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日本人と中国人が「ウチ」と「ソト」に求めるものの違い

『日本・韓国・中国における「ウチ」と「ソト」』というタイトルの論文(コラム?)を読みました。

日本・韓国・中国それぞれの人間関係において「ウチ」と「ソト」(韓国の場合は「ウリ」と「ナム」、中国は「一家人/自己人」と「外人」)がそれぞれどう規定され、どのようにコミニュケーションをとっているのかについて書かれたものです。

自分にとって、特にキーになりそうだと思った部分を引用します。

”日本においては、これまで「ウチ」のメンバーは、「ウチ」と「ソト」との間に高い壁を設けてきた。しかし日本人の場合は、「親しき仲にも礼儀あり」で、相手の心の中にまで立ち入るようなことはあまりしない。韓国人や中国人から見れば、日本人の親しさは薄情に映るだろう。筆者の体験では、韓国の「ウリ」や中国の「一家人」「自己人」は、日本人より 遥かに情の濃い付き合い方をする”

これを読んで、最近Twitter上で日本で暮らす中国の方とやりとりしたことを思い出しました。

その方には、「日本人は過度に他人と壁を作りたがっていて、自分を尊重されることにこだわりすぎているような気がする。日本人は本当に友達が必要なのかと思う」という旨のリプライをいただきました。

なるほど中国の人から見れば、日本人は「ウチ」の人にさえ心を開かない薄情な人々に見えてしまうのでしょう。さらに利害関係と人間関係が一致することをよしとしない傾向も強いので、「ウチ」の線引きの中にどうやって入っていいかわからない。言葉の壁がある外国人なら、尚更そう感じてしまうかもしれません。

他方、僕は僕で中国に暮らし、「ウチ」(一家人/自己人)に向けた暑苦しさに辟易してしまうことが、正直言ってあります。中国人が「ソト」(外人)から「ウチ」(自己人)へと関係性をシフトしようとする時には、相手への強い干渉が伴います。それには同化を求められているような違和感や、下手をすれば内心の自由を侵されているような苦しさを感じることさえあります。

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逆に、「ソト」に対する警戒心の違いについても述べられています。終わりの部分にまとめられていたので引用します。

”日本人は「ソト」の人に対して、しばしば冷たく荒々しい態度を取るが、しかし相手がすぐ自分を騙しにかかってくるとは思っていない。異民族に長く支配されたことがなく、なお「見知らぬ人」に対して大らかだ。(中略)中国は、長年に亘って異民族の侵略・支配、民主主義を経験してこなかった故の政府や役人に対する強い不信感などを背景に「人間相互不信」という社会病理がはびこり「外人」に対して強烈な警戒感がある”

その理由を異民族による支配の有無や民主主義を経験してこなかったことに求めていいものか、またそれを「社会病理」とまで言っていいのかという疑問はありますが、ともあれ中国の人が持つ「外人」に対する警戒感というのは、確かに日本人のそれよりも強烈です。

たとえば、うちの嫁はスーパーで買い物をするときに僕がテキトーにものを選んでいると、「ちゃんと見たのか」と厳しく叱ってきます。いわく「その辺に売っているものなんて、誰が何をしているかわかったもんじゃない。慎重に見なければ、大変なことになるかもしれない」と、まあ大変な警戒心です。「ソト」どころか全く見えないところにいる「ヨソ」の人間のやったことなど、信用に値しないということでしょう。このあたり、まさしく「ヨソ」の人によるサービスやモノの質がある程度保証されており、信用度が高い日本とは対照的です。

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ここまで書いて気づきましたが、中国と日本ではおそらく「ウチ」と「ソト」に対して求めるものがある意味で真逆なのだと思います。「ウチ」に対して日本人は不干渉を、中国人は干渉による融和を望む。「ソト」に対して日本人は高い期待をするが、中国人は全く期待せず、むしろ「ソト」を搾取者や外敵とみなすような態度を取る。

日本人の間で「中国人は義理人情に厚く、ウェットな人付き合いを好む」というステレオタイプが聞かれるのと同時に、「中国人は他者に対して関心や信用がない」というステレオタイプが語られることがあるのは、それぞれの切り取り方が違うからでしょう。「ウチ」に対しての中国人を切り取れば前者になるし、「ソト」に対する中国人を切り取れば後者になる、ということなのだと思います。

逆に中国人から見れば、日本人の行動は「ソト」をそんなに尊重するのに「ウチ」に対してはなんでそんなに冷淡なの? という強烈な違和感として映ります。これは、非常に興味深い違いだと思います。

このあたりのそれぞれの考え方に対してもっとお互いが知るようになれば、日中両国のよりよい理解が進むんじゃないかと思いました。

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