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「過去未来報知社」第1話・第50回

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>>第49回
(はじめから読む)<<第1回
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「なんであたしがここにいるかって?
 んー、なんとなく、かな」
 三宅はカシカシと耳の後を掻きながら言った。
「大体、みんなそんなもんじゃないの?
 ふらふらしてて、どっかに落ち着く」
「まあ、そうですね」
 田中はえへへ、と笑いながらマイクを突きつける。
「でも、なんか、あるんじゃないですかね。
 ここが! っていう決め手、みたいなものが」
「決め手、ねぇ……。
 あ、あれ、美味しそうだな」
 店頭で焼かれているイカ焼きを見て指を咥える三宅。
 田中はちらり、と横目で見て頬を引きつらせる。
「さっき、ドラ焼きを食べたじゃないですか……」
「別腹だもん。あー、お腹が空くと無口になっちゃうな~、私。
 イカ焼き、美味しいんだろうなぁ」
「はいはい……」
 ブツブツ言いながら、がま口を開く田中。
 その後では、部下の谷口がハンディカムを回している。
「それにしてもさ、そんなに六合が気に入ったの?
 この間、来たばっかじゃん」
 口の端からゲソを飛び出させながら、三宅は首を傾げる。
「いやあ、ほら、とりそこなっちゃったのが勿体無くてね~」
「そうそう! 私楽しみにしてたのにさ、全然写らなくて!」
「なんなんでしょうね~。
 聞いてみたら、他の奴らもここでの撮影、失敗することが多いみたいで」
「んー、なんでなんだろうね。なんか機械と相性が悪いのかもね」
「機械と相性が?」
「そうだよ~、うちの六合荘だって、機械関係全然ダメなんだから。
 唯一動いているのが、TVと電話ぐらいじゃないかな。
 エアコンとか、パソコンとか、全然ダメなんだから」
「へえ~」
 ミーハーなフリをして聞きながらも、田中の目はキラリ、と光る。
「そんなんで、映画の撮影なんかできるんですかね」
 谷口がぼそり、と呟く。
「そうそう。前にも一度、撮影した映画がお蔵入りしたことがあったんですよ」
「わっ!」
 下から響いた言葉に、田中と谷口が飛び上がる。
「やだなあ、さっきからここにいましたよ」
 根津が口を尖らせて抗議する。
「ち、小さくて、全然気がつかなかった」
「失礼な」
 ぷい、と横を向く根津。嬉しそうな三宅の目を見て慌てて飛びのく。
「ちょっと、待った! 今、なんて言いましたか?」
「僕、何か言いましたっけ?」
 身を乗り出す田中に、根津はとぼける。
「前の映画がどうか、とか……」
「あ、甘栗、美味しそうだな」
 そっぽを向いて言う根津。
「あの……」
「ああ、お腹が空いたな。僕、お腹が空くと無口になるんですよ」
「……」
 田中は黙ってがま口を開いた。

>>第51回

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「過去未来報知社」第1話・第50回

涼廣

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