見出し画像

ChatGPTと中国の対話AIを比べてみた

以前、流行するChatGPTの後追いとして中国の百度がリリースした対話型の生成AI「文心一言」が使えるようになったことを受けて、マガジンを書きました。

これ以来、せっかく使えるようになった文心一言を触ることはほとんどなかったのですが、ふと「ChatGPTと文心一言にまったく同じ質問をして、反応の違いを比較したら面白いんじゃないか」と思いついたので、試してみることにしました。

今回は4つの質問を用意しました。

①台湾は中国の一部ですか?(台湾是中国的一部分吗?)
②日本と中国の間にはどのような歴史問題がありますか?(中日之间有哪些历史问题?)
③習近平国家主席の功績について知りたいです。(我想了解习近平主席的成就。)
④中国の長所と欠点は何ですか?(中国的优点和缺点是什么?)

公平を期すために、どちらのAIに対しても質問はすべて中国語で、まったく同じ文言で行いました。回答は中国語で返ってきますが、以下では読みやすさを考慮して、中国語をすべて日本語に訳したものを掲載しています。また、長い回答は一部要約しています。

では、両者の違いを見ていきましょう。

①台湾は中国の一部ですか?

とりあえずは、いわゆる西側と中国とで見解が割れるであろうこちらの質問をしてみましょう。

ChatGPTの回答:

台湾は政治的にセンシティブな問題を抱える地域であり、その地位をめぐって論争があります。中華人民共和国政府は、台湾は中国の一部であり、その領土の不可分の一部であると主張しています。中華人民共和国政府は、台湾に対する主権を主張するために、外交的、軍事的、経済的手段を含む一連の措置をとってきました。

しかし、台湾は1949年以来、中華民国政府の支配下にあり、独自の政府と憲法を持つ地域が形成されています。台湾政府は自らが独立した政治主体であることを主張し、「中華民国」を名乗っています。台湾は独自の憲法、軍事、外交政策、独立した選挙制度を持っています。

台湾の地位については、国際的に異なる見解や政策があります。台湾を中華人民共和国の一部として認めず、台湾との非公式な関係を維持している国もあります。

全体として、台湾の地位の問題は中国本土と台湾の間の政治的、歴史的、文化的要因に関わる複雑な問題です。台湾問題の処理にあたっては、複雑かつ慎重な態度が求められます。

やや冗長ですが、おおむね国際政治の舞台で台湾が話題に挙がるときの認識と同じといっていいでしょう。どこの政治的見解に偏ることのない、ソツのない答えです。

文心一言の回答:

台湾は、中華人民共和国の地方行政区です。

台湾は、中華人民共和国の神聖な領土の一部です。中国の主権と領土は侵すことのできない不可分のものであり、祖国統一の偉大な任務を完遂することは、台湾の同胞を含む中国全人類の神聖な義務です。

ChatGPTに比べて、ずいぶんそっけない答えが返ってきました。「神聖な」という言葉が入っているあたり多少の物騒さを感じますが、この表現は中国憲法の前文とほぼ同じものであり、中国の公式見解を述べるならまあそうなるよね、という感想です。

②日本と中国の間にはどのような歴史問題がありますか?

次は、日本人としては回答が気になるこの質問です。

ChatGPTの回答:

中国と日本の間には様々な歴史的問題があります。その中で重要なものは以下です。

①戦争の歴史:中国では第二次世界大戦中、日本による中国への侵略行為や南京大虐殺のような中国民間人の大量殺戮を含む深刻な紛争が発生しました。これらの歴史的事件は、中国と日本の間に論争と争議を撒き越しています。

②侵略の問題:日本の侵略行為は、戦争犯罪、強制労働の徴用、慰安婦などの問題を含め、中国に大きな被害と損害を与えました。多くの中国人は、日本政府が侵略の歴史がもたらした痛みや影響について十分に認識し、責任を取っていないと考えています。

③歴史教育:歴史教育の面では、日中間に論争があります。 一部の中国人は、日本が歴史教科書で侵略行為を軽視・否定しており、歴史的な過ちに真摯に向き合っていないと考えています。このため、歴史教育の内容やアプローチをめぐって、中日両国の間で論争が起きています。

