、っていう曲なんじゃないかとも思ったり。
ハズれることを怖がって誰かが誰かに合わせようとしたら、後出しになってグルーヴが損なわれてしまう、それでは本末転倒なんですよね。

楽譜はきっと音楽を生かすためにあるもので、楽譜で縛った形だけの音楽を残したいわけじゃないんだと。飯森マエストロの指揮から、なんかそういう本質みたいな大事なものを受け取れた気がしました。
もちろん、これは演奏するオケやソリストのレベルの高さを信頼しているからというものビシビシ伝わりました!
だからこっちも拍がどうのとか気にせず、踊りたい衝動を抑えるハメに笑

実際、楽譜の通りだったかどうかなんて、素人の私にはわかんないし笑 でも迷子になんてなってなかったと思います! とにかく各セクション聴かせどころはキッチリ、そして合流地点は絶対集合厳守! それ以外のところのグルーヴィーさも気持ちよくってサイコーでした!

かてぃんさんの音について。
ガチのボーダレスになってました。

もともとボーダレスじゃん何言ってんのと思われるかもしれませんが、今までのかてぃんさんは越境する人という意味でボーダレスでした。彼の中にもボーダーがあって、そこをひょいっと越えて行ったり来たりしてたんだと思いました。
いつだったか……フォロワーさんとこの話をしたこともあって、そのときもボーダーが取り払われた感じがしたんですけど、この日の演奏は、地平線まで見えそうな果てしないボーダレスを感じました。シームレス、フレットレス。継ぎ目のない音楽の歴史が全部そこにあって、音楽が生まれた瞬間から角野隼斗までが切れ目なく繋がっていました

幸運にも、私はこの1ヶ月のあいだに、かてぃんさんの公演を4回も鑑賞することができました。しかも、ちょうど1ヶ月前のショスタコーヴィチはこの日と同じサントリーホールで、どちらの座席も2階正面最後列。曲は違うけど、ショスタコも近現代の作曲家でアデスとの時代も近く、条件の似た状況で聴き比べることができて、かてぃんさんがNOSPRの来日を挟んだ前後で演奏がガラリと変わったと感じました。

これまで、特に近現代系を弾くときのかてぃんさんは、ショパンやリストなどロマン派時代の作曲家のものを弾くときとはスイッチを切り替えているような印象でした。クラシックとジャズやポップスは弾き方が違うとも以前ラボで話していたことも。弾く曲によって衣装のテイストを変えるのも、観る側への視覚的な演出でもあり、着る本人のスイッチだとも思うんです。
ちなみにこの日はノータイの黒スーツ。ショパンなどのガチクラより一段階カジュアルにしてました。

ひとつ前のnoteで、バッハなどの古典(よりもっと前)は、現代作曲家のアデスやロック、ポップスに脈々と受け継がれているんだってことを書いたんですが、今回、生で聴いて、かてぃんさんの演奏からそれがめちゃくちゃダイレクトに感じられて、本当に素晴らしかったんです。

0時で日付が変わるという境目は人間が決めたもので、朝までオールして遊んだら、0時の前と後では何も変わらない。そんな感じ。100年前も200年前も、1000年前でさえ、眠らない音楽は何も変わってなどいないんですよね。

一番顕著だなと思ったこと。かてぃんさんが弾いたアデスの協奏曲は、音源でずっと聴いていたゲルシュタインのそれには感じなかった成分を感じました。

それはショパン。
かてぃんさんの音捌きが、時々すごくショパンだなと。
そういえばここ進〇ゼミでやったとこじゃん的な、ショパンエチュードにあったような、NOSPRのショパン練習ラボでゆっくり弾いていたようなところにもあったような指回りの音の形の数々。たとえば、一楽章の終わりちょっと前のとこ、ショパンのソナタ2番の第四楽章っぽい。(かてぃんさんの弾き方を『蝿』って呼んでます)

