自炊の視点から見たテュービンゲンのスーパー

  4月にテュービンゲンに来てから2ヶ月ほど経つ。盛りだくさんのやるべきことをこなすうちに、月日は足早に過ぎ去った。2ヶ月も経ったという気持ちとまだ2ヶ月しか経ってないという気持ちの両方がある。現状、一応元気に暮らせているのは、食事にまあまあ気を遣ってきたからだと思う。友人との食事や泊まりがけの旅行以外の日は、基本的に自炊をするようにしてきた。事実、ほぼ毎日作ることができていると思う。作ること自体が、楽しいのだ。
 テュービンゲンには、REWE, EDEKAというドイツ国内でも1,2を争うスーパーマーケットがどちらもある。家と研究所の徒歩圏内だけを考えても、REWE, EDEKAともに2軒ずつあるので、食材確保にはあまり困らない。店内の様子も、品揃えは多少違うといえど、日本人が想像できるスーパーだ。入り口の目の前に、たいてい野菜と果物売り場がある。トマト、玉ねぎは見た目、味ともに日本で食べるのものと大差がない。じゃがいもは、ぱっと見何の変哲もないじゃがいもだが、皮を剥いてみるとより黄色く、やわらかくて包丁で切りやすい。食べると、さつまいもほどではないが甘みを感じる。これは品種によるのかもしれない。にんじんはかなり小さく、細い。対照的にナスは大きく、立派だ。キュウリも非常に長く、太さも日本のものの数倍はある。日本ではあまり使わないイメージがあるのだが、きゅうりに似ているが表面はツルッとしているズッキーニも主要な野菜の一つだ。ネギは難しい。長ネギによく似ているがより太いのは、リーキだ。リーキはまだ試したことがないが、煮込み料理などに使うと甘くなるらしい。また、根本が白くて少し膨らんでおり、ワケギのような見た目をしている Lauchzweibeln というのもある。色々な料理に使える小ネギ schnittlauch を最近探しているのだが、テュービンゲンのスーパーでは見かけない。
 肉は牛肉、豚肉、鶏肉と網羅しているが、普通のスーパーでは牛肉はあまり種類が多くない。ステーキ肉のようなものばかりだ。豚肉、鶏肉も日本ほどさまざまな切り方や部位で売られてはいない。特に、バラ肉や切り落としといった、何にでも使えるものが売っていないのが地味に食卓に響く。肉屋さんに行って、好みの切り方を指定すれば、バラ肉なども手に入れることができるらしいが、まだ試していない。節約志向なので、牛豚合挽き肉、鳥手羽が基本的にいつも安いので重宝する。ドイツのイメージ通り、ソーセージやベーコンなどの加工肉は迷うほど種類が多い。サイコロ状に細かくカットされたベーコンが使い勝手が良いので助かっている。
 チーズ、牛乳、ヨーグルトなどの乳製品は種類も多く、値段もお手頃で本場だと感じる。我が家にはチーズスライサーが今のところないので、カット済みのピザ用チーズをよく使っている。ピザ用チーズも、ゴーダ、モッツァレラなどバリエーションがあるので飽きずに済む。粉チーズは今のところ見かけていない。フィラデルフィアのクリームチーズも安く購入できる。
 缶詰も色々な種類がある。トマト缶はREWEオリジナルのものが大きい果肉が入っていて好きだ。赤豆や白豆などの豆缶もかなり置いてある。日本では豆は加工して食べることが多いと思うが、こちらではそのままの形で茹でたりして食べる文化が根付いているように感じる。研究所の Mensa でも赤豆をそのまま茹でたものが常時置いてある。ハインツの、トマトベースのソースに漬けられた豆缶が朝食に少し食べるのにいい。砂糖入りのものと無糖のものがあるが、砂糖入りのものは自分には甘すぎるので無糖がちょうど良い。豆缶に関してはまだまだ開拓の余地がかなり残っていると思う。最近ツナ缶も発見したので、魚を食べたいときにも救いがあることがわかった。
 テュービンゲンで魚介を楽しむのは難しい。海が遠いので仕方がないのだが、魚が好きな自分には少々辛く感じることもある。冷凍のサーモンはどこにでも売っているが、あとは種類のわからない白身魚くらいしか選択肢がない。貝もほぼ見ない。もしかしたらアサリの缶詰くらいはあるのかもしれないが、未発見だ。ドイツ人が夏のバカンスにイタリアに行きがちなのは、魚介類を食べたい欲を満たすためなのかもしれない。
 パン文化なので、食パンやロールパンなどたくさん売っている。しかし、日本の食パンのようにふわふわとした食感のものは珍しい。口の中が切れるくらいカチカチに焼き上げるのがこちらのスタイルのようだ。Brötchen という、ブルストに合わせて食べるパンも、たいてい硬くて水分を持っていかれる。ほぼ毎食パンを食べるのか、20切れくらい入っているパックがほとんどなので、米も食べる一人暮らしの身には全て食べ切るまでパンが腐ってしまわないか心配になる。ライ麦食パンの一種 VollkornBrot が最近のマイブームだ。
 米も食べると言ったが、テュービンゲンにはアジアンスーパーが3つある。こちらのスーパーはこの国の、あちらのスーパーはあの国の、といったように、各アジアンスーパーで得意分野が異なっている。特にお世話になっているのは、city hall の目の前にある Asien-Haus だ。ここに行けば、アジア料理を作るための調味料は大半が揃うのではないだろうか。酢、醤油(普通のスーパーでも買える)、味噌が買えるので、料理のさしすせそはテュービンゲンでも成立する。米も日本の米が買えるので安心だ。あきたこまちが売っているが、他の米に比べてだいぶ割高な印象を受ける。毎回あきたこまちを買うのは家計に優しくないので、ものは試しと思い、明らかにちょっと怪しいのだが、サムライと城がパッケージに描かれている Shinode という SUSHI RICE を 1kg 買ってみた。旧住人が炊飯器を残してくれていたので、米はすぐに炊くことができた。SUSHI RICE は、思っていたよりも美味であった。1 kg の米はすぐになくなってしまうが、かと言って 10 kg は持ち帰るのが大変だ。SUSHI RICE が無くなったあとは、いたこまちというイタリアで栽培された日本米を購入した。このいたこまちはほぼ日本で食べる米の味わいで、以来我が家の主力米となっている。
 自炊ができるならば、ドイツでの食生活もそれほど困らない。逆に、毎食外食はほぼ無理だろう。ハンバーガーやケバブも最低 5€ ほどはするし、毎食食べるには味が濃すぎる。レストランに行ってしっかり食べようとすると、20€ はくだらない。ドイツにはコンビニもない。スーパーにちょっとした惣菜はあるが、日本のように種類が豊富なわけでもない。極めつけに、スーパーは日曜、祝日は営業していないので、食材を買い忘れようものなら、水道水で飢えを凌ぐことになりかねない。土曜日にちゃんと買い物をしておいて良かったものの、先月は日曜日と月曜の祝日が続いたことがあったので、少しヒヤッとした。

いたこまち、おいしいです

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