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屋上と布団から考える中国の「公共」

中国の都市に住むと、住宅の選択肢はほぼマンションしかないのですが、それらのマンションではほとんどの場合、屋上にも住人が容易に入れるようになっています。

そして屋上に行くと、面白いものが見れることがあります。というのも、屋上にみんながいろんなものを干しているんですね。

多いのは、布団や衣類です。どこから持ってきたのか、適当な柱などに紐やワイヤーのようなものをくくりつけて、そこに大きめの布団や服が干されている光景を中国のマンションの屋上ではよく見ます。ベランダが手狭な家が多いので、日当たりのいい屋上に持ってきて干しているようです。

以前住んでいたマンションで撮影

エレベーターに乗ると、洗濯物を抱えた人がすでに乗り込んでいる場面にもよく遭遇します。おそらくは屋上に干していた洗濯物を回収してきたところなのでしょう。そういう人は一階まで行かずに途中の階で降りていく(つまりその階の住人)ので、背中を見送りながらいつも「やっぱりね」と思います。

また、布団や衣類だけではなく、食べ物が干されていることもあります。みかんの皮(陳皮)や大根の切り干しなどのほか、よく見かけるのは肉です。特に地域によっては冬場になると、腊肉la rouという味を付けた肉がいたるところに干されるようになるのですが、その干し場所としても屋上は選ばれがちです。

さて、中国にあまり詳しくない人からすれば、「屋上にいろんなものを勝手に干していていいの?」という疑問が湧くかもしれません。そのことについて考えていくと、中国の公共スペース、ひいては「公共」というものについての考え方が見えてくると思ったので、今日はそれについて書いてみます。

たぶん厳密にはアウトだが……

マンションの屋上に侵入して布団やら肉やらを干すのは、たぶんマンションの規約などに照らせば厳密には……いや、たぶん厳密でなくてもアウトです。そもそも、マンションの屋上に入ることも本来ならダメかもしれません。特に施錠などがされていないので、みんな勝手に入っているというだけのことです。

でも、中国においてはそういう公共スペースの占有も、なんとなく許されていることが多いんですね。

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