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『MZM』をレビューする(後編)

こんにちは、サブロクです。直接的にVtuberを話題にするnoteは、前回から大幅に間があいてしまいました。

とうとう1stアルバム『MZM』が発売されましたね。iTunesストア J-POP部門2位おめでとうございます。3枚買って(人生初の保存用・鑑賞用・布教用ムーブ)、Apple Musicでダウンロードもしました。前編はすでに公開していますが、アルバム発売に伴って加筆をいたしましたので合わせてお楽しみいただければ幸いです。同時に楽曲埋め込み機能も初めて使ってみましたので、気になった方はぜひ聴いてみてくださいね。

さて、後編も前回のnoteと同じく「音楽に詳しくない人間による感想文」として読んでいただければと思います。記事の最後にはアルバム全体としてと、CDのジャケットデザインについても触れています。

7. 「僕色君色ドリーム」


まだMVが公開されていないので、公開されたらリンクを貼ることにします。

今回のアルバムの中で唯一未発表の新曲でしたが、再生したらキラキラに殺されました。毎秒キラキラに浄化されて塵になってしまう……。すごい、これは少女漫画原作のアニメのOP(休日の朝の時間帯にやってるやつ)レベルの爽やかさ。アンジョーさんの高音域ボイスに舌を巻くばかりでした。最後のあたりは女子でも出すのに苦労するのでは?と思ってしまうくらいキーが高い。

アンジョーさんのソロ曲が「狼狽」と「僕色君色ドリーム」ってそれだけでも温度差で殺しにかかってくる上に「アンジョーという男」という動画でトドメを刺しにかかってくるあたりが巧みというかずるいというか……。
名刺がわりのアルバム、というコンセプトだけあって、コーサカさんとアンジョーさんがそれぞれどのくらいの幅を持っているのかアピールできるような曲の中身になっているのかなぁと思いました。

8. 「MonsterZ  PARADE」


ハロウィーンの10月31日に投稿された曲。MZM曰く「男性ファンは“Live your life!!”、女性ファンは“MonsterZ PARADE”が好きな傾向がある」そうなのですが、例に漏れず私もこの曲が大好きです。誤解のないように言っておきたいのですが、そもそもMonsterZ MATEの曲は全部好きです。全部好きなのですが、私のストライクゾーンにグッとハマるものがあったので、現状「一番好きな曲」としてあげています。

全部の要素が全部私のツボにハマるのですが、特筆したいのは世界観作りです。2人がモンスターであることを活かしながら、「和洋折衷 ドンキの特注/または別注」というリリックにあるような現代のハロウィーンの馬鹿騒ぎをナナメに見るような作りになっているのが、本当にどストライクでした。ハロウィーンの主役(?)であるモンスターとしても、そういうことを抜きにした一人格としても、あの渋谷の喧騒を冷笑する感じがたまらないですね。ハロウィンの喧騒を遠くに、路地裏で妖しく目を光らせるバケモノ感、いい。日常に潜む非日常のロマンが個人的にたまらんのですよ……。

9. 「星天コンチェルト」


ロードムービー風のMVが特徴の星天コンチェルト。どのタイミングで1人が離脱して、いつ合流してきて2人で並んで歩いているのか見るのがけっこう楽しいのでおススメです。

実はオケ音源が公開されています。動画概要欄のリンクはダミーですので気をつけてください。MonsterZ MATE公式からのツイートにDropboxのリンクが載っているものがあり、そこからダウンロードできます。完全なオフボーカル音源だけでなくラップのみ、ボーカルのみなど種類もたくさんあるので、歌ってみたに興味がある方は是非。私もせっかくなのでその音源を使いながら、カラオケ配信の時上手く歌えるようにと思いながら練習しているのですが、聴いているだけのときよりも曲に対する理解が深まる感覚がありました。

ボーカルパートの「眩むくらい暗い黒に覆われていく」「もがくみたく威嚇し合うしかないのかな」など文学的にも音楽的にも面白い歌詞が多いのが特に好きなところですね。

10. 「花咲ク未来ニ」


この曲は正直キラキラがすごくて、「僕色君色ドリーム」と同じように聴くたび浄化されてそのまま消えてしまいたくなります。楽しそうに踊ったり遊んだりしているMVが印象的です。

「星天コンチェルト」での私の推しポイントがボーカルだとすれば、「花咲ク未来ニ」の推しポイントはラップです。

赤い身なり彼jobはblack
届け終わるまで陽は暮れない
樅は緑 林檎は紅
御誂え向きcolor最後1つ
whiteな日に

この部分のクリスマスの色彩が眼に浮かぶところも、

yeahって下手くそなdance
路面を滑るせめて姿勢をただす

ここのリズム感も大好きなんですよね。今年のクリスマスシーズンに聴くのを、今から楽しみにしています。スキーに行く道中とかで聴くのも楽しそう。(スキーやったことないけど。)

11. 「daydream」


まず、じーえふさんの作ったトラックが好きすぎて辛い……。

「daydream」は、以前このnoteでも書いた通り個人的な別れもこの界隈の悲しみも、そして普遍的な別れの切実さすら包み込む懐の深さを持っているように感じます。

なので今回はアルバムレビューという本筋から逸れて、MVについて書きたいと思います。実は私の最推しMVのうちの1つは「daydream」なんですね。実写映像にタイポグラフィという非常にシンプルな構成なのですが、単純だからこそ誤魔化しの効かない手法だと思います。しかも、そこにある画面の印象づくりは決して生易しいものではないな、というのが初めてみたときの印象でした。