該当箇所貼っておきます。ゲルシュタインはジャズみ寄りというか、蝿にしないでアクセントをつけて処理してる。正しい正しくないがあるとしたら、もちろんゲルシュタインのために書かれた曲だから、これが正しいんだとは思います。一方で、もしかしたらショパンが聴こえる角野版のほうが、アデスという『原作』に近いんじゃないかなとも。
ゲルシュタインに書かれた曲だけど、原曲はアデス。いわば合鍵であるゲルシュタインに倣って弾いたら合鍵の合鍵になってしまう。かてぃんさんがマスターキーであるアデスに迫ったからこその解釈だと思いました。

アデスはショパンが好きで、ショパンはバッハが大好きで、この協奏曲はガーシュウィンオマージュが入ってて、ラヴェル、バルトークなどのエッセンスも感じる。そしてラヴェルやバルトーク、ガーシュウィンの中にも、それ以前の音楽がみっちり詰まってる。それらの全て、かてぃんさんなら音楽のことを知らない私よりも多くのエッセンスを感じながら弾いたんじゃないかと思うんです。

かてぃんさんは、その積み重なる歴史を時代や個で区切らず、無段階の行き来を自然に行っている感じがしました。ジャンルや時代の特色は出しながら、しかし隔たりなく。角野隼斗の新たな境地だと思いました。このことで、現代音楽のアデスにクラシック音楽の歴史という重厚、濃厚な味わいがあることが明確になって、軽いのに奥が深い、そういう演奏になってました。

それでいて、クラシック一筋では出せないであろうグルーヴは、やっぱりかてぃんさんがいろんなジャンルに興味をもって弾いてきたからこそ。アデスは、時代もジャンルもひと続きになった音楽を全て体の中に持ってる人じゃないと弾けないんだと思いました。ゲルシュタインも子供の頃にバッハのコンクール獲ってたりする、ひと続きの人だし。

日本には今、ガチクラの協奏曲に引っ張りだこでポップスもジャズもやってるよ! というピアニストは、角野隼斗しかいないんじゃないかと思います。なんせ自分のソロツアーにオーケストラ呼んじゃうピアニストですから。ポップスやロックのほうで演出として呼ぶのは普通にあるけど、ガチクラでは今までにあったのかな。いても相当珍しいのでは。
という感じで、アデスを物理的に弾ける人は、なんだかんだいってもいると思います。でも角野隼斗じゃなきゃ、だめなんだと思いました。

きっと飯森マエストロも、一番ピンときて託せると思ったのが角野隼斗だったんだと思います。そして実際にやってみて、飯森マエストロの記事中にあったように、アデスや角野隼斗というソリストにも、古典から近現代までのひと続きの音楽を見たのではないかな、なんて思いました。

もしかしたら、私が深読みしてるだけで、単に偶然に、ついこないだまでショパン弾いて弾きまくってたからクセが抜けてない、だけだった可能性もゼロじゃないので、そうだったら恥ずかしい笑(でもそんなヌルい根性の人ではないと思っています)

そうだったとしても、ツアー直後にこの公演があったというタイミングの奇跡じゃないかって思います。

それから、アデスの協奏曲によってひと続きの音楽という体感を手に入れた、というだけじゃなく。ツアーの10日目、山形で感じた王の風格とか貫禄、すごいマジェスティックな空気纏ってたやつ。あれが、長いツアーの終わり頃の慣れからきている期間限定の余裕ではなかったということも感じました。この日のかてぃんさんもキングでした。
1音1音の説得力が、ツアー前と本当に全っ然違ってました
(9月のツアー中に変化(進化)したかてぃんさんについては川口山形の感想をぜひご一読いただけると幸いです)

この曲は自分にしかできないって自負に近い責任感もあったように感じました。自分のグルーヴをオケに感染させるんだくらい、ほとばしってた。ほんと凛々しかったし頼もしかった! かっこよかった!

