創作未来神話「ガーディアン・フィーリング」12話 絵美とジョニーと周りのひとびと

11話のあらすじ

緑色の肌の小さな宇宙人の配達屋、グレイ宅急便が作ったというドリームゲームでは、宇宙船に乗れるという。絵美の姉、真菜は、グレイから宇宙人たちの技術で作ったというペンダントを借り、VR(仮想現実)でドリームゲームが遊べるようになった。ただ、そのことをひとまず妹には隠したのだった。一方、絵美が遊んでみたいと言ったので、ジョニーはさっそくグレイ宅急便のドリームゲームをひとりで試してみることにしたのだった。ここからはジョニーの記録。

12話

日時: 2222年2月17日 天使のささやき記念日(火星自然創生コロニーにて)

記録者: ジョニー  マイジェンダー: やや男性 15才

出身地: ブリテン  趣味: ネコとたわむれること


今日は、日本で「天使のささやき記念日」という日だ。イギリスでは、そんなに毎日を記念日にはしないので、律儀に一日づつ何らかの記念日にしていく日本のスタイルは、何の日か気にするだけでも、毎日がちょっと楽しいだろうな、という気がする。

今日のこの日は、1978年に、日本の北の地、北海道で日本の最も寒い日を観測した記念日らしい。そのとき記録された気温は、摂氏マイナス41.2度。火星の平均気温は摂氏マイナス55度。夏に27度くらいになるところもあるけど、ほとんどの地表は極寒の世界。火星の気温に比べると、地球のこの極寒の記録はまだずいぶんと暖かいほうだ。地球の気温は、本当に、生き物が多く生存するための絶妙なバランスで構成されている。

21世紀の初めごろから半世紀は、過度な開発や、地球に負荷がかかるエネルギーの消費、自然環境の破壊などによる気候変動が増え、温暖化しすぎて荒い自然となった。そのころは、将来は人間を含めた生き物に過酷で、もしかすると壊滅的なディストピアの状況になるとも言われていたけれど。当時のひとびとが地球で一丸となって、それまでの消費社会から、持続可能な自然とひととの共生、共存を大切にする社会に変わり、23世紀の現在には、確かに火山活動や地震やタイフーンや、そして時々起こる感染症のパンデミックなどの無い日なんてないけれど、ひとびとと生き物が暮らし続けていけるくらいには、穏やかと言っていい地球の環境が続いている。

それにしても、気温が一番低くなった日を「天使のささやき記念日」と名付けるなんて、面白い。日本人は天使をどんな存在だと考えているんだろう?

さて、ここ数日で個人ドームの仕事を片付けて、遊ぶ時間を作ることが出来た僕は、いよいよグレイ宅急便のドリームゲームをやってみることにした。新しいゲームを始めようとするときは、こう、意識が高揚する感じがするところが好きだ。

僕はベッドルームに入り、ヘッドギアをかぶって寝転がった。スイッチを押すと、夢を見るために催眠モードとなり、僕は一旦意識を手放した。

目を開けると、場所は相変わらず僕のベッドルームだった。

「あれ? これはゲームの中……だよな?」

僕は驚いた。今までにやってきたゲームは、大自然の中だったり、歴史上のワンシーンだったり、戦場だったり、ファンタジーな世界だったり、少なくともこことは違うところが最初に目に入るようになっていたから。

「こんにちハ! グレイ宅急便だヨ」

どこからともなく、リトルグレイの声。

「あ、ああ……どうぞ」

「お邪魔しますネ」

ふっ、と目の前に、ピカピカと光るUFOに乗ってグレイが現れた。僕のベッドの横に着陸する。

「今から、この宇宙船を貸してあげるヨ! どこにでも遊びに行けるかラ、楽しんできてネ。ジョニーさんハ、地球人さんが作っタ火星の乗り物、フロンティア・ロボを動かせるスキルを持っているのデ、この宇宙船も同じ仕様にしてあるヨ! それに上下、ワープ機能が付いているくらいだから、すぐに慣れるネ」

