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トーマス・アデスは難しい?【自分の中の「似てる!」を探そう】角野隼斗+BUCK-TICKファンが感じるアデス

※ツイートしてたことの寄せ集め備忘録です。あんまり記事の体をなしてないと思いますがアデス鑑賞のヒントになればいいなと思って共有します。
※20221003追記:本当は時系列だと一番下部に追記するんですが、クッソかっこいいのでトップに貼ります。前日リハの演奏!


かてぃんさんが面白そうなコンサートにソリストとして参加するようです。
10月4日サントリーホールでトーマス・アデスのピアノ協奏曲をなんと日本初演! しかも、日本だけでなくアジアとしても初演になるもよう。なんかすごい! 指揮は飯森範親マエストロ、オーケストラはパシフィックフィルハーモニア東京です。

それに加え、年明けから始まる全国ツアーも発表されました。

コンセプトは『Reimagine(再考察・再構築などの意)』。
このツアープログラムのバッハなどバロック音楽と、アデスをはじめとした現代の音楽との繋がりに目を向けたことによって、あるアルバムの存在が私の中で再浮上してきました。

そこで、タイトルの『アデスは難しい?』を、自分の中で、ですが、このアルバムから紐解いた過程? のようなものを書いていこうと思います。

遡ること32年(!)当時人気絶頂だったロックバンド、BUCK-TICKがクラシックアレンジのアルバムをリリースしました。編曲に若手気鋭の上野耕路や千住明らを迎え、ベルリンのアーティストたちによって演奏、録音された、当時としては実験的、挑戦的な作品だったと記憶しています。

この『Symphonic Buck-Tick in Berlin』は私の大好きなアルバムで、なんなら結婚式のBGMにもしたくらい(あとはモンハンとか、マツケンサンバも流した笑)

まず記憶の掘り起こしで先に出てきたのはバッハでした。

引用しているのは4月のツイート。時々思い出したようにこのことを呟いている自分に笑ってしまうけど、まず山本健司編曲のこちらを聴いてみてください。
Symphonic Buck-Tick in Berlin:Just Onr More Kiss

おそらくクラシックに明るく察しの良い方ならすぐにわかるレベルのバッハ成分含有率(笑)あと歌メロのキャッチーさなのか、ヴィヴァルディも感じるような。私がクラシックに詳しかったら、もっとわかる成分があるのかもしれませんが、そんな素人でも感じるバロックみ。個人的には歌メロをちゃんと弦楽器が歌えるようにアレンジしているところがすごく好きです。

え、バッハ? わかんないよー、という方はこちらを聴いてみてください。絶対イッパツでわかりますから(笑)
私も聴いた当時はバッハっぽいけど曲はわからない、という状態で、この曲はあとから認知しました。
バッハ:チェンバロ協奏曲第一番 BWV 1052 第一楽章

そしてバッハを引用しているといえば、こちら。
Deep Purple:Burn  Piano Cover かてぃん × 浪岡真太郎
(間奏ピアノ頭出し)

わざと音を汚した激しいロックピアノから、バッハ聴こえますね!
Deep Purpleはバッハからのコード借用を多用してたそうです。
Deep Purple:Highway Star

間奏の2分16秒くらいからめっちゃバッハです。そして、このHighway Starが上記クラシックアレンジアルバムの元となったBUCK-TICKのコンポーザーギタリスト今井寿の手によってこんな曲になってます。
間奏部分の2分27秒頃がHighway Starのイントロっぽい。ちなみにこの曲、変拍子で当時の業界人たちを唸らせてました。アデスほど変態じゃないけど(笑)
BUCK-TICK:NATIONAL MEDIA BOYS

実はこの今井寿、元々は音楽理論などは全く知らず、ギターのコードも知らず(後にバンドスコアを出版する際など採譜者がデタラメなコードに頭を抱えたそう、しかしそれが新しい音を生んだ)、ほぼ耳コピだけで音楽を理解してプロになった人物なんですが、Deep Purpleをはじめ、洋楽を主とした膨大なインプットが作曲の基盤にあるため、アレに似てるコレに似てるという楽曲が多く存在しています。
冒頭に紹介したクラシックアレンジの曲たちにも、様々な元ネタ洋楽成分が滲みでていて、おそらく、アレンジャーはその成分を敏感に嗅ぎ取り、元ネタの更に元ネタとなっているクラシック音楽を探り当て、融合をさせたのではと思います。
30年前の私はそんなこと全く分かっていなくて、よくこんな組み合わせを思いついたなぁとか思っていたわけですが、角野隼斗を知って、ほんの少し音楽の分解ができるようになった耳で、ようやくその可能性に気付きました。