このレポの最初に貼ったリハ動画からも感じられると思うけど、本番の空気はこんなもんじゃなかった。ステージから一番遠い場所にいるのにクラクラしました。覇王色の覇気ですかあれわ……(©ワンピース)

そりゃオケメンもかてぃんロスなりますよ。あんな空気を同じステージ上で浴びちゃったら、致死量超過ですって。

特に二楽章のここ……この嘆きのような叫びのような、心の葛藤が渦巻いて抑えきれない感じ……。だけど力強く自分の足で立ってるんですよ。こんなになってるのに折れない。すごい凛々しかった。オーケストラもすごくて、ピアノもオケもテンポとか音量の上がり方がめっちゃくちゃ絶妙で。あとたぶん飯森マエストロがこういう盛り上げ得意だと思う(特級ファイナルでもリハでやってた)
盛り上げ得意といえば、一楽章の終わりで拍手したくてヤバかったです。飯森マエストロ、音源よりめっちゃカタルシスみある音でシメてて爽快感ハンパなかった笑 うん、好き!

二楽章といえば、ピアノの弱音とオケが交差するところも本当に美しかった。ピアノの右手が銀の針と糸みたいに、オケや重たい左手の音の中をスーッと縫っていくような。透き通っているのに金属的でもある、凛とした音が綺麗でした。

あと二楽章ついでに毎度お気に入りの動画も貼っておきます。もうTwitterと合わせて何度貼ったか笑
ドローンの群舞、綺麗すぎませんか。後半の惑星に使ってたLED使ってアデスでもやってほしかった!

三楽章はもうね、大盛り上がりでしたよ!
全楽章通して、かてぃんさん要所要所で低弦を唸らせまくってたんですが、三楽章は本当にやばかった。この低弦の汚しも、かてぃんさんならではの音だなと思います。エイジングというか、タバコ臭い時代を彷彿させる感じ。ちょっと古いピアノみたいに聴こえて、それがジャズみにもなってる。
パーカッションも惑星みたいなド迫力で、ピアノなんて大宇宙に放り出されたらちっぽけな存在だと言わんばかりにソリストをかき消す勢いがすごかった! でもいいんです、その全部が一体になって迫ってくる感じがいいんです! 「ピアノ」と「管弦楽」のための協奏曲ですし! こういう時の角野隼斗は決して無理に叩きつけて対抗しません。オケに潜って波に任せて浮上の機会を待ってる感じ。そしてじゃーん! と奈落から飛び出してくるみたいになるのもかっこよかった!

汚しテクもそうだし、かてぃんさんはやっぱり音が面白いですね。同じ高音でも、空気を含んで弾力のあるホイップみたいな音だったり、釣鐘風鈴みたいな音、宝石が煌めくような音、それらが時に同時に聴こえる。フルートやハープかと思ったらピアノでした、みたいに多彩。

これを暗譜するだけじゃなくて音色の使い分けまでするんだから、頭の中どうなってんのって思います。タブレットがピアノの中に置いてあったらしいですが、譜面台にないということはもうお守りみたいなものだったんだろうな。覗き込んで弾いてる暇もないもの。

アンコール【10 levels of "I got rhythm"】

最初のほうで先に書いちゃいましたが、この日のアンコールはこちらでした! 今日はコレしかないよね、知ってた!

アデスのオープニングの音から始まって、めちゃ粋なアレンジになってて、アグレッシブで攻め攻めなのかっこよかった! それでいて超エレガントで、上でも書いたように、かてぃんさん、ジャンルの使い分けスイッチの切り替えが曲ごとじゃなくて、曲の中で自在に操れるようになってるって思いました! やったね、AIかてぃんに無段階調節機能が付いたよ! 最後もアデスのフィニッシュに感じたアイガット風味が、今度は逆にアイガットをアデス風味にしてた感じ!

遠くの席からは表情はよく見えなかったけど、飯森マエストロもオケメンの皆さんも楽しそうでした!

