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「テキパキ動け」というけれど。【大学生バイト体験談】

「ぼさっとしてないで、もっとテキパキ動いて!」

学生がバイト先で最も言われる言葉はこれではないだろうか。
ほとんどの場合、言ってくるのはバイト先で長く働いている社員ベテランパートだ。

多くの学生にとってバイトとは、生活費、娯楽費を稼ぐために嫌々ものだ。
そして、賃金はもちろん時給であり、1年ごとに10〜30円上がるだけでも御の字であるから、その職場がいかに高額の利益をあげていても、学生の懐事情とは関係しない。

だから学生の立場から言わせてもらえば、テキパキ動く動機はどこにもない。
回転率とかクソどうでもいい。

…と、今回話したいのはバイトそのものの愚痴ではないが、しかし最初の言葉が自分にとって(そして多くの学生バイトにとって)地雷であることを留意して欲しい。


数日前、共に仕事をしていたパートの山田さん(仮名)から「もっと早く動いて!」と言われ、上記の理由からムカついてしまった。

「何年もこれだけやってるテメェと、まだ数日しか働いてない俺を一緒にするんじゃねぇよ」とか「こんな仕事に慣れる前に辞めてやるからな」とか、まあこんなことを思っていた。


しかしその数十分後、私は自身を恥じることとなる。

テキパキ動くとは「今自分がやっている動作」を素早くすることではなく、「より合理的な動作」を見つけていくことだと気づいたからだ。


このきっかけとなったのは、山田さんの作業の様子である。

私と山田さんはその日の仕事の中で、「同一のふたつき箱A、B、CからA→B→Cの順で中身を取り出す」作業をしていた。
この工程を行うときに、私と山田さんの手順では大きな差があった。

私の手順は、「Aのふたを開ける、ふたを箱の側に置く、Aの中身を取り出す、ふたをしめる」「この工程をBとCでも同様に行う」であった。

対して山田さんの手順は、「Aのふたを開ける、ふたを箱の側に置く、Aの中身を取り出す」

ここまでの手順に大差はなく、特筆すべきはこの後の手順だ。

「Bのふたを開ける。BのふたでAの箱を閉める」
「Bの中身を取り出し、Cのふたを開ける。CのふたでBを閉める」
最後は「AのふたでCを閉める」

つまり、フタと箱が一つずれて組み合わせているのだ。
こうすることのメリットは、「ふたを置く」「ふたをしめる」という2工程を、「ふたを別の箱におく(=ふたをしめる)」という1工程にできる点だ。

テキパキ動くとは、このような手順の最適化をしていくことなのである。
そして、最適化は勤務年数とは関係なく、知るだけで実行できる。

だから、テキパキ動くことに対して勤務年数を持ち出して文句を言っていた私の態度は間違っていた。
しかし、間違っていたのは私だけでなく、山田さんもではないかと思う。

山田さんは、最適解を知っていたのだから、それを教えることの方が、より直接的に私の行動を変え、効率を上げることができたはずなのだ。

「テキパキ動け」という漠然としたアドバイスではなく、どこが無駄な行為となっているのかを指摘する方が両者のとって良い。

これが今回の経験から私が得た最適解である。

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