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これまでの家づくりのメリット・デメリットと アフターコロナの注文住宅の考え方(7)

躯体をシンプルにするとはどういう意味でしょうか?

躯体はざっくり言うと、基礎構造外壁屋根断熱で構成されます。それらの性能とデザインにどれほどこだわるかで金額も大きく変わってきます。間取りや外観をどうするか、高耐久・高気密性などの性能にどれほどこだわるか、といった具合です。

外観などのデザインにこだわると、見た目から個性的な家ができあがりますが、当然その分コストは上がってしまいます。高級で斬新な素材の外壁や屋根などが用いられるからです。しかしローコストで自分らしい家づくりを実現するためには、なるべく躯体部分のデザインをシンプルな形にする必要がある。
というのも、実は最適な家の躯体デザインというのは、その家を建てる敷地によってほぼほぼ決まってしまうからです。

なぜなら、日本では家を建てる時に敷地に対する法律の制限があるから。
容積率(敷地面積の中で最大に建てられる延床面積)や建ぺい率(敷地面積の中で最大に建てれる1階の面積)、斜線(日射についての規制)、また高さ制限や景観条例などの決められたルールの中で、家をデザインしなければなりません。
また敷地の広さや必要な建物の広さ・スペース、近隣の建物などによっても、実現できる家の姿というのは限られてきます。
そのルールや制限・用途の中で使い勝手が良くて、効率よく(つまりコスパよく)家をデザインしようとすると、ある程度躯体の形も決まってしまうのです。そこを無視して家の外観やデザインにこだわろうとすると、コストの高い家になってしまうわけです。

しかしそうではなく、その敷地に合ったシンプルな家の形にして、窓の位置や光の入る角度などをしっかり考えてデザインする。そうすると見た目は普通かもしれませんが、とても住みやすい家になります。しかも、コストはずっと抑えられる。

これが、躯体をなるべくシンプルにするということなんです。

しかし躯体をシンプルにするとは、家の性能そのものを犠牲にするということではありません。
家の基本的な性能は躯体に大きく左右されます。そのため、高耐久や断熱、耐震性などの性能面、グレードについてはしっかり考える必要があります。

例えば、家の耐震性能については耐震等級というレベルによって表され、耐震等級1なら震度6強〜7程度の地震が起きてもすぐには倒壊しないレベル、耐震等級2は同程度の地震が起きても引き続き住むことができ、最高レベルの3では震度6強〜7程度の地震でもわずかな損傷しかおきないという耐震性能を備えます。
飯田産業のような大手建売業者では耐震等級3、断熱等級も4以上が基本。今や一般住宅でもそのレベルになっていますが、地域の工務店レベルが手がけるローコスト住宅では耐震等級2レベルがせいぜいでしょう。それでも十分と考えるか、それともなるべく高い耐震性能を求めるか。気をつけないといけないのは、ローコストで建てるのに目に見える外装やデザインにお金をかけようとするなら、そうした家の基本性能を犠牲にしなければならないということ。よくありがちなのが、斬新なデザインで大きな吹き抜けや窓にお金をかけて、耐震や構造にまで予算が回らないことです。それならば、デザインはシンプルにして性能はしっかりとした家の方が安心ではないでしょうか。

もしくは、自分はとにかく家の性能にこだわる!という家づくりも十分にありえます。そうすると躯体工事にその分のコストがかかるため、内装にはそれほど予算を回せないかもしれません。でも、家の性能にこだわるというのも自分らしい家づくりの考え方の一つですよね。さらにそうすることによって、逆に付加価値の高いコスパの良い家にすることもできるのです(この辺についてさらに詳しくは、次の第四章で考えます)。

つまり何が言いたいかというと、躯体と内装を分けて考えるからこそ、自分がこだわりたいポイントに予算をかけることができるということ。
躯体部分も内装部分もセットで提供するハウスメーカーの場合は、これが難しい。
例えば家の性能を謳うハウスメーカーは、内装にもこだわります。家の性能のグレードに合わせた、それなりの内装を用意するからです。でもそうすると当然、ローコストで家を建てることはできない。
しかし躯体と内装を分けて考えるなら、それぞれにどれほどのコストをかけるかということを自分で決定することができるわけです。
デザインをなるべくシンプルなものにして、そのぶん内装にこだわる。
もしくは家の基本性能をなるべく高めて、内装は少しずつ手を加えていく、といった具合に。
そうすることによって、ローコストでも自分のこだわりをしっかりと詰め込んだ家づくりが可能になるのです。

第一章で、ローコストにはローコストなりのしっかりとした理由がある、とお伝えしました。
「躯体と内装を分ける」という新しい家づくりがローコストなのは、敷地に合わせた家のデザインをなるべくシンプルに設計して、そこに余計なコストをかけないから。デザインをシンプルにするかわりに、家の性能や内装部分にしっかりとお金とこだわりを注いで、自分らしい家を建てませんか?ということなのです。
そして躯体と内装を分けることがローコストにつながる、もう一つの大きな理由があります。
それが、大型パネルを利用した、躯体づくりのローコスト化です。