さてアルバムの話に戻ってきたところで、もうワンクッション、時代を挟みます。

このアルバム中、最多の3曲を編曲しているのが上野耕路なんですけど、上野さんご存じですか? ゲルニカ、戸川純、坂本龍一あたりを通っている人なら知っているはず。映画好きの方なら『のぼうの城』『ヘルタースケルター』などの音楽担当といえばわかるかも。でもきっと世間的に一番有名なのは『キューピーたらこパスタのCM』じゃないかと思います。
Koji Ueno: Tarako Tarako Tarako Paraphrase (Volga Nights)

CMで有名な部分以外は上野さんみあふれホラーみある(といっていいのか分からないけど独特の)雰囲気。そしてこの中にもバッハ感が。ショパンもバッハ大好きだったというし、もはやバッハ以降、バッハ感のない曲なんてないのかもしれません……。

そんな上野さんが編曲した曲。これがね、似てるんです。バルトークに。このことに気付いたのは、かてぃんさんが同曲のことをインスタのストーリーにあげていたときなんですけど、たしか楽譜の画像だったかな。

Bartok:2台のピアノと打楽器のためのソナタ

もう、これググって聴いたときに上野さんとアルバムのことが即座に浮かんで、そういうことか! となりました。3月の終わり、かてぃんさんが急遽ハンブルクでバルトークのコンチェルトを弾くと知ったとき、初めて聴いたはずのバルトークにすごく親近感というか、自分の中に既にインストール済の音楽だと思ったんです。弾くほうにとっては難しい曲なのはもちろんですが、聴く側の私にとっては、楽しいワクワクの詰まったオモチャ箱みたいな、オモチャ箱通り越して次は何が出てくるのかってビックリ箱みたいな音楽。それは、このアルバムで上野さんの編曲した曲をアホみたいに毎晩リピートしていたからなんだと。
というわけで聴いてください。
Symphonic Buck-Tick in Berlin:Hyper Love

そして、ツイートで挙げた2曲のうちのこちらにですよ。この曲に使われている音が、あったんです。アデスに!
主に第一楽章に似てるところが出てくるんですが、全楽章通してちょいちょい共通のニュアンスがあって、きっと上野さんが影響を受けてきた音楽と、アデスのそれは結構近いのではないかなと感じます。
Symphonic Buck-Tick in Berlin:Kiss Me Good-Bye

パっと思いつかないながらも交響曲とかミュージカルなどでも似た感じを聴いたことがある気がするので、バルトーク、上野、アデス、と単純な直線で繋げるのもどうかと思いますが、とりあえず私の中ではこういう感じで時代が繋がりました。
Adès: Concerto for Piano and Orchestra 1(該当箇所頭出し)

そしてこのアデスのピアノコンチェルト、冒頭をはじめ、何度も現れる「チャーラッ、チャーラッ!」という特徴的なフレーズは、ガーシュウィンの『I got rhythm』に似て聴こえました。
10 levels of "I got rhythm"

でもこれ、私が音楽ど素人なあまり、気楽にアイガットリズムに似てると呟けませんでした。関係者やピアノを学んだ経験のあるファンの方々が曲の難解さを理解しようとする中で、上のBUCK-TICKがアレに似てるコレに似てると呟くのと同等にしてはいけない曲なのではないかと思ってしまって。そんな簡単なもんじゃねーんだよ! みたいな空気というか。

でも最近、かてぃんさんがYouTubeで曲の解説をしてくれたんです。そのときに、譜面化されてない(即興的な音楽である)ジャズのグルーヴをあえて楽譜にしたらこうなる、のようなことを話していたり、弾くほうは難しい、大変だけど、聴く人に楽しんでもらえる曲、のようなことも話してくれていて、それで
「ああ、ジャズならアイガットリズムを感じたのもアリかもしれない」「聴く側はただただ楽しめばいいんだ」と思えたんです。
かてぃんさんありがとう!

YouTubeの【かてぃんラボ】へのコメント

するとフォロワーさんの情報で、この曲がガーシュウィンやジャズを意識して作られたものであるという記事を読むことができました。なんとアイガットリズムのことも書いてありました!

