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「フォレスト」 - 多様な味わいを森の美しさで束ねた新鮮なヒーリングドラマ

★★★★

とても不思議な感覚をもたらすドラマです。パク・へジンが好きで観た作品ではありますが、独特の世界観が次第に居心地よくなる、ちょっと新しい印象を受けました。

主人公の、とにかくドライで抜群に仕事のできるM&A専門家のサンヒョク(パク・ヘジン)は幻肢痛という心の病気を患っていて、診療のために訪れたソウルの病院で女医のヨンジェ(チョ・ボア)に出会います。第一印象は互いに最悪だったものの、ふたりはそれぞれに仕事でのミスを契機に訪れたミニョンの森で運命的に再会し、いろいろな流れで山奥の一軒家に同居することになり…と、少女漫画的なときめき要素がてんこもりで展開していきます。

ふたりともトラウマを抱えていることもあって会話を重ねるうちに共鳴しあい、恋に落ちるまでそう長くはかかりませんが、その先に訪れる困難はタイトルのとおり森を舞台にしたものなので、想像以上になかなか壮大な話に。

ビジネスや環境にまつわるロジカルな部分に過去の犯罪などサスペンスの味付けがあり、けれど軸は恋愛モノであり、心の傷を癒すこと。シリアスな気配もあれど基本は気楽に観られるライトな雰囲気。この多様な味わいが緩やかにまとめられていて、着地点が読めないまま物語が進んでいくのですが、不思議とバラバラになってしまうこともなく一貫した空気の中で結末に向かうのです。この感じが、すごく新しいものに思えました。

サンヒョクはプロジェクトのために山の救急救助隊に入ったり、救助隊の仕事をしつつもM&Aを進めてしかもヨンジェとの恋愛まで発展させてしまい、そんなことは物理的に可能なのか!?とツッコミを入れてしまう場面も多々ありますが、それもまた受け入れられてしまうのは全編を通して美しい森林の風景が第3の主人公くらいの存在感を発揮していて一種ファンタジーのような説得力があるからかもしれません。かといって大自然に振り切るわけではなく、都会のシーンもあれば海外のシーンまで挟まって醸し出されるフュージョン感が徐々に癖になりました。物語における「型」みたいなものを一旦忘れて、展開するままに眺めたいドラマです。

なにせ要素が多いので、恋愛の序盤は少々急な展開に思えなくもないのですが、恋人になってからのふたりの姿はそれこそ癒し。仕事では相変わらず冷徹なのにヨンジェにはとにかく優しいサンヒョクと、これまでになく歩み寄れる恋愛に幸せを噛み締めるヨンジェ。ふたりがデートを楽しむのは光が美しく深い緑の森です。連れ立って自転車で仕事に出かける姿がとにかく綺麗で、視覚的なヒーリングもこのドラマのコンセプトなんだろうなと感じました。

観終わって感じたのは、こんな場所でこんな出会いと暮らしがあったら本当に素敵だなぁ…ということ。とりあえず森に引っ越したくなります(出会いのほうはまずありえませんが!)。個性を持った意欲作だと思いました。



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