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【先輩インタビューVol. 5】株式会社 資生堂 針谷毅さん(1986年卒)

埼玉大学を卒業し社会で活躍する先輩にインタビューする企画「先輩インタビュー」シリーズの第5弾は、1986年に埼玉大学大学院理学研究科生体制御学専攻を卒業された針谷 毅さんと、針谷さんと同じ部署で働く今井 浩介さんのお二人にYouth Buddyの王、大内、大平、山内がインタビューしました。


プロフィール

針谷 毅さん Takeshi Hariya|プロフィール
株式会社資生堂 ブランド価値開発研究所 安全性・解析研究センター
1986年3月 埼玉大学大学院 理学研究科生体制御学専攻修了 
 入社時は原料の安全性(アレルギー)の評価に従事。横浜市大皮膚科(国内留学)での研究で博士(薬学)を取得。1995年から10年間埼大の非常勤講師(集中講義)。皮膚科学の基礎研究部門に異動後、新規スリミング理論で社長賞を受賞。美容医療、心理学研究等のグループリーダーを経て安全性研究開発室長として古巣に戻る。昨年定年を迎えたが、シニア研究員として就労中。趣味はチョウで週末は採集や撮影に出かける。孫娘にもメロメロ。

今井 浩介さん Kosuke Imai|プロフィール
株式会社資生堂 ブランド価値開発研究所 安全性・解析研究センター
2020年3月 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 博士前期課程修了
 主に大学時代の研究活動としては、機械学習などを用いた安全性評価モデルの構築に取り組んでいた。入社当時から現在まで、研究分野としては大学時代とは大きく変わらず、化粧品原料の安全性評価および動物を用いない新たな安全性評価系の構築に関する研究に携わっている。また、研究所から配信しているポッドキャスト番組の運営メンバーとして活動中。

学生時代の経験が就職活動で活きる

― はじめに、自己紹介をお願いします。
針谷さん:1984年に理学部生体制御学科を卒業後、修士課程に進み(当時、博士後期課程はありませんでした)、1986年に資生堂に入社しました。一度定年退職をして、現在は再雇用のシニア社員として働いています。入社後は、化粧品の安全性を評価する研究や敏感肌ブランドの基幹理論の開発、美容医療や化粧心理学に関する研究など、様々な部署を経験してきました。小中学生向けのイベントを科学技術館などで実施をしたこともあります。大学時代はサッカー同好会と鉄道研究会に所属していました。自分は古い人間ですので、最近の就活事情などは若い今井さんに答えてもらおうと思って、今回は今井さんにも同席していただくことにしました。

今井さん:4年制の薬学部を卒業後、修士課程に進み、2020年の4月に資生堂に入社しました。大学時代は、生体内に化学物質が取り込まれた際に毒性が発現するかどうかを予測するようなモデルをコンピュータで作成し、機械学習を用いて安全性を評価する研究をしていました。現在は化粧品原料の安全性保証に関する研究をしています。また、日々の業務のほかに研究所から配信しているポッドキャストのプロデューサーをしています。研究所で働いている人たちの商品開発にかける想いや熱意を身近に感じてもらいたく、このラジオ番組を始めました。

▼資生堂の研究員とPBP(Personal Beauty Partner)によるラジオ番組「美のひらめきと出会う場所」

インタビューの様子(右から今井さん、針谷さん)


― 就職活動をしていく中で、希望の企業に落ちてしまった、うまくいかなかったこともあると思います。うまくいかなかったことで落ち込まずに、気持ちの切り替えを上手にするために何を意識していましたか?
今井さん:落ち込まないようにするのは難しいですが、就職活動で企業の選考で落ちた時は自分とのマッチングが合わなかったと割り切って考えていました。自分が学んできたことや持っているスキルが、たまたま自分が希望する企業と合わないということもあると思います。私も就職活動をしている中で、自分のやりたいことと企業が求めていることの違いを感じたことがありました。やりたいことはもちろん重要ですが、求められていることがマッチングすることも仕事のやりがいにつながります。また、今の時代は終身雇用というより、自分のスキルをアップさせて、やりたいことを実現させるというキャリアを実現していく人も多いと感じます。大学卒業後に就職する企業でずっと働き続ける必要はないので、やりたいことやそれができる企業を社会に出てから探すこともできると思います。

