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【短編】オオカミ少年

「オオカミが来たぞーー!」

いつものように少年は叫んだ。
血相を変えた村人たちが家から飛び出してきた。と同時に少年の顔を見て落胆した。もう幾度となく繰り返された出来事なのだ。
村人「またあいつの嫌がらせだ!おい!いい加減にしろ!!!」
そう言われた時にはもう少年の姿はそこに無かった。
人が驚いて騙されたことを知ったときの顔を見るのが少年の楽しみだった。自分の人生が誰からも必要とされていないと孤独を感じていた少年が、他者から存在を無視できぬ者として扱われる唯一の瞬間だった。たとえそれが憎しみという感情を注がれようともだ。
そしてそれはいつしか彼の日課となり、生きる力の糧となっていった。

だがある日、少年は狼に襲われた。本当に襲われたのだ。
少年「オオカミが来たぞーー!誰か助けてくれー!」
渾身を込めて声を上げても、残念ながら誰一人それを信じるものはいなかった。
少年「ほうとうなんだ!狼に襲われているだよ、だれか、たすけて!!!」
少年は自身の行いを悔やんだ。
少年「ああ、神様、今までの行いをお許しください。どうか私を助けてください。」少年は神に祈った。

突然、目の前が太陽が昇ったかの如く眩しく光りだし、そして神が現れた。
神は狼の動きを制したようだった。そして少年に話しかけた。
神「お前はいつも嘘をついて村人を困らせておるな。まじめな村人を困らせてはならぬ。誓うなら助けてやろう。今後二度と「狼」と口に出してはならぬ!もし破った時は地獄へ落ちることになるだろう。よいな?」
少年「はい、約束します!必ず守ります。だからどうか神様、お助けください!」
神「よろしい、助けてしんぜよう!これからもお前を見ておるぞ、少年!」
まばゆい光が波がさーっと引くように目の前から消えていった。と同時に狼も消えていた。

少年は助かったのだ。
少年は涙を流し喜んだ。そして神に感謝した。
少年「ああ、ほんとうに、ほんとうにありがとうございます!おお!神よ!!!」

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