あと、この曲、全体的な印象というか、脳内でラヴェルのピアノコンチェルトと同じ部屋にいます(笑)ラヴェルもガーシュウィンもジャズ繋がりなので、このあたりから紐解いていくのもいいかもと思ったり。

アデスはきっとすごく難しい。6分の2拍子とか、楽譜のことを言われても分からない。知識がないから感覚的な楽しいなんて恥ずかしい、と思っていたけれど、私の感覚は意外とズレてなかった。そうか、音楽は誰にでも伝わるようにできているんだ、となんとなく思えたというか。
音楽の専門知識がなくても、自分の経験や聴いたことがある音楽を掘り起こして、自分の中の「似てる!」を探してみると、そこをきっかけにして楽しむことができるかもしれないと思ったんです。難解な曲の中の、ほんのワンフレーズでもいいんだと思います。皆さんの中にも「似てる!」がきっとあるんじゃないかなって、思います。

今回のプログラムであるコンチェルト以外にもアデスいろいろ聴けるので、そっちから自分にピンとくる曲を見つけられると、難解なアデスとちょっと仲良くなれるかもとも思ったり。

アデスは映画音楽も手掛けているようです。予告とサントラを置いておきます。聴きやすい曲が多いし、感覚的には坂本龍一の映画音楽とも通じるかも。音になんともいえないエロスがあって、本編も気になります!
コレット(予告)

ラヴェルは5月に藤岡角野で演ったので、聴けた人もいるはず。YouTubeなどにいろんな演奏動画もあります。私の中では8月にサントリーホールで聴いた特級グランプリファイナルでの鶴原さんの印象が強いです。これ、ちょうど、アデスを振る飯森範親マエストロの指揮なのでぜひ聴いてください!
マエストロの裏地が赤くて、動くたびに上着の裾が翻って席にいてもかっこよかった!
NOSPRツアーのマエストロオルソップも赤い裏地がトレードマークみたい。かっこよかったなぁ。


長くなりましたが、終わりに今回の公演に向けてのインタビューなどを貼っておきますのでぜひご覧ください!

かてぃんさんと飯森マエストロの告知動画

チケットがまだ若干数、あるらしいです。イープラスでは完売ですが、パシフィックフィルハーモニア東京の公式サイトで取り扱いがありますので、ちょっとどうしようかなと迷っている方はぜひ! オケはホルストの『惑星』です!

今回のコンサート、聴きたくても東京に行けなくて涙をのんでいるファンもきっとたくさんいると思います。
飯森マエストロも楽団の皆さまも、めちゃくちゃ気合入れて挑んでいるようです。日本初演(アジア初演!!)の看板(冠!)も頂いちゃったことですし、角野アデスが代名詞になるくらい全国で再演してほしいです。

アデスの1~3楽章繋げたプレイリスト(世界初演のキリル・ゲルシュタイン)

あとお気に入りのドローン演出動画(第二楽章)。こちらもゲルシュタイン。
Elbphilharmonie

そして「かてぃんさんがYouTubeで曲の解説をしてくれた」動画。
こちらはYouTubeのチャンネルで【かてぃんラボ(メンバーシップ)】に入会することで視聴が可能になります。月ワンコインくらいで、アレンジや曲の解説、過去のYouTubeライブや、ラボでしか見られない演奏などを観ることができます!(埋め込み無効みたいなので…ここから入会できますhttps://www.youtube.com/watch?v=C_vvB1i7Zac

かてぃんラボ、アツいかてぃん先生スクショ(有料コンテンツですがスクショは公開OK)

それから冒頭のアルバム。
もし上記数曲から興味を持ってもらえていたら、通してきいてみてくださると嬉しいです。
トピックのプレイリスト

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

20221002追記:記事公開したらリハ動画がツイートされました!

このラスト、かてぃんさんが弾くと上に貼った『10 levels of "I got rhythm"』のLevel 10とソックリ! もう自分の持ち曲みたいになってますね! やー、Level 100くらいかな(笑)
これ埋もれてる音が多いので、できるだけ最大音量で聴いてみてください。大迫力!

ツイートは共通タグが用意されていますので、盛り上げていきたいと思います!
#10月4日アデス日本初演角野隼斗とPPT
#飯森範親PPTの惑星

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