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中国嫁の苦手のから考える、日本語の難しいところ(聞く・話す編)

(※以下の文章では中国語=標準普通話としています。)

中国人の嫁に、ちょくちょく日本語を教えています。

最近、嫁が苦手とするところの傾向がなんとなく見えてきて「中国人にとっては、日本語のこういうところが難しいんだな」と気がつかされることが多いです。

このnoteではそんな嫁の苦手からみる日本語の難しいところを、発音や聞き取りなどの音声まわりに絞って述べてみたいと思います(文法・語法でも記事がもう一本書けそうなので、ちょっと出し惜しみです)。

「っ」「ー(伸ばし棒)」

嫁は「っ」「ー(伸ばし棒)」のリズムの取り方を難しく感じるようです。

例えば「インターネット」と言おうとするとき、「インタネット」「インターネト」のように、これらの音が半ば無視されたような発音になってしまうことが多々あります。

この伸ばし棒や促音は中国語の中に概念として(たぶん)存在しないため、中国人である嫁には「長音や促音も一つの文字として扱う、発音の上で一拍を使う」「長音は前の音の母音を伸ばす、促音は一拍休む」ということが知識としてわかっていても、なかなか感覚として身につかないようです。

これに関しては以前Twitterで効果的な練習法(発音と同時に手を叩いてリズムをとる)を教えていただいたのですが、少し長い会話になるとこのルールが抜けてしまったりと、まだまだ正しいリズムをつかむのが難しい状態です。

今日も我が家は手をバシバシ叩きながら「コ!ッ!プ!」「エ!レ!ベ!ー!タ!ー!」などとうるさく練習しています。

語尾につく母音や「ん」

語尾に母音の「あいうえお」や「ん」が来た場合、曖昧になってしまう現象もよく起こります。「運動」が「うんど」と短く切られたようになってしまったり、「経験」が「けいけ」「けいけー」のように聞こえてしまうことがあります。