見出し画像

先日、あるお客さんとシナリオプランニングの導入の話しをしているとき、プロジェクトマネジメントの話しになった。

曰く、「シナリオプランニングの取り組みを上司に説明するというのを考えた時、彼は結構うるさい人なんですけど、いろいろ反論されたら、どうすれば良いですかね?」というものだった。

世の中にはそういう課題(厄介な上司対策)に対処するための本がたくさん出ている。だから、そういう状況に対処するためには、そういう本を手に取れば良い。

たしかにそれも一理ある。

ただ、せっかくシナリオプランニングというこれまでの考え方にとらわれない視点を得るための手法に取り組むのだから、そういうわかりやすい対処法以外にも目を向けるための問いを考えてみるのも良い。

実際にその時、そのお客さんには「本当に、その上司に説明しないといけないのかって考えてみるのはどうですか?」と投げかけてみた。

「戦略」と「戦術」という視点に自覚的になる

先日書いた「不確実な時代の学び方」や、先日書いた「考える幅を「点」から「線」に広げてみる」に共通しているメッセージは、自分の視点に自覚的になるということだ。

同じように「自分の視点に自覚的になる」というメッセージから、今回の厄介な上司に説明問題について考えると、ひとつには「戦略か、戦術か」という視点がある。

佐藤義典氏の『経営戦略立案シナリオ』は「戦略は道筋、戦術は具体策」という表題からはじまり、戦略と戦術の違いについて次のように解説されている。

戦略とは、「勝つための道筋」であり、戦術とは、その道筋をどうやって一歩一歩たどるかだ。

この解釈に従うと、うるさい上司に反論するための対処法を具体的な本などから考えることは、道筋を一歩一歩進んでいくような「戦術」に相当する。

一方、「本当に、その上司に説明しないといけないのかって考えてみるのはどうですか?」という問いで考えるのは、シナリオプランニングを導入するという目的を達成するための道筋を考え直すという「戦略」に相当する。

課題に反応しすぎず、とらえ直す

通常、私たちは目の前のことを課題だと認識すると、それを解決するという「戦術」的な発想にいきやすくなってしまう。

しかし、その課題が起きている、あるいは起きそうな状況を俯瞰的にとらえ直してみるとどうだろう?

その課題に遭遇しなくて済むような「戦略」に転換する可能性が見えてくるかもしれない。その結果、課題に遭遇しなくて済むというだけではなくて、そもそもの目的自体を見直す機会になるかもしれない。

ここまで読むと、ややこしい経営の話しのように聞こえるかもしれないが、ここで書いたように課題に対して「戦術」的に対処しようとしている状況を「戦略」的に見直すと、そもそも課題がなくなるということは、日常生活でもよくある。

例えば「本を読むのが遅くて積ん読が増え続けているから、速読を学ぼう」と思っているとする。本を読むのが遅いという課題に対して、速読法という戦術的な対応をとろうとしている。

ここで「そもそも、何のために本を読もうとしているのか?」という感じで、方向性を問い直すような問いを考えれば、もしかすると「たくさんの本を読まなければいけない」という戦略(道筋)自体も変わってくるかもしれない。

視点に自覚的になるためのストックを増やす

ここまで紹介してきて、「これは戦略と戦術を都合の良いように使っているだけだ」という意見がある人もいるかもしれない。

ただ、ここで伝えたいのは、厳密な意味での戦略や戦術の定義や使い方の議論ではなく、上でも書いたように「視点に自覚的になる」ためのヒントとして、「戦略と戦術」というような対比的な概念を使うことだ。

同じように考えると、「不確実な時代の学び方」では「外部(世界)と内部(自分)」というセットを応用しているし、「考える幅を「点」から「線」に広げてみる」ではタイトルのとおり「点と線」というセットを応用している。

こういう形で、自分の視点に自覚的になり、さらに視点を自由に動かすヒントとなるような使いやすいストックを蓄えていくことは、とても役に立つはずだ。

【PR】シナリオプランニングの意味やつくりかたをコンパクトに解説した実践ガイドブックを公開しています。

Photo by Samuel Zeller on Unsplash

サポートいただき、ありがとうございます。いただいたサポートはより善い未来を創るための資金として、知識や知恵の仕入れのために使っていきます。