人生は５０から！ 信長公、アフリカへ行く 六十九話「石垣島からの船出」
織田信長： みなさんご存知、尾張生まれの第六天の魔王。この神話×歴史ファンタジー小説のなかでは、本能寺の変で天使に救ってもらう。一般人、一介の冒険商人「小田信春」と名乗り一番のお気に入りだった黒人侍弥助をアフリカへ送り届ける旅を始める。
弥助： 本能寺の変でも、最後まで戦い、信長を守ろうとした黒人侍。気は優しくて力持ち。明智勢に捕まったが放たれ、その後は故郷アフリカへ信長とともに発つ。
ジョアン/ジョヴァンニ： 没落する故郷ヴェネツィアでの商売に見切りをつけ、アフリカは喜望峰回りの航路を確立し勃興するポルトガルの帆船に乗って、はるばる日本へやってきた十七才の少年。宣教師ルイス・フロイスの依頼によって信長をサポートすることに。愛称「蘭丸」の名で呼ばれる。
助左衛門： 堺の港で頭角を現し始めた商人。ジョアンと同い年。この物語では、大商人、今井宗久の弟子。海外への強い憧れから、信長たちと旅を始める。のちの納屋または呂宋助左衛門。
ゴブ太郎： ひとに化けて船に乗っているうちに、日本へ迷い込んできた妖精のゴブリン。信長に「ゴブ太郎」の名をもらい、ともに旅をすることに。
天使ナナシ： 本能寺で信長を救い、その後も旅を見守って同行する天使。
六十八話のあらすじ
信長公一行と、石垣島の英雄アカハチがともに戦って倒した双頭のハブ蛇は、弔われたことにより、護り手の龍神さまとなりました。その祝杯をあげると、双頭の龍神さまは新たな神術を授けてくださったのでした。
六十九話
貴重な食料であるいぶしたハブ肉と、アカハチが持ってきてくれた魚介類とを信長一行は小舟で西洋帆船キャラック「濃姫号」へと運んだ。ふわりふわりと、新たな石垣島の護り手となった双頭の龍神も見送りに来る。
『ノッブ！ 出港の準備は出来ているヨ！』と、ゴブ太郎が船から顔を出す。
『おいらも、船のことをすこし手伝えるようになったよ！ おいしいお菓子をくれるんだって？』と、キジムナーもゴブ太郎のとなりにひょっこりと現れる。
『おお、ゴブ太郎、キジムナー。これはアカハチ殿に貰うた、じーまみー豆腐じゃ。じーまみーは沖縄ことばで『落花生』の意味であるらしいぞ。甘辛のタレで食すそうじゃ』
信長は船に乗り込み、ゴブ太郎とキジムナーにじーまみー豆腐を渡した。
『モグモグ、おいしいね、キジムナー』
『うん！ ノッブはいいひとだね』
ふたりは笑顔でじーまみー豆腐をたいらげた。
「かかか、儂がゴブ太郎とキジムナーにいいひとなのは、ふたりが良き働き者だからじゃ。昔よく藤吉郎（秀吉）も儂のためによう働いてくれたものじゃ、そうした者にはきちんと褒美をくれてやらねばのう」
信長はふたりがおいしそうに食べるのを見ながら、笑い声をあげた。
『信長公、なかなか楽しかったぞ。また相撲でもしに、石垣島へ来い』
アカハチが見送りの言葉を告げる。
「そうでござるな、また何かの折に、石垣島へと来ることができたならば、そのときには相撲勝負を」と信長。
『余らとも、また酒宴をしようぞ～』と、まだ酔い気味の双頭の龍神がゆらゆらと頭と首を揺らす。
「お世話になりました、双頭の龍神さま。 僕に授けてくださった【防毒】で、ここにいるみんなを助けられるようになります！」
「せやせや！ 俺らふたりで、ごっつう強い魔法使いになりましたさかいな、このふたつの毒に関わる神術で。ほんまに感謝感謝やで～」
ジョアンと助左衛門のふたりが双頭の龍神に礼を告げる。
「アカハチ公も、龍神さまも、元気で！」
弥助も石垣島の護り手たちに、手を振った。
『それでは公、出港をすると致しましょうか』
パタパタと翼をはためかせ、天使ナナシが降りてくる。
「よし、それではこれから、那覇へ向けての出港じゃ！」と信長は音頭をとった。風に船の帆がふくらむ。
「まつさん、那覇のその次は平戸や、もうすぐ会えるで、もうちょっとの辛抱や～！」
想い溢れた助左衛門が、平戸の方角の海に向かって呼びかけた。
（続く）
※ じーまみー豆腐は、じーまーみ豆腐とも呼ばれ、沖縄や石垣島などで作られている名産品のお豆腐です。甘辛のタレで食べます。石垣島のおみやげのおやつには、石垣島のジャージー牛乳やお塩などをふんだんに使った手作りプリンや、ほかにもさまざまなおいしそうなものがあって、ひとつを選ぶのに迷って、最終的に過去に石垣島へ旅行したときに食べたものを物語に取り入れました。石垣島は、また行きたくなる魅力がいっぱいです。
次回予告
信長公一行は、那覇の舜天公へ首尾よく宝の地図が見つかったことを報告します。
どうぞ、お楽しみに～。
※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーよりkey-coさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。
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