愛国と猜疑心が同居する、いまの中国のこと
こんなはてなのエントリが話題になっていました。
以前にも同じくはてな匿名ダイアリーで、いまの中国の「ヤバさ」を書いたことがある筆者が、恒大集団(ひいては不動産業界)の苦境や福島の処理水問題への反応を受けて、新たに中国の現状を憂いて書いたものです。
普段僕が考えていることや、こちらに住んで肌で感じていることとも重なる部分がかなり多く、興味深く読みました。書き手の正体が気になるレベルです。
この記事だけで語るべき論点が10個ぐらい含まれているので、ぜひ一つ一つ解きほぐしていきたいのですが、今日はその中から特に重要だと思えることを書きます。
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この記事では「愛国動画で盛り上がる人が増えた」ということと、「自国を信じない人が増えた」ということが同時に語られています。
過激な愛国がこれまで以上に盛り上がる一方で、自国に不信感を抱く人が増えているというのは、一見して矛盾しているようにも思えます。
しかし、これはある意味では表裏一体の現象でもあります。どういうことか、以下に書いていきます。
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まず、いまの人々が中国の現状に漠然とした不安を感じているということが、事実としてあります。
若者はどれだけ学歴を積み上げても就職ができず、すでに労働市場に参加している人々もクビや減給の恐怖に怯えながら、なんとかいまあるポジションにしがみつこうとしています。
中国は日本に負けず劣らず労働者の権利が強くないので、理不尽な給料カットや不払いなどの話も頻繁に聞かれます。キャッシュフローの管理がいいかげんな(よくいえばアニマルスピリッツを持っている)経営者も多いので、いまのように少しでも景気にかげりが見えるととたんに回らなくなり、そのしわよせが従業員、つまり庶民に行きがちです。
そんな庶民が耐え難きを耐え、やっとの思いでローンを組んだマンションが、いまはまともに引き渡されないという自体が続々と起きています。こちらはBBCによる、まともに完成していない住居を引き渡されたことに抗議をする人々の様子です。
このような未完成、あるいは工事が途中で止まってしまった状態で引き渡される劣悪な住居(中国語では「爛尾楼」といいます)の問題はいま中国で大きく話題になっています。
ただ、それでも引き渡されるものがあるだけまだマシで、骨組みだけで工事が止まってしまって膠着状態のマンションもたくさんあるといいます。もちろん購入者は頭金とローンの払い損です。
こんなネガティブなニュースばかりが流れてくる現状において、庶民が抱えている不安はいかばかりか、わかっていただけると思います。
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さて、そうした現状の中、その不安を受けて庶民は、こうした事態をコントロールすべき「偉大なる祖国」をこれからも信じるか信じないかという二択を迫られていくわけです。
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