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潰瘍性大腸炎における2週間の鍼を用いた仙骨刺激療法の抗炎症効果


背景

アメリカにおける炎症性腸疾患(IBD)の有病率は0.9%、うちクローン病(CD)が0.5%、潰瘍性大腸炎(UC)が0.4%を占める。

 IBDによって損傷した腸粘膜の治癒には、交感神経と副交感神経からのシグナル伝達が関与している。またIBDの再燃時には、自律神経バランスは交感神経優位にシフトする。

仙骨刺激療法(SNS )は便失禁および尿失禁の治療法として確立しており、長期的な植え込み型 SNS リードと植え込み型パルスにより、世界中で 30 万人以上の患者が使用している。

我々は、軽度および中等度のUC患者を対象に、SNSに対する臨床的反応とそのメカニズムを評価を目的に、パイロット臨床試験を実施した。今回はそのパイロット試験を踏まえての本試験を行った。



対象と方法


対象:26名のUC患者

・SNSと偽SNS刺激
両群ともに介入は鍼灸師が担当し、治療時間は1時間、14日連続・14日間行った。

<SNS群>
ステンレス鍼(直径0.45mm・長さ100~125mm)を両側S3・4へ刺入(経穴で示すとBL33とBL34:中髎と下髎)。刺入角度は内側下方に向けて60°の斜刺で60~80mmとした。同側同士を繋ぎ、通電刺激(10秒ON・90秒OFF・パルス幅5Hz・振幅2~10mA・患者が許容できる感覚レベルか、それより若干上)を行った。刺激部位への正確性は、通電時の感覚と数名の患者で施行されたX線にて確認した。

(通電時間明記されてないけど、もしかして1時間なのか…??)

<偽SNS群>
鍼はS3とS4から両側下方に20mm、側方に8~10cmにし、同じ刺激パラメータで行った。


・アウトカム

主要評価項目:Mayoスコア
→排便回数・血便・粘膜所見・医師による全般的評価によるもの。点数は3日間の所見に基づく。点数が高ければ高いほど重症

 臨床効果は、治療によってMayoスコアの合計が2点以上25%以上(治療前と比較して)減少し、それに伴ってMayoサブスコアが1点以上減少した場合、またはMayoサブスコアの絶対値が0〜1であった場合と定義した。



結果

・SNSの臨床的反応性
SNS群15名、偽SNS群11名となった。患者側のみブラインドされる単盲検試験である。
 全被験者で試験は終了し、副作用(感染や痛みなど)もなかった。SNS群では73.33%の奏功率(被験者15人中11人)に対し、偽SNS群では27.27%の奏効率(被験者11人中3人)となった。


・MayoスコアとSNS治療効果
 Primary outcomeであるMayoスコアはSNS群で有意に減少したが、偽SNS群では有意差はなかった。

・治療前後の血漿CRP濃度
 SNS群では治療前後の比較で血漿CRP濃度の有意な現象が見られた(治療前平均3.2;四分位1-12.1、治療後平均3.2;四分位1-5.1、p<0.05)。

・炎症性サイトカイン
 治療前と比較して治療後のTNF-αの血清レベルの低下(正常化)は、SNS群で有意であった(治療前19.1、四分位:9.4-27.8 vs 治療後10.9、四分位5.6-16.8、p<0.001)。

・自律神経活動
 偽SNS群では、治療後のHRVのスペクトル分析によって評価したところ、迷走神経活動(HF)に有意な減少、交感神経活動(LF)に有意な増加がみられた。対照的に、このような状況はSNS群ではみられなかった。


糞便微生物叢の絶対量に及ぼす影響なども記載されているが、詳しくないので割愛



考察

 本研究は、UC患者にSNSを行った最初の研究である。患者数に制限はあるものの、SNS群では73% responderに対し、偽SNS群では27%であった。同様に、迷走神経刺激(VNS)をCD患者に使用した研究では、2週間後、4週間後、3ヵ月後に78% responder(7/9)が得られた。
 SNSとVNSは、CRP、炎症性サイトカイン、自律神経活動に対して同様の有益な効果を示した。SNSとVNSはともに、日中の間欠的な使用(連続的ではなく)において有効であった: SNSは4%の時間(1日1回60分)、VNSは9%の時間(終日0.5分オン、5分オフ)、または0.4%~1.4%の時間(1日1~4回5分)。
 その他の刺激パラメーターも同様である
SNS:0.5msecのパルス幅・頻度5Hz
VNS:0.25~0.5msecのパルス幅・頻度10Hz

我々は、連続的なSNS・VNSは副交感神経系の過活動(overactivation)や脳の可塑性効果の減少につながるため、非連続的なSNSやVNSが副交感神経活性は、抗炎症効果に重要との仮説を立てた。
→パルス幅0.1msec・5HzのSNSをCD患者5名に24時間連続的に適用した臨床研究によって支持されている。

 鍼を用いた低侵襲経皮的SNSと完全埋め込み型SNSを比較すると、鍼は、リード移動、疼痛、感染などの埋め込みに関連する合併症を回避できるため、ベネフィット対リスク比がより優れていることが示唆される。しかし、植め込みSN Sは、経皮的SNSよりもコンプライアンスが良好であることに留意すべきである。


炎症性腸疾患に対するVNSは、主に小腸と脾臓への迷走神経求心路ー遠心路を介しての効果である。SNSは、おそらく2つの神経回路により媒介している;① 小腸および脾臓への脊髄求心性-迷走神経経路、②大腸への仙骨からの直接性求心性経路
仙骨神経は心臓支配がないため、標的外の心血管系の副作用を引き起こす可能性のあるVNSよりも、SNSの方が安全なアプローチである。またVNSよりもSNSの方が外科的にも安全・低リスクである。


結語

軽度および中等度のUC患者は、2週間のSNSに反応性を示した。その有効性と安全性を評価するためにさらなる研究を行った後、鍼を介した一時的なSNSは、長期的な外科的SNS治療を行うためと植え込み型パルスジェネレータの植え込みを検討する前に、SNS治療反応者を同定するための有用なスクリーニングツールになるかもしれない。



***自分メモ***
・オープンアクセスじゃないので、だいぶ端折って書いてみたけど、もしかしてダメだったりするのかな、、、(ダメならコメントください)
・タイトルだけでは、鍼を使ったかどうかわからなかった
・14日連続!?と思ったけど、毎週を何ヶ月も続けるよりは遂行しやすいプロトコルなのかもなあ〜と思った
・偽SNS群では自律神経活動が悪化(本文ではworsening)しちゃうのが衝撃だった
・以前ブラジル?でも、外科的Neuromodulationの埋め込み前に鍼でのNeuromodulationをして、反応性を検討っていう論文あったけど、これも結語は同じ感じ
・やっぱり元に戻っちゃうからってことなのかな




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