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中国人のなかに「スジ」の思考を見るとき

「スッキリ中国論 スジの日本、量の中国」という本があります。

日本人と中国人の行動原理や思考パターンの違いについて書かれた本で、おおむね日本人は「スジ」、つまり「こうあるべき」という型や規範にそった行動を好むのに対し、中国人は「量」の思考、つまり現実的な可能性や、その場での具体的な影響力を重視する、ということが軸になっています。

簡単にいうと、「車がまったく通らない道の赤信号」というものがあったとして、それでも律儀に信号を守って横断歩道を渡らないのが日本人であるとすれば、車が通っていないのならば別にいいじゃないか、といって普通に横断歩道を渡るのが中国人、というような話です(こう書くと中国人がただの無法者のような印象に読めてしまうかもしれませんが、あくまで両者の傾向であり、たとえ話です)。

これを読むだけで中国人と日本人の行動原理の違いが、かなりの部分で腑に落ちるようになる名著です。僕のnoteでも何度も引用しています。中国に関わることがある人の必携書と言っていいでしょう。ぜひ一読をおすすめします。

品質にやたら厳しい中国人QC担当

さて、そうはいいつつ、中国に住んでそれなりに長く暮らしていると、中国人なのに……というとちょっとアレかもですが、ルールや規範に対して非常に頑なで、柔軟性のない対応をする人にも出会うことがままあります。

たとえば以前、日系自動車部品メーカーの中国拠点に勤めていた時のことです。そこではある小さいプラスチックの外装部品を製造し、上流工程のメーカーに納めていたのですが、その納品先のQC(品質管理)の中国人が非常に厳しく、不良品の返品率が異常に高くなってしまっていたことがありました。

調べてみると、返品されている部品のほとんどは、完成車に組み込まれた時には見えなくなる部分についているごく小さな傷や、製造時にどうしても一定の確率で出てしまう汚れ、もしくはマーキングなどでした。

たしかに、納品基準には「〇〇㎜以上の傷や汚れは不良品とする」というような基準が定めてありますから、「スジ」としてはそれらは不良品であることに間違いはありません。いっぽうで、機能的にはまったく問題なく、また完成時には見えなくなる部分なのですから、もう少し受け入れ基準を緩めてくれても良さそうなものです。

というわけで先方の品質担当者に、受け入れ基準に関しての交渉を行うのですが、このとき相手側の品質担当者が中国人だと、なかなか話を聞いてもらえません。そういうルールだから、こっちが聞いていやる道理は一切ない、というような対応をされます。相手先も日系のメーカーなので、上司である日本人の責任者に一度話を通してみてくれないか? といっても、取りあってもらえません。

しかし、別ルートを通してその上司の日本人に直接同じような話をすると、割とすぐに「実物を持ってきて」と言ってくれたりします。そして実際にモノを見せると、「こんなの、全然大丈夫だよ! なんでうちの品質管理はこれをNGにしてるの?」という話になり、すんなりオッケーになるのです。これでは、中国人と日本人のどちらが「スジ」を重要視しているのかわかりません。

同様の経験は他のメーカーに勤めていた時にもあります。「異様にルールに厳しい中国人の品質管理担当」というのは、ひょっとしたら一種の中国あるあるなのではないかと思っています。

ある意味では直感に反するというか、具体的な影響をもとに物事を考える中国人らしからぬ振る舞いのようにも思えます。

コロナがらみで「スジ」を通そうとする中国人

そのほか、最近はコロナがらみでも「スジ」にこだわる中国人、というものを実感した経験があります。

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