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これまでの家づくりのメリット・デメリットと アフターコロナの注文住宅の考え方(5)

第4の選択肢「リフォーム会社で新築を建てる」方法

一口にリフォーム会社と言っても、キッチンやトイレ、お風呂などのちょっとした改装や取り付けを専門に行っている会社がある一方で、大規模なリノベーションを手がけるリフォーム会社、デザインに拘る個性的な会社など様々だからです。では、新築住宅を頼めるリフォーム会社とはどのようなものでしょうか?

家づくりを行えるリフォーム会社の条件
リフォーム会社は、大きく3つの業者・ゾーンに区分できます。

  1. 価格帯:50万円前後。簡単なリフォームを請け負う会社

  2. 価格帯:300万円ほど。水回りなどのある程度しっかりしたリフォームを請け負う会社

  3. 価格帯:500万円以上。リノベーションを請け負う会社

価格帯500万円以上のリノベーションを手掛けられるリフォーム会社は、当然ながらそれより下のゾーンの工事を請け負うことができます。しかし、その逆は不可。

そして大抵のリフォーム会社は、上のゾーンを目指していきます。

例えば、はじめは塗装だけを行っていた塗装屋さんが、キッチンの水回りの取り替えも相談されたりすると、水回り周辺のリフォームも手がけるようになります。一軒だけなら一人でもなんとかなりますが、うまく回っていくようになるとキッチンや水回りを得意とする職人と手を組んで、規模を拡張していく。そうしているうちに、やがて300万円規模のリフォームを手がけるようになっていきます。

そして300万円規模のしっかりとしたリフォームを手掛けられる業者は、みな大型リフォームを目指していきます。そのくらいの会社の規模になるとコンサルなどが入ってきて、もっと上を目指すように言ってくるからです。

大規模なリフォーム、リノベーションを手がかるような会社であれば、しっかりとした新築住宅に必要な要件というのにも精通しています。新築だけを手がけるハウスメーカーよりも、むしろ詳しいかもしれません。様々なメーカーの建てた家を修理し、どこが悪いのか、どうすれば良いのかを熟知しているからです。例えば、お医者さんが健康的な生活を送るための的確なアドバイスを与えられるのは、病気の原因を知っているからですよね。同じように、様々な住宅の修繕・修理を行うリフォーム会社は、より良い注文住宅を建てるための方法や手段を心得ているのです。

ですから、リフォーム会社に家づくりを建てる時には当然、工事価格が500万円以上になるリノベーションを手掛けられるようなところでなくてはなりません。

そしてそれは、法律上の要件にも関わってくることなのです。

新築の住宅を建てるためには、業者が「建設業許可」を持っていなければなりません。

しかし、小さなリフォーム会社の多くはこの建設業許可を取得していません。建設業法によって「軽微な建設工事」であれば、建設業許可を持っていない業者でも工事を行うことが許されているからです。

では、建設業許可が必要なリフォームとはどういうものか?

それが、大規模なリノベーションです。

住宅一軒のリフォーム工事の請負総額が税込みで500万円以上である場合、建設業の許可を得なければなりません。当然、そのリフォーム会社は建設業許可をしっかりと取得していることになります。

つまり、価格帯で500万円以上のリノベーションを請け負うようなリフォーム会社であれば、新築の注文住宅を建てる資格も技術もしっかりと備えているというわけです。

しかし現実には、新築の注文住宅を手掛けているリフォーム会社はまれです。

なぜなのでしょうか?

リフォーム会社が新築住宅を建てる難しさ

大掛かりなリノベーションなどを手がけるリフォーム会社は、次の一手として新築住宅の建築にも挑戦するのですが、あまりうまくいかないようです。

その原因は、リフォーム(リノベーション)と新築では施工のノウハウが大きく異なるから。

ごくごく基本的なことで言うと、リフォームと新築では次のような違いがあります。

<リフォームと新築の施工の違い>

● リフォーム:躯体は残してその他の部分を補修・改修を行う
● 新築:躯体をイチから作り上げる

このように、リフォームと新築の一番の大きな違いは、躯体を扱うかどうかという点にあります。

リフォームやリノベーションでは、建物の基本的な部分となる壁や柱、梁、屋根などの躯体部分には手を付けません。そこまでやるなら、全て解体してしまったほうが早いからです。

一方の新築住宅では当たり前の話ですが、躯体を作った上で内装や他の部分を手掛けていきます。

リフォーム会社には、この躯体を作り上げるノウハウがない。

もちろんリフォーム会社には高い技術も経験もありますから、躯体から作り上げることもできなくはありません。しかしそのためには人員を増やしたり、施工プロセスも新しくする必要があります。そのためリフォーム会社でもリフォーム部門と新築部門とに分けるのですが、事業を拡大させるのはそんなに簡単ではない。結局あまり上手くいかずに、新築部門をやめてしまう会社が少なくないのです。

つまり、リフォーム会社には新築住宅を建てるだけの技術はあるが、効率的に躯体を手がけるノウハウが不足しているというわけです。

では、ここまで見てきた「リフォーム会社で新築を建てる」という、第4の家づくりの方法のメリットとデメリットをまとめてみましょう。

● メリット:最初からリフォーム会社に頼むことによって、その後のメンテナンスや修繕も安心して任せられる
● デメリット:躯体をつくるノウハウがないため、非効率な家づくりになってしまう危険性がある

高度成長期に生み出された、家を大量に建てるためのシステムから一歩距離を置いて、一生の付き合いを念頭に置いた家づくりに回帰する。それは家を建てる側にとっても、非常にメリットのある選択肢です。

しかし、本書のテーマは「アフターコロナのローコストな注文住宅の作り方」。

後々のことを考えてリフォーム会社に家づくりをお願いするのは良いとしても、躯体づくりのノウハウを持たないために余計なコストがかかってしまったら意味はありません。

ではやはり、リフォーム会社にローコストな家づくりは無理なのか?
決してそうではありません。

リフォーム会社に家づくりをお願いするメリットはそのままに、躯体をつくるノウハウがないというデメリットを解消する画期的な方法があるのです。

それが、「躯体と内装を分ける」という新しい家づくりの方法です。

つづく






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