30.05.2024〜02.06.2024 フランクフルト〜ヴィースバーデン〜デュッセルドルフ〜ケルン旅行記 1.

 5月末、日本の友人Kとその友人Yがヨーロッパに2週間弾丸鉄道旅行をしに来るというので、それに便乗して私も旅行することにした。Kとは大学時代からの付き合いで、かれこれ10年以上つるんでいる。YはKの中高時代の友人で、私は直接会ったことはないが、Kから度々どのような人か聞いていた。2人とも根っからの鉄オタであるが、Kの鉄道への偏愛は普通の人には想像しづらいだろう。元々駅巡りが好きで、つまりある路線に乗るだけでは飽き足らず、各駅に実際に自分の足で降り立つことを信条としていた。そのため、常人では考えられないルートで旅行の行程を組むので、ともに行動するのは難しい。我々が一緒に旅行に行くときは、宿こそ同じものの日中は基本的に別々で行動する。食事も宿での朝食以外はそれぞれで食べることがほとんどだ。お互いやりたいことを勝手にやるので、気を遣う必要がない。このスタイルで、これまでも色々なところに旅行してきた。最近Kは、駅巡りに加えて鉄道の走行音の録音にも凝っているようだ。録音中は会話が許されないので、いよいよ一緒に行動するのは難しくなった。Kは YouTubeチャンネル 鉄音の部屋 https://www.youtube.com/@tetsuoto に録音した走行音をアップロードしていたりもする。
 5月30日木曜日、午前4時起床。彼らがフランクフルト空港に朝6時半に着陸するというので、まだ空が白み始めてもいない時間に家を出る。天気はあいにくの雨。テュービンゲン 4:56発の IRE 6に乗ってシュトゥットガルトへ。 5:43にシュトゥットガルトに到着し、6:02発の IC 2298 に乗り換えてフランクフルト中央駅へ向かう。ほぼ定刻通りに運行し、8時にフランクフルト中央駅着。ホームに到着すると、いきなり後ろからドンと叩かれて、何事かと焦ったが、それはKだった。日本から1万kmほども離れた土地で日本の友人が目の前にいる光景は、ここがどこであるかを一瞬忘れさせた。とりあえず駅中にあるマクドナルドに入って腹ごしらえをすることにした。Yと会話するのは初めてだったが、KとYは同じ中高一貫の男子校出身であり、私も別の学校だが中高一貫男子校の出身なので、近しい雰囲気を感じ、すぐに打ち解けた。Yも鉄道が趣味だが、Kほどエキセントリックな旅行をしているわけではなさそうで、安心?した。旅の疲れを癒しつつ2時間ほど談笑し、Kは早速録音に向かうというので私とYでフランクフルト市内を散策することにした。
 フランクフルトはこれまで何度も通過はしているものの、こうやってじっくり観光するのは初めてだ。フランクフルトの正式名称はフランクフルト・アム・マインだが、これはマイン川沿いのフランクフルト、という意味らしい。その名前の通り、市内には東西にマイン川が流れている。我々はマイン川の南側から散歩することにした。マイン川に近づくと、鉄の橋 Eiserner Steg が見えてくる。歴史を感じさせる意匠だが、欄干に大量に留められた南京錠が現代らしさも醸し出している。ケルンのライン川に架かる橋でも同じような光景を見た。カップルが付けていくようで、鉄のように強固な愛を願ってのものなのかもしれない。あまりに大量にあるので、橋が落ちてしまわないか心配になる。鉄の橋を北側に渡ると、旧市街のレーマー広場にたどり着く。四方を中世を感じさせる家々に囲まれた広場で、多くの観光客で賑わっている。レーマー広場から5分ほど歩くと、フランクフルト大聖堂に着く。ザ・ゴシック様式という佇まいで中は赤褐色のレンガ上の壁で覆われている。教会に来るたびに、自分の世界史や宗教の知識の無さを痛感する。背景知識があれば、もっと楽しめるのかもしれない。大聖堂を後にし、Yと昼食を食べることにした。ドイツに来て2ヶ月、客人をどんな料理でもてなせばいいのかまだわからない。どこのお店も昼時で混んでいそうだったので、大聖堂近くの屋台でとりあえずカリーブルストとポメスのセットを注文した。Yは喜んでくれていそうだったので、ひとまず安心した。
 ホテルのチェックインの時間が近づいてきたので、一旦戻ることにした。今回の宿は、中央駅前の東横イン。東横インに泊まるために来たようなところもあるかもしれない。なんたって、浴槽があるのだ。朝食ではビュッフェでご飯、味噌汁、たくあんも楽しめる。ドイツに来てからお風呂に入れない日々が続いていたので、じっくり湯船に浸かり身体を温めたかった。Kも録音にキリがついたようなので、一路ホテルへと歩く。フランクフルトはドイツでも随一の金融街らしく、マンハッタンをもじってマインハッタンなんて呼ばれもするらしい。ホテルに向かう途中では、これまでドイツであまり見かけなかった高層ビルが立ち並んだ区域があり、EUを模したであろう星が散りばめられた巨大な€型のオブジェが広場に鎮座していた。ホテルに到着して皆でチェックインを済まし、朝が早かったからかベッドに横になるなり2時間ほど昼寝した。
 夕方になり、これから行ける観光地もあまり無さそうなので、Kの録音に少し付き合うことにした。フランクフルト南駅へ行き、そこからS5系統に乗って終点の Friedrichsdorf Bahnhof を目指す。中央駅付近にさしかかると、鉄道警備隊らしき屈強な2人組が抜き打ちで検札に来た。高速鉄道では必ず検札が来るが、ローカル線で来たのは初めての経験だ。私が Deutschlandticket のQRコードを見せると、パーフェクト!と満足そうにしていたが、Kが持っていたユーレイルパスのチケットを見せると、これはローカル線では対応していないからダメだと言われ、60€の罰金を支払うように言われてしまった。後にこれは検札側のミスだったことが分かるのだが、もしかしたら舐められたのかもしれない。中央駅からS5系統に10分も揺られると、車窓の風景はすぐに田園地帯へと変わる。東京から田園地帯へと抜けるにはもう少し時間がかかるよな、などと東京の都市規模の大きさに思いを馳せる。Friedrichsdorf Bahnhof に着くも特に何もなかったので、そのまま往復して中央駅に帰ってきた。Kが基本的にものすごく節約志向ということもあり、他にアイデアもなかったので、夕飯は中央駅のバーガーキングで済ますことにした。朝、昼、晩とファストフード尽くしだが、久しぶりの日本の友人との食事で楽しい時間を過ごした。
 翌5月31日金曜日、まずは前日のKの罰金の件をDBカウンターに3人で抗議しにいくところから始まった。カウンターに行き事情を拙い英語で説明すると、とりあえず罰金徴収の紙を見せてくれと言われ、見せると番号札を渡されたので呼び出されるまで待機する。番号が電光掲示板に表示され、いよいよバトルが始まると思い我々に少し緊張が走る。簡単な英語で顛末を説明すると、係員はWhy?という感じの表情を浮かべる。やはり、これで罰金を取られるのは変なのだろうとわかり、だんだん安心してくる。最終的に、支払う必要はないとのことで解放された。朝から一仕事終えてすっきりとした気分だ。Kは交渉のためあの手この手を考えていたようだが、穏便に済んだので肩透かしを食らったようだった。異国の地でもこうやって難局を切り抜けることができ、これまでの旅行の経験が活きていることにちょっと嬉しくなった。KとYと別れ、一路ヴィースバーデンに向かった。

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