「正能量」「負能量」にみる中国人像
近年(ここ10年くらい)の中国での流行語に、「正能量」というものがあります。
ウィキペディア中国語版の記述によると、その意味はこんな感じです。
「能量」とは中国語で、特に物理学的な「エネルギー」を指す言葉です。そのほかにも、活力や精力などを指す言葉として使われることもあります。
それに「正」がついたことで「プラスのエネルギー」、つまり前向きでポジティブな心持ち、またはそういった感情に基づいてなされる行為などについていう言葉が「正能量」となっています。
いつから使い始められたのかは定かではありませんが、2012年の時点ではネット上での流行語大賞のようなものに選ばれていることから、少なくともそれ以前から存在していた言葉であるようです。
当時はネット上にネガティブなニュースや言葉が溢れており、そういったものではなくもっとポジティブなものを広めていこう、つまり「正能量」の気持ちをみんな持とうよ、という意図から使い始められたようです。
この言葉は政治的な文脈でも用いられており、特に習近平政権以降では世界を肯定的に捉えよう(≒党のやっていることを褒めよう/悪いニュースは流さないようにしよう)、というような意味で多用されるようになりました。
そうしたこともあって「正能量」は流行語の枠組みを超え、すでに一般名詞化しています。
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「正能量」という言葉が広まった理由は、中国の人々がもともと持っているマインドとの相性がよかったからなんだろうな、という気がしています。中国の人々はもともと、物事のプラス面にフォーカスすることを得意としています。
中国の人々は物事に取り組む時に、どこまでもそのプラス面を見ようとします。仕事となればできる限りよいほうの可能性に賭けたがりますし、失敗した時のことはあまり考えません。そのほか、他社との交流においても、「自分の良さをどれだけわかってもらうか」という加点式の考え方をします。
仕事上ではミスやトラブルを事前に潰そうとしたり、人付き合いにおいても自分をアピールするというより「いかに相手を不快にさせないか」と減点法的に考えがちな日本人とはけっこう正反対です。
もともとこうした「プラスにフォーカスする」という中国の人々の傾向が、「正能量」という概念が広がっていく下地となったのではないか、と個人的に考えています。
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——と同時に、この「物事をプラス面にフォーカスすることを好む」ということを反対側から見てみると、ちょっと違った事実が見えてきます。
というのも、中国の人々はの「プラスにフォーカスすることを好む」よりも、ひょっとしたらそれ以上に「マイナスにフォーカスすることをひどく嫌う」という傾向を持っているように思うのです。
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