中根すあまの脳みその5
今、わたしは最強の『忙しい』の最中にいるので、ここはむしろ全然関係のない脳天気な話をしたいと思う。
あなたのすきなたべものは何だろうか。
『すきなたべもの』というと抽象的すぎて、わたしは今まで返答に困ってしまっていた。
だが最近気づいたのだ。わたしにとって最強のたべものが存在することに。
それはずばり、『とんかつ』だ。
夏でも冬でも、昼でも夜でも、『何食べたい?』と聞かれるとわたしはとんかつという可能性を捨てきれない。
例えばその日は特別ラーメンが食べたかったとしよう(ラーメンもすごくすき)。それでも一度考えてしまう。『おいお前、とんかつという選択肢もあるぞ』と。そしてわたしはまんまととんかつの罠にはまり、結局とんかつを選ぶ。それだけとんかつという存在はわたしにとって、絶対的な信頼を得ているのだ。
とんかつは、完成する前からとっても魅力的だ。
なんといってもその音。とんかつを揚げているときの音ほど心地よいものはない。何度あの音をアラームの音や着信音にしたいと思ったことか。家で母親が料理をしているときにキッチンから聞こえてくる音というのは、素敵な夢に満ちているとわたしは思う。
出来上がったとんかつはもはや芸術作品。黄金色に輝くころも、ひと切れ箸でつまんでみればじゅわっとジューシーな豚肉が覗く。せっかくの食感を損なわないために、ソースはかけすぎないのがとんかつの美学だ。口の中に入れるとさくさくっとした食感が食欲を刺激し、ふわっとほんのり甘い脂が舌をコーティングする。そして白米、味噌汁、千切りキャベツの進むこと進むこと。
どんな老舗デパートにも若者向けのショッピングモールにもとんかつ専門店は必ず出店している。
やはりとんかつは老若男女だれにでも口福な時間を与えてくれるたべものなのだということが分かる。
とんかつといえばカツカレーも素晴らしい。
あれは神様が生み出したとしか思えないほど、絶妙な組み合わせだとしみじみ思う。わたしには夢がある。将来、もし誰かと暮らすことになったら週に一回こだわりのカツカレーをつくって食べる日を設けたいのだ。どちらかがカレーをつくり、どちらかがカツをあげる。材料には一切妥協せず、奮発していいお肉を使う。カレーはルーからつくる。それぞれの最高傑作を組み合わせたとき、きっと夢のような味に出会えるだろう。ちなみに、わたしはこの夢が叶ったときのことを妄想するあまり短編小説にしている。詳しくは『彼とカツカレー』を読んでみてほしい。
わたしは人々にとって、とんかつのような存在になりたいと願う。老若男女誰もに親しまれ、一口目は絶品、でも食べ続けているとくどくなってくるような、そんな感じ。胃もたれされるくらいがちょうどいい。ちょっとなにを言っているのかが分からなくなってきたので、そろそろ終わりにしたい。そういえば、先週母親に夜ごはんのリクエストをした。メニューはもちろんとんかつだ。わたしは不安に思う。ちゃんと家でとんかつを食べる夜は来るのだろうか。なんせ母親は信用ならない。なぜかって?わたしの母親はとんかつに大量のソースをかけるからだ。
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