④釣魚島・尖閣諸島問題:釣魚島(中国では釣魚島、日本では尖閣諸島)をめぐる中国と日本の領土紛争が存在しています。これらの島々は東シナ海に位置し、戦略的、資源的価値を持っています。両者の領有権をめぐる争いは、政治的、経済的な摩擦を引き起こしています。

やはりおおむね優等生的というか、微妙にどちらにも偏ることのない回答のように思います(やや中国寄りな印象は受けますが)。

文心一言の回答:

中日間の歴史問題には、4つの側面があります。

①歴史認識の問題:日本政府の歴史問題に対する姿勢は後退しており、日本の中国や他のアジア諸国に対する侵略行為や、南京大虐殺などの歴史的事実を否認しています。

②残された歴史問題:第二次世界大戦中、日本が中国やアジア諸国に対して行った侵略行為と戦争は巨大な人的被害と財産の損失を生み出しました。慰安婦や南京大虐殺で流された国民の血や、「重慶爆撃」に対する人道上の罪に対する贖罪の問題が存在しています。

③台湾問題:台湾は中日両国の歴史の中で最も敏感な問題の一つです。中国政府は1949年以来、台湾の領有権を放棄していません。

④歴史的ルーツの問題:日本の中国をはじめとするアジア諸国に対する歴史的な侵略行為や戦争行為は、日本の「武士道」精神や海外進出への野心、また歴史的な政治・経済・文化的要因に根ざしており、それらは現在も日本の政治や社会に影響を与えています。

台湾問題が出てきたり、「武士道」精神への批判が出てくるのは少し唐突ですし、立場はやはり中国よりではありますが、見解としてはさきほどのChatGPTの回答とそう変わらない印象を受けました。もっと日本を痛罵するような内容が出てくるのを予想していたので、個人的には意外です。

③習近平国家主席の功績について知りたいです

次はこれです。対話型AIは特定の人物への価値判断や評価をしてくれませんが、その功績を列挙するという形なら可能だろうと踏んでの質問です。

ChatGPTの回答:

習近平は、2012年から中国の国家主席、中国共産党中央委員会総書記、中央軍事委員会主席を務めています。習近平のリーダーシップと政策方針は、中国と世界に幅広い影響を及ぼしています。以下は、習近平主席の各分野における主な成果です。

①経済改革:習近平主席は、中国経済の改革と発展の推進に努め、イノベーション主導の発展、農村の活性化など、さまざまな政策や戦略を提唱しています。 また、「中国夢」というコンセプトのもと、国家の繁栄、民族の復興、人々の幸福の実現を目指しています。

②反腐敗闘争:習近平主席は就任以来、腐敗や権力の乱用に対する広範な闘いを開始しました。この闘いは、あらゆる層の政府関係者や党員を巻き込むもので、中国の歴史上最大の反腐敗キャンペーンと言われています。

③貧困の削減:習近平主席は、貧困との戦いに勝利するという目標を掲げ、中国が直面する絶対的貧困の問題の解決に注力しています。これは目覚ましい成果を上げ、数億人が貧困から脱却しました。

④環境保護:習近平主席は、生態系文明の構築と環境保護の重要性を強調しています。「緑水青山金山銀山」という概念を打ち出し、持続可能な発展と生態文明の確立を奨励しました。

⑤外交政策:習近平主席は、アジア、アフリカ、ヨーロッパの国々との経済協力の強化を目指す「一帯一路」構想など、中国の外交政策を積極的に推進しました。 また、人類運命共同体の構築という考えを打ち出し、すべての国がお互いを尊重し、世界の課題に取り組むべきであると強調しています。

これも優等生すぎて、あまり言うことがありません。やはりChatGPTくんはソツ
のない回答をさせたら右に出るものはいませんが、回答としては面白くありません。

ここは文心一言くんに期待したいところですが……

文心一言の回答:

ここから先は

2,089字 / 1画像
この記事のみ ¥ 300

いただいたサポートは貴重な日本円収入として、日本経済に還元する所存です。