大型パネルを利用したローコストな躯体づくり

これまで家の躯体は基本的に、職人さんが現地で組み上げていました。基礎工事を終えたところに家の土台を築き、柱や梁などの構造材を組み立てます。いわゆる「棟上げ」ですね。棟上げが終わったら屋根を敷いて、床や外装工事に進むわけです。

この躯体づくりを、工場でまとめて行ってしまう。

大型パネルといって、柱に窓を取り付けて構造用の合板パネルを工場で組み立てます。これまで新築住宅の躯体づくりは熟練の職人が手がけるものでしたが、その分、個人の力量の差が出てしまうこともありました。それを工場でまとめて大型パネルを作って組み立てることで、コストを抑えながらも高品質の構造を安定して作り上げることができるようになったのです。
家づくりには、表には見えない手間やコスト(間接費)がかかります。例えば、サッシはA店に注文し、防水シートはB社、断熱材はC店などなど。またどんなに注意しても、ミスは起きるもの。資材の寸法や数量を間違えて発注してしまったために現場作業ができず、職人さんを1日遊ばせてしまった…、というようなこともありがち。これでは工期も伸びるし、その分コストもかさんでしまいます。躯体を工場でまとめて作ってしまえば、そうした余計なロスを最小限まで圧縮して全体的なコストダウンが図れます。
業務の効率化はコストダウンの基本中の基本。建売住宅を大規模に手がけるハウスメーカーやパワービルダーの場合、同じ構造、同じ性能、同じ仕様の躯体を作り、工程管理もシビアに行うことによってコストダウンを実現しています。もしくは、躯体と内装を一緒のパッケージにするなど。しかし注文住宅の場合は、一軒ごとに躯体の仕様や工程が異なるため、工務の効率化が非常に難しい。それを工場で管理することによって、徹底的な品質管理とコストダウンを目指しているのです。
躯体部分は専門の業者に工場で作ってもらい、内装部分に関しては内装のプロであるリフォーム会社にお願いする。これまで躯体づくりも内装工事も一つの会社でまとめて行っていたものをそれぞれの専門の業者にお願いすることによって、ローコストでも本当に満足できる家づくりを実現させるというわけです。

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工場で作った壁パネルや屋根パネルを現地に運んで組み立てると、ほぼ1日で玄関ドアに鍵をかけて帰るところまで持っていくことができます。さらに軒や破風、間柱などの工事を行っても、2〜3日で躯体が出来上がってしまう。また屋根に防水紙を貼れば、その日から天候に左右されずに内装工事にも取り掛かることができます。
これをリフォーム会社側の立場で見てみると、古民家をリノベーションする時の解体スケルトンと同じ状態のものが、2〜3日で完成してしまうということ。ですからこの後はもう、リフォーム会社に任せちゃえば良いのです。
さらにリフォーム会社にしてみると、通常は基礎の鉄筋や防水紙の施工を確認する必要があります。しかしそれらも専門の業者が行ってくれるので、余計な時間もお金もかかりません。当然その分も、コストカットとなるわけです。

躯体と内装を分けて考えるメリットは、新築時のコスト面だけではありません。
躯体をシンプルに設計し、内装をリフォーム会社に任せることによって、時間軸による家づくりも可能となります。
つまり、その時々の家族構成やライフスタイルの変化に合わせた家づくりができる。
例えば小さなお子さんがいる家では、せっかく内装にこだわったのに、子どもに汚されないようにカバーをかけて生活する人もいます。でもそれは、ちょっとあんまりですよね。
それなら、子どもが小さいうちは必要最低限の内装にして、大きくなってから自分の好きなものに取り替えていけばよいのです。
パソコンも必要に応じてパーツを交換したりしますよね、それと同じ考え方です。
そうしたことも最初の段階からリフォーム会社と話をしておけば、後々の内装の変更もとてもスムーズにいくのは間違いありません。
または内装にこだわるとどんどん費用が上がっていくので、少しずつ手を加えていくことによって初期コストを抑えるという考え方もあります。またはDIYが得意な人であれば、自分で仕上げていくということももちろん可能です。
これをハウスメーカーに頼むのは、なかなか難しい。だって彼らはそうした仕上げも一手に引き受けることによって、自分たちの儲けを出すのですから。わざわざ注文住宅にするのに、自分で手を加えていくので内装は必要最低限にしてください、なんてなかなか言えませんよね?
でもリフォーム会社なら、そうしたことも融通がききやすいのです。逆に追加の工事がしやすいように最初の施工の段階から工夫してくれたり、ためになるアドバイスをいただけたりすることもあるくらい。
リフォーム会社に新築を頼むということによって、このような長期的なスパンでの家づくりができるようになるのです。

次回は『アフターコロナの時代に合った新しい家づくり』

つづく.....

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