針谷さん:私は逆に落ち込むタイプでした。ただ、私は友達と話すことで落ち込んでいた状況が改善されたことが多かったと思います。話すことで落ち込んでいた状況が救われることがたくさんありました。落ち込んで悩んでいた時、友達に「命を取られるわけではないだろ(笑)」と言われたことは特に印象に残っています。

― 自分のタイプは何を通して知っていきましたか?
針谷さん:人と話すことだと思います。日常的な会話の中で、相手から自分のタイプやモノの考え方について言われたことを思い返してみるとその通りだと感じることが多いです。

今井さん:就職活動でよくあるような診断テストをやることで、なんとなく自分のタイプが見えてくることがありますが、人との関わりの中で自分のタイプを知っていくことが多いです。自分のタイプは集団に属して、その中での自分の役割からも見えてくると思うので、いろいろな人と交流することは大事だと思います。

― 自分の学生時代の専門分野と希望する会社の業務内容が違っている場合もあると思います。そんな時はどのように考えたら良いでしょうか?
今井さん:具体的に、この会社に入りこのような事業に携わっていきたい、と細かく考えすぎないことです。様々な仕事をきちんとやり遂げれば、自分の経験になります。自分自身のキャリア形成の面から考えてもいろいろな仕事に関わるのは良いことだと思います。もしどうしてもやりたくない仕事があれば、実際に面接の時に聞いておけば良いと思います。

針谷さん:どの大学でも化粧品学を専門として学ぶ機会は少ないので、入社する学生の専門分野は様々です。大学時代で勉強したことと仕事の内容が一致しなくても、大学時代に学んだことは基礎知識として多様な場面で使えます。当社では、化粧品の中身だけを作っているわけではなくて、化粧品の外装や香料、使用法にもこだわりを持って作っていますし、お客さまへの技術の伝え方を担当している部署もあります。その際に、化粧品の中味担当には化学系専攻の方が適しているのでしょうが、実際は生物系の方や、まったく関係のない学部の出身者も携わっています。大学や大学院の修士くらいまでは基礎知識や論理的なものの考え方、諦めない気持ちなどを学ぶところであって、会社に入ってからの実際の仕事は、学び直すので大学での専門はあまり気にしなくてもよいかと思います。

― 化粧品や食品業界で貴社はトップクラスの人気があると思いますが、入社試験を突破する内定者に共通の経験・スキル・行動特性等あれば教えてください。
針谷さん:私自身が経験したり、周囲から聞いた話を踏まえて、あくまでも個人的な見解を述べさせてもらいますね。私が就職活動をしていた時代の当社の入社試験は今に比べると正直あまり大変ではありませんでした。バイオ系だと当時は製薬メーカーが人気で、化粧品メーカーは比較的入りやすかったのだと思います。私たちが働くグローバルイノベーションセンターは社会と調和し続ける都市型オープンラボとして、また、多様化する市場でグローバルに業界をリードするために2019年にオープンしました。今や海外売り上げも60%を超えている当社ですので、グローバル化には力を入れています。会社の方向性によると思いますが、これからの世の中、日々の学習や交換留学などで英語をはじめ外国語に触れる機会を作っておくことは、どの業界、企業に関わらず強みになると思います。

今井さん:私の同期を見ていて共通していると思うこととして、活力が高い人が多いです。活力というのは、学生時代に海外留学していた人や、ボランティア活動をしていた人など、何かしら一貫した信念のもとにある行動力と、そこから生まれた成功体験やリーダーシップがあることだと思います。これは私から見たら変わっているな、と感じる方は多いですが、それは個性の一つだと思います。また、会社もその個性を許容してくれる環境だと思います。

針谷さん:私は20年ほど前に集団面接の面接官をしたことがあるのですが、学生時代に一番頑張ったこと、力を入れてやったことは何ですか、と聞いていました。その際に、どこでどうやってどんな困難を乗り越えて何を成し遂げたのかを深掘っていくと答えられなくなってしまう人が出てきます。そうならないためにも、自分の軸を持ち、自分のこれまでの行動を振り返り、自分を把握し、強みや弱みを認識することが大切です。