途中、文字が背景に霞んで見えなくなるところがいくつかあって、私はこれを見ながら、言葉が喉に詰まって出てこなくなる時を絵にしたらこんな感じだろうなと思いました。たしかにコーサカさんは声を出し続けているんだけれど、映像で「何も言えない」気持ちを表しているような気がして切なかったです。

深山さんはすごい。深山さんいつもありがとうございます。

12.「_hero」


4月28日にMVが上がったばかりの「hero_」にはもういっぱいの思い入れと言いたいことがありすぎて、このnoteが書き終わるかどうかが心配です。

上に書いた最推しMVのうちのもう1つが「hero_」です。まずトンネルにお互い「1人で」歌っていて、でもお互いの影は見えていて、そのトンネルがどこかで交わってすれ違った時に手を掴めなくて拳を握りしめるコーサカの演出はかなりエモーショナルですよね。しかもこのすれ違うシーンは「Live your life!!」のセルフオマージュで、最後青空の下で歌うときの空が「Live your life!!」と比べ物にならないほどの青さじゃないですか。
そして最後のシーン。トンネルの先に見えるのは海だと私は思っているのですが、昼間って海風が吹きますよね。私が通っていた高校は海のそばにあったのですが、その地域のトンネルって死ぬほど風が強いんです。隣にいる友達が喋りかけてくる声すら聴こえないくらいにうるさい。私が何を言いたいか、わかった方がそろそろいらっしゃるかもしれませんね。
つまり、2人が歩いてきたトンネルには強い強い向かい風が吹いていたのです。そしてそこを抜けて海に出ても、太陽が出ている限りは陸に向かって風が吹きます。エモ……

歌の歌詞もリリックも徹頭徹尾好きです。この記事の前編冒頭でVirgin Music・今成さんの言葉を引用しましたが、MZMの売りとは「現実を精緻に描写できるラップと、理想を高らかに歌い上げるボーカル」です。見事にその通りの歌詞になっていると思いませんか? そして最後には未来について「道標はあのStarlight」と笑顔のコーサカさん。MonsterZ MATEは理想と現実の両輪でこれからも走り続ける、私はそう受け取ることにしました。

全体を通しての曲順

私がいうまでもなくMZMの2人が動画にしてくれていますので、これをベースに感想を書きたいと思います。

前編でも書いた通りペトリコールからソロ曲のパートに入り(「Up-to-date」は2人の曲というわけではないのでソロ曲として数えました)「love letter.」を一番底にして「僕色君色ドリーム」で明るい方へ登ってきました。そして2人が合流するのが、“MonsterZ”の名を冠する「MonsterZ PARADE」です。ここから「星天コンチェルト」「花咲ク未来ニ」と再び夜へ潜っていき、「daydream」でいきなり視界がホワイトアウト。目を開ければ底抜けの青空のような「hero_」でアルバムはおしまいです。綺麗に計算されたグラデーションのある曲順ですよね。最高です。

余談としてMZMファンにしか通じないかもしれないことを言うのですけれど、偶然か必然か「花咲ク未来ニ」から別れの「daydream」、そして2年目からの未来を見据えたような第2のアンセム「hero_」という曲順になっているの、すごくないですか?


CDデザイン

モノとしてのCDまで含めてアルバムだと思いますので、デザインについても少し語らせてください。

まず初回版のみのスリーブケースは一見Vtuberらしくないような(本人たち公認)デザインになっています。そしてその中のジャケットはApple Musicのジャケットにあるしのとうこ先生の描きおろしです。ストリーミングサービスでリスナー層を増やそうとすると初回限定スリーブの方がよかったのではないかなとは思うのですが、それでも彼らはあの姿で“MonsterZ MATE”だと思うので、納得しました。

CDケースを開いて盤を外すと……これは買った人のお楽しみになると思うので言わないことにしましょう。でも盤の裏の部分って取り出せないので、CDのどうしようもない性質みたいなものの表れだと私は考えているんですね。そう考えると、この絵柄がここにあるのは面白い。

歌詞カードについては「私の好みではないけれど、いいデザイン」でした。私はもう少し徐々に展開していく静かな冊子デザインが好きなので、あまりにバラエティ豊かな見開き誌面の連続に正直ビビりました。
でも、この『MZM』というアルバムはこの2人が歌とラップのスタイルでどれほどの表現の幅を持っているかを見せる名刺がわりの1枚です。その良さを明確にビジュアライズしたという点において、素晴らしいデザインだと思います。

最後に

前編後編通しておよそ1万字の超大ボリュームでお送りしました。最後までお読みくださりありがとうございます。

最初に言った通りこれはあくまで私個人の感想でしかありませんが、そんな記事でも皆さんの鑑賞体験を深めるお役に立てていればいいなと願うばかりです。

これは私から皆さんへのリクエストなのですが、『MZM』の感想を文章なりツイートなり、イラストなりで見せてくれませんか? そうして、私もMZMの音楽を別の角度から味わいつくしてみたいのです。 皆さんのレビューが読める時を楽しみにしながら、この記事をおしまいにしたいと思います。

繰り返しになりますが、最後までお読みくださりありがとうございました。またお会いしましょう。





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