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「低評価レビュー」に振り回される世界

中国在住のkiraraさんによる、こんなツイートを見かけました。

中国語を知らない人のために補足しておくと、「叮咚买菜」とは生鮮食料品を取り扱うECサービス、つまりはネットスーパーです。「客服」はカスタマーサービス、「差评」とは低評価のレビューを指します。

つまりこのエピソードを時系列でまとめると、こういうことになります。

・ネットスーパーで頼んだものが届いていないのに、アプリ上では配送が終わったことになっていた
・カスタマーに連絡するとようやく届いた
・そのことについて低評価のレビューをつけたら偉い人がお詫びの品を持ってきて、低評価レビューを取り消してほしいと頼んできた
・レビューは取り消した
・返金はしなくてもいいと言ったにもかかわらず、のちに返金されていた

中国にいると、この手の経験をすることが結構あります。僕もECサイトで買ったものがまるで用をなさず、あんまりだと思って低評価レビューをつけたところ、そのショップのカスタマーサービスのチャットから「嫁と子どもがおんねん」という泣き落とし(ネットで拾ったと思しき赤ん坊の画像付き)とともに、レビューの取り消しを懇願するメッセージが届いた経験があります。それ以来、僕はなんか怖くなってレビューをつけること自体やめてしまいました。

中国の人は口コミやレビューを参考にしてモノやサービスを選ぶことが多く(体感)、また大手のプラットフォームはユーザーからの評価によって検索順位や注文の振り分けなんかを露骨に変えるため、低評価のレビューが一件でも減ることが重要なのはわかります。しかし、そこまでやるかねえ……という取り消し依頼が多いのも事実です。

また、そのような店舗側の事情をユーザーの側もわかっているせいか、たとえば購入後のサービスが悪かったり反応が遅かったりする時に、相手から良い対応を引き出すために「差評をつけるぞ!」と言いつけることが、ある種の脅し文句として成立してしまっている状況もあります。これも、あまり健全とは言えないような気がします。

あと、こういった中国の状況は、一昔前の中国しか知らない人にとっては結構衝撃なんじゃないでしょうか。「売ったら終わり、後は知らん」みたいな商売が横行していた昔の中国では、自主的に返金を言い出すような殊勝な商売人など見かけることはなかったと思います。人々の行動原理まで変えてしまうとは、レビューの影響力の凄まじさを感じます。

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ここまで中国の話として書いてきましたが、日本でも同様のことはたくさん起こっています。検索すれば、低評価レビューを消してもらえれば返金します! というメールがAmazonのセラーから届いた体験談などがいくつも見つかります。なかには購入金額以上の返金を提示されたケースも。なんかもうめちゃくちゃです。

英語の記事も見つかりました。こちらはウォール・ストリート・ジャーナルの孫引きですが、アメリカでも低評価レビューをつけると、返金とともにレビューの削除を求めるメールが延々と届いたというケースがあるようです。

というか、普通Amazonのセラーからは購入者のメールアドレスなど見えないはずですが、この記事によると出品者はツールによって顧客情報を照合し、メールアドレスを不正に入手していると言います。怖すぎ。

どうやら、似たようなことは世界じゅうで起きているようです。

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ここからは単なる個人的なお気持ちの開陳にしかすぎませんが、なんかこういう状況ってイヤだなあと思います。

多大な手間や労力をかけ、またある時は個人情報の盗み見みたいな法的リスクを背負ってまで、各セラーが低評価を取り消さねば! と必死になるようなシステムの方がおかしいんじゃない? と思えてきます。

そもそも昨今は高評価のレビューだって業者やbotだらけでアテにできるようなものではなくなっていますし、レビューって結局は「他人の意見」であってそこまで肩入れして見るようなものでもないと思うのですが、昨今は検索順位の問題などもあって、レビューや口コミの重要性が際限なく上がってしまっています。僕もAmazonに出品とかしたら考え方が変わるのかな。

ともかく、個人的にはこういうレビューに振り回されないように生きていきたいな、と思いました。

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