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創作未来神話「ガーディアン・フィーリング」11話 絵美とジョニーと周りのひとびと

10話のあらすじ

ジョニーからの、バレンタインメッセージカードを「グレイ宅急便」で受け取った絵美。彼女は、姉の真菜にも火星のお土産である火星人チョコを贈ることを思いつき「グレイ宅急便」にさっそく頼んで届けてもらう。ここからは真菜の記録。

11話

日時: 2222年2月14日 バレンタインデー(地球、愛知)

記録者: 真菜(マナ)  マイジェンダー: 女性 18才

出身地: 日本  趣味: なし


わたしは、家の庭に現れたピカピカと光る小さなUFOを見て、馬鹿みたいな顔をしていた。まさにポカーン、という感じ。えっ、妹の絵美が火星で生活を始める際、家族間の通信手段になる「コミュニ・クリスタル」を配布してもらったときに聞いてはいたけど。火星や地球で素早い小さな物資のやりとりを専門に請け負っている宇宙人の宅急便があって「コミュニ・クリスタル」で依頼することが出来るって。

「まいド! グレイ宅急便です。絵美さんかラ、火星人チョコとおまけの言葉を預かっていまス。神社へお参りに行ってくれたことへのお礼だそうですヨ」

わっ、本当に緑色の肌の小さな宇宙人だ! わたしは、日ごろの憂鬱がいっぺんに吹き飛んだ気分になった。妹の絵美は、こんな非日常をいつも送っているんだろうか。宇宙、と聞くと、こんな何も取りえの無いわたしでさえふわふわというか、ワクワクした気分になるのは何故なんだろう。

「ありがとうございます」

わたしは、絵美からの火星人チョコを受け取った。

「それかラ、これは宣伝だヨ! 今、グレイ宅急便はドリームゲームで遊んでくれるひとを募集しているヨ。みんな宇宙船に乗れるから、ぜひやってみてネ」

「えっ……でもわたしはドリームゲームの機械を持っていないし、絵美みたいに宇宙の知識や技術を持っている訳じゃないし。……遊び友達だって、いないし」

わたしはうつむいた。

「だったラ、これを貸してあげるヨ!」

グレイはUFOの中をごそごそと探して、ひとつの小さな黒い石のペンダントを持ってきた。

「これハ、グレイと、高次元宇宙にいる宇宙人たちの技術で作っタ、ドリームゲームが遊べるペンダントだヨ」

「えっ、こんなに小さなペンダントで、ドリームゲームが出来るんですか?」

「ウン、地球のひとたちが作った、脳の電気信号だけヲ元にしテ、夢を制御するタイプのドリームゲームは、大きくて、動かしにくいかラ、グレイみたいに小さな宇宙船で移動する宇宙人には向いていないんだヨ! このペンダントがあれバ、人間さんの体内電流すべてを元にしタ、すぺーすもにたりんぐ技術を使っテVR(仮想現実)の世界ハ、ちゃんと楽しめるネ! ひとりでモ遊べるヨ。その時は最初にグレイがVRの中の宇宙を案内するから安心してネ」

「えっ……」

グレイと遊べる! えっ、どうしよう。すごく楽しそうなんだけど。

「でも……宇宙のどこかへ、さらっていったり、何か恐い実験をしたりするんじゃないですか?」

「しないヨ! グレイ宅急便は信頼第一! 昔のそノ、宇宙人が恐くテ危険だっていウ情報は、むしろ200年以上前の地球人が、同じ地球人と殺し合ったり、実験体として扱ったリ、その意識レベルでもってグレイたち地球に不時着しタ宇宙人にも同じことをしていタ、ひとがひとを信じられない悲しイ時代の古いでーたなんだヨ。だから、グレイ以外の高次元宇宙にいる宇宙人たちハ、なかなかこの地球がある三次元世界にハ、ボディを持って降りてくることがなくなったんダ」

「そうなんですか……疑ってしまって、ごめんなさい」

「うウん、疑うのは自分の安全を守るためだから仕方がないヨ。それも人間さんが持つ大切な感情だネ。グレイ宅急便が作ったドリームゲームは、そんな高次元宇宙の星の宇宙人も遊んでくれるのを待っているヨ! ひとりでも大丈夫だからネ」

「……はい。じゃあ、近いうちにやってみます。ペンダント、お借りします」

「ウン! それでハ、グレイは行きますネ」

小さな緑色の肌の宇宙人は、UFOに乗り込んでフワリと空へ去っていった。

わたしは、意識を集中して「コミュニ・クリスタル」で絵美にアクセスした。

「あっ、お姉ちゃん。バレンタインデーの家族チョコ、届いた?」

「うん。届いた」

「喜んでくれたらいいんだけど……」

「グレイに会わせてくれて、ありがとう」

「良かった、楽しんでもらえたんだ」

「うん」

どうしよう。わたしもVRのドリームゲームが遊べるようになったことを言うべきだろうか。……いや。せっかくの絵美とボーイフレンドとの時間を、わたしが割り込むわけにはいかない。それに、ひとりだったらグレイが一緒に遊んでくれるという、そのことも気になるし。

「……いいバレンタインデーになった。絵美と違って、わたしに相手は、相変わらずいないけどね」

「そんな……そのうち、きっといいひとが現れるよ、お姉ちゃん」

「じゃあバイバイ、絵美」

まただ。絵美の言葉から、勝手に自分と妹を比較して、年ごろなのにボーイフレンドもいないダメなわたしが嫌になってイライラしてきた。わたしは「コミュニ・クリスタル」の通信を切った。

グレイが遊べるようにしてくれたドリームゲームが、いい気晴らしになるといいな……。そんなかすかな望みを、わたしは抱いた。

(続く)

次回予告

12話はガールフレンド、絵美との楽しい時間を作るため、グレイが作ったというドリームゲームをまずはひとりで試してみた、ジョニーの記録。

どうぞ、お楽しみに~。

※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーからソエジマケイタ(キャラ・写真・似顔絵)さんの作品をお借りしました。ありがとうございます。




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