資生堂グローバルイノベーションセンター見学 針谷さん(一番右)に説明していただく

コロナ禍で変化した社内の様子

― お二人は主に実験や研究をやられているとのことですが、様々な行動が制限されていたコロナ禍では、どのように日々の業務を行っていましたか?
今井さん:コロナの前は、多くの社員が実験しながら困ったことがあっても、その場で聞くとすぐに教えてもらえる環境でした。しかし、私が入社した時は在宅勤務が中心でしたので、実験に関わる仕事は何もできませんでした。ただ、そのままでは仕事が成立しないので、感染予防を十分にしたうえで出社したい人はしても良いという制度に変わりました。その後は、先輩が来ている時に自分も出社して教えてもらい、自分でできるようになったら一人で研究をどんどん進められるようになりました。会社としても社員に仕事をしてもらわないと困るので、仕事を教えてもらえる環境は整っていると思います。

― コロナ禍における社員同士のコミュニケーションはどうしていましたか?
今井さん
:入社して最初の頃は会社に行けない時期で、その後出社できるようになってからも、社内に人が多すぎて人と全然話せないという状態が続いていました。また、当社はフリーアドレス制のオフィスを採用しているので、決まった自分の座席がなく、どこに誰がいるのか分からない状態でした。しかし、それらは自分の努力でどうにでもなります。こちらから話しかけにくいと思っているということは、相手も話しかけにくいと思っていると考えられます。そのため、年齢関係なく自分から話しかけにいくことを心掛けていました。仕事は一人で進めることはできず、必ず周りの方との連携が必要になります。その信頼関係を築くためのコミュニケーションをする努力は不可欠だと思います。また、怒ってくれる人がいる環境はすごくありがたいことだと感じています。忙しい中でも自分に真摯に向き合って時間を割いてくださっていることなので、自分もそれ相応の努力をしないといけないと思うことができます。人に話しかけることは怖いことですが、話しかけにくいことを言い訳にしてはいけないと思います。

針谷さん:やはり自分から話しに行くことですね。今時いきなりガツンと怒る人なんていないので、自ら飛び込んでいくことが必要です。

― コロナ禍前後で働き方に変化はありましたか?
今井さん:前だと絶対出社が基本でしたが、今は会社に来たい人は出社するというように柔軟な働き方になっていると思います。コロナ禍で経済が停滞したと、マイナスに捉えがちですが、働き方が柔軟になった点など、マイナスなことばかりではありません。出社している人から見ると在宅で勤務している人はサボって見えることもあるかもしれませんが、仕事は成果で評価されるべきものだと思います。出社していても在宅勤務でも、成果が出ているかに着目する風潮になってきていると感じます。

資生堂グローバルイノベーションセンターのロビー

新しい環境に向き合う

― 入社直後は成果のために気持ちだけが先行してしまって焦ってしまうことがあるのではないかと思います。そのような時はどのように対処していますか?
今井さん:焦る気持ちはどうしてもありますが、追い込んでうまくいく人や、逆に楽観的に考えてうまくいく人など、人によって成果の出し方はそれぞれです。私自身はどちらかと言うと、長い社会人人生の中で考えてみれば、入社してすぐのミスはそれほど気にすることではない、というように楽観的に考えることが多いです。このように、うまくいかない経験とそれをどう乗り越えるかを大学時代に経験しておくことが大切です。例えば、学生時代の研究活動でPDCAサイクルを回して自分のやり方を確立することができると思います。私の楽観的に考えて対処するやり方も大学時代の研究活動での経験から得たものです。社会人になってすぐうまくいかないことにぶつかるのは普通です。上司もそれを分かっています。自分なりのやり方で一生懸命仕事に向き合っていれば、それほど焦る必要はないと思います。自分を大きく見せようとするのではなく、自分の成果で評価してもらえるという環境をむしろ大事にするべきです。