「ありがとう。……これはゲームの中なんですよね?」

「そうだヨ! 宇宙船の中に入れば、360度のスクリーンモードがあるかラ、いろんな星の姿を見に行けるネ」

うわっ。こんなにリアルに、狭い個人ドームから抜け出せるなんて、ものすごく楽しそうだ。

「さっそくやってみます。グレイさん、どうもありがとう」

「誰かと話したくなったラ、グレイもいるシ、高次元宇宙の宇宙人も来てくれるヨ」

「えっ。ほとんど、地球がある三次元の物理的な世界には来ないっていう?」

「ウン! このドリームゲームは『全天21星連合』の宇宙人とも協力しているからネ! 会いたいときは、ドリームゲームのなかで『コミュニ・クリスタル』を使うんだヨ」

「えっ。ゲームの世界なのに、そこまでリアルなのか」

僕は、リビングルームに戻ってみた。それはいつもの僕の部屋で、テーブルの上に置いた腕時計タイプの「コミュニ・クリスタル」もそのまま再現されている。本当にここは夢の世界なんだろうか、と疑ってしまうほどだ。腕に身に着けて、僕は小さなUFOがあるベッドルームに戻った。

「どの星の宇宙人と話したいカ、迷うときは、とりあえずシリウスのラミコッドさんを頼ってみてネ」

「シリウスの、ラミコッドさん?」

「シリウス星は、太陽のように恒星として、その周辺をまとめる星としての大きくてとっても強い集合意識があるんだヨ。シリウスの宇宙人は、そのシリウス星の集合意識に強くつながっているひとたちなんダ。地球人さんたちが、命といウ地球に広がった大きな集合体であるようにネ。シリウスの周辺に、とっても昔に三次元の物質としては滅びたけれド、地球人さんと似たハビタブルゾーン(生命存続可能域)として存在した星があって、そこを故郷にしている宇宙意識は地球人さんたちに対して『全天21星連合』のなかのシリウス人を名乗るんダ」

……三次元世界では滅びたけれど、意識は残る。ローズ姉さんや、アマビエさまやスサノオノミコトさま、ラファエル、ジュピター。みんなとのやりとりが無かったら、にわかには信じられないところだけれど。地球にそうした霊魂や神さまがたが残るんだから、地球以外のところでだって、その意識はアストラル・サイドにもあるのだろう。高次元の宇宙人というのは、地球よりももっと古い宇宙の星々の神さまと言ってもいいのかもしれない。

「この宇宙の『全天21星連合』の星々の意識は、地球のひとびとの神さまたちと同じデ、はるかな昔から、地球ヲずっと見守り、導いてきたんだヨ。そのなかのシリウスは、かつてあったハビタブルゾーンになった星とともにエネルギー振動周波数帯域が、場所と時間を超えて五次元に達したエリアを持つかラ、三次元の物理的には滅びてモ、星の魂、集合意識体としては四次元以上のアストラル・サイドに残っていテ、高次元宇宙の中では、物理的なこの三次元世界とかなり近いネ。五次元世界ハ、グレイたちと似ていテ、魂がみんな同じなんだけド、固有の魂、意識体を持つ地球人さんに合わせテ、固有の魂にちょっと近づくこともできるネ。それデ、シリウスとしての集合意識と、地球人さんたちが持つ固有の意識の中間に魂が位置するラミコッドさんという名前の案内人がドリームゲームの中にはいるんだヨ。宇宙船デあっちこっちに行き過ぎて、迷ったときには呼んでみてネ」

「分かった。宇宙の彼方に行って、どこにいるかが分からなくなって、今いるこの部屋に戻りたいときに、そのシリウス人のラミコッドさんを呼んでみればいいんだね」

「そう! それでハ宇宙旅行を楽しんでネ」

「うん、行ってくる」

僕は、ベッドルームに置かれたUFOの中に乗り込んだ。本当に、火星の移動手段であるフロンティア・ロボとそっくりのコクピッド(操縦室)だ! 違うのは、操作する器具と椅子の周囲が360度、半円型の透明な壁になっていて、外の僕の部屋が写っているところ。小さな機械の内部に閉じ込められているという圧迫感が無い。

「これが、上下の移動をするやつだな?」

僕は、フロンティア・ロボのコクピッドには無かった上下に動かすレバー、そしてワープ(空間移動)の機能を使うボタンを見つけた。これならすぐに慣れることが出来そうだ。ちょっとレバーを上にしたら、ふわりとUFOが浮き上がった。

「行ってらっしゃイ、良い旅ヲ~!」

ひらひらと小さな緑色の手を振るリトルグレイにこちらからも挨拶をして、僕は火星の個人ドームから、UFOで空に向かった。

(続く)

次回予告

13話は、ジョニーと宇宙船に乗ってVR(仮想現実)の空へ、火星のあちこちへと出かけることになった、絵美の記録。

どうぞ、お楽しみに~。

※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーからユウリラさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。




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