グスターヴ・ホルスト【惑星】

平原綾香の『Jipiter』でも有名な組曲。全楽章の演奏は1時間近くになるためか、なかなかフルでの演奏機会がないのだそうです。貴重な機会でした!
実は、この日のプログラムにはオープニングの短い曲がなかったんです。なんとか序曲とか、よくやりますよね。これってたぶん、惑星が長い曲だからだったのかも。そんなタイトな公演なのに、たくさんカーテンコールしてくれて、ソリストアンコールも入れてくれて、本当にありがとうございましたの気持ちでいっぱい。

最初、真っ青なライティングで照らされて宇宙空間みたいなステージに。そして突如、敵襲みたいな赤いLEDが浮遊して整列。照明も真っ赤に染まりました。

私は最初それがLEDとは思いつかず、(アデスのドローンのイメージだった)えっ、ドローン? いやあれ下に人いたらダメじゃなかったっけ? みたいになって、そしてそれが上下運動していることで、ああ、吊り下げ照明だ、と気付きました。
その後も星ごとに色を変えて、映像もついての演出と音楽が大迫力でした。
この公演とセットだった5月の【マザーシップ】の様子から、視覚演出があるなら一番後ろから観たい! と考えて座席を選んだので、真正面で堪能できて本当にヨカッタ!

私の席からの眺めはちょうどこんな感じでしたよ!

まだ、日本ではあまりこういった試みは多くないみたいなので、どんどんやってほしいと思います。でも贅沢を言えば、ガチの第一線でやってる照明アーティストさんとか映像クリエーターさんとコラボしてほしいなぁ。ライティングも奥が深いので、バンドのライブとか見慣れてる人間からすると、クラシックのはまだ始まったばかりなんだなって感じました。
一流の音楽には一流の映像と照明を、ぜひ!

あとは、機材の静音化がもっと進むといいですね。静かな場所で使うことがきっとあんまり想定されていないのかも。クラシックのコンサートで使うんだって需要が増えれば、きっと静かな機材も出てくるはず!
進め、未来へ!

オルガニストの背中、大きな宇宙船を操縦しているみたいで惚れました……。あと東京混声合唱団の皆さまどこから出てくるのかなと思ったら、オルガン横の両扉が開いてそこから声だけが……美しかったです。最後、カーテンコールでお目にかかれて嬉しかった!

ちなみに、アデスもホルストもイギリスの作曲家。
こちらは木星に歌詞が付いた【I Vow to Thee My Country】
日常から離れてひとり、ほんの少しだけ目を閉じて、英国の悲しみに想いを寄せる時間にもなりました。

終演直後のアフタートーク!

公演が終わってすぐ、たぶん撤収作業が行われている束の間のひとときに飯森マエストロがTwitterSpaceを開いてくれました!
もちろんトークのお相手は角野隼斗。飯森マエストロの様子から、メインは惑星であるにもかかわらず、かてぃんさんが主役級に歓迎されまくってるのがめっちゃくちゃ伝わってきました。惑星もすっごくかっこよかったです!

深夜近く、地元の駅に着いたら、イチゴとハートの惑星が光ってました。

そしてなんとなんと! アフタートークで「放送日がまだ……」と小さく聴こえて期待していた件が、早くもお知らせ!

めっちゃくちゃ楽しみです!!!!!

そういえばアックスもゲルシュタインもルービンシュタイン優勝なんだなぁ。なんていうか、普通はそういうタイトルホルダーたちがわさわさしてるレベルのとこに(世界的には)無冠の角野隼斗が肩を並べてるって、すごいことですね。

かてぃんさんルービンシュタイン挑戦……しないか。クライバーンも合うと思うけど、鬼のように忙しいもんね。でもやってみたくなったら行っちゃっていいと思う。一度きりの人生だし!

その時はアデス弾いてください! というか再演熱望、あとオールアデス、もしくはアデスのルーツを辿るプログラムとかも聴いてみたいです。

この来年のプログラムも気になる! アデス再演? それとも……?

長話にお付き合いくださりありがとうございました!

#10月4日アデス日本初演角野隼斗とPPT
#飯森範親PPTの惑星


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