サラダ味

やるせない。
どうしようもなく、やるせない。
俺は俺なりに長い間努力してきた。それなのに、評価されるのはいつも、たいした経験もないぽっと出のやつらばかり。
たしかに『珍しい』が魅力的であることは理解できる。この世界がそういう考え方の上で成り立っていることだって心得ているつもりだ。
だけど、どうしても納得がいかないと思ってしまう。
新しいものに手を出すのはたしかに楽しいかもしれないが、その分リスクだって大きいはずだ。
負け惜しみをしているのではない。俺はただ、せっかくの時間を残念な気持ちで終わらせてほしくないのだ。女性だったら尚更だ。ある程度の覚悟をもってのぞんだであろうその選択を、無駄なものにしないでほしい。
時がたてばたつほどに俺の魅力が衰えていくことくらい分かっている。やはり、若くて新鮮な能力をもったやつらには勝てない。だが、俺には『安定』という武器があるのだ。
ああ、また若いあいつが選ばれた。
やるせない、やるせない。
俺は、みどり色に包まれた自分のからだをそっと撫で、ため息をついた。



『ねえちょっとお菓子買っていい?』
『え?ダイエットするって言ってなかった?』
『今日はいいの!今日はテスト頑張ったから、そのご褒美。これで体重が増えても、もう覚悟はできてるから!』
『ふーん、ご褒美ねえ。まあ、自分がいいならいいんじゃない?どれにするの?』
『これかな〜?わたしなんだかんだこれが一番すきなんだよね!』
『わたしもすき〜!じゃがいもの味がちゃんとしておいしいし、あと歯ごたえがいい!』
『そうそう!それに、持ち運びにもいいよね、かさばらなくて!』
『たしかにね〜!味は?どうするの?』
『ねえ見て!チョコバナナ味だって!』
『え〜?なにそれ!絶対おいしくないって!』
『でも気にならない?おいしいかもしれないじゃん!』
『まあ、興味はある…かも…。』
『でしょ?よし、これにしよーっと!』
『おいしかったら私にもちょうだい?』
『えっそれずるくなーい??』

人間は、話題性というひとときの興味に抗えない、愚かな生き物だ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?