― グローバル化が進んでいますが、貴社では外国人社員の方がどのぐらいの割合を占めていますか?そして、会社内ではどのくらい英語でコミュニケーションするようになっていますか?
今井さん
:近年は外国人の社員が徐々に増えています。もちろん、日本語が全然話せない外国人社員も沢山おりますので、そのような方と仕事をする時は英語でコミュニケーションをとっています。ただ、日本人同士で英語を話すことはあまりないです。日本語が話せないのが悪いというわけではなくて、英語を話せるほうが望ましいという風潮になっていると感じます。

積極的に自分から行動する

― 針谷さんは様々な部署を異動してお仕事されているのが興味深いです。こうした部署配属は自分で希望したのか、いろいろなめぐり合わせで部署配属されたのか、どちらですか?
針谷さん
:めぐり合わせが多かったです。過去に、美容医療の研究と事業の戦略を考える部署に配属されたことがありました。私の憶測ではありますが、この時、私は試されていたと思います。その部署では、自分の提案が通って採用されるなど仕事をうまく進めることができていました。そこで上司の目に止まったのかもしれません。その後、上司から「針谷は器用だからできるでしょ」と言われ、研究を行う部隊を束ねるマネジメントを打診されました。マネジメント(管理職)は、これまで自分の部署でメンバーと行ってきた研究をどのようにお客さま価値としてアウトプットするかという、これまでとは違った考え方が必要でした。この配属は会社の中でたまたま空いた穴に入るような形で自分の希望ではありませんでしたが、自分のキャリアの転機となりました。企業内講習会で発言・質問をしたり、自分の置かれた部署でしっかり結果を出すことを心掛けて行ってきたので、こうした積極的な行動を続けていくと、様々な仕事を任せてもらえるようになると思います。

― 自分の会社の一番好きなところを教えてください。
針谷さん:いろいろなな経験ができたことです。私は様々な部署を異動することが多かったのですが、今こうして振り返ってみると異動を通して多くの経験ができたので良かったです。また、個人によって感じ方は違うと思いますが、福利厚生は充実していると思います。

今井さん:私が一番好きなところは個人のやりたいことを尊重してくれるところです。若い人に何でも押し付けるわけではなく、できる人はどんどん上がっていけるシステムができています。一人一人を尊重してくれる会社だと感じています。また、先ほどのポッドキャストもそうですが、普段の仕事以外に自分のやりたいことにも時間配分ができます。

まずは学生時代を楽しむこと

― 最後に、学生へメッセージをお願いします。
針谷さん:まずは学生生活を楽しんでください。楽しむ中でコミュニケーション力を身につけることや自分と向き合う時間を作ることで自分の興味の発見につながると思います。今後、どんな社会でもどんな企業や業種でもコミュニケーション力や人を大事にする気持ちは大切です。それを見つける期間にしてほしいです。もう一つ、何かに“一所懸命”に取り組んでみてください。“一生懸命”とは違い“一所懸命”すなわち、1つの置かれた場所、部活でもバイトでも研究室でも置かれた場所で、自分らしく懸命に取り組んでみることが大事です。懸命に頑張って得たことは社会に出て必ず役に立つと思います。

今井さん:大学での勉強ももちろんですが、それ以外のことも大切にしてください。大学生は1か月以上の長期休みを取れるので、それを利用して長期間海外に行ってみることや、やりたいことを突き詰める時間に活用することができます。社会人になってからは大学生の時のように長期的に休みを取ることがなかなかできないので、それを十分に活用してください。何かに取り組んだからこそ感じたことや出会う人を大切にして、学生生活を過ごしてほしいです。そこで学んだことが社会に出た時に役に立つはずです。

― 針谷さん、今井さん、ありがとうございました!


Career Buddyメンバーで針谷さんを囲んで記念撮影

最後に資生堂グローバルイノベーションセンターの1階は資生堂パーラーのカフェ&ランチレストランと、ビューティーバーと呼ばれる化粧品の無料体験コーナーやお客さま個々人に合ったパーソナライズ化粧品の製造・販売が行われており、2階には資生堂の歴史や文化、技術を学べるミュージアムもあります。1,2階は自由に見学が可能ですので、皆さんにおすすめします!


執筆:工学部  3年 山内 翼
   経済学部 2年 王 訳賢
編集:キャリアセンター
インタビュー日:2023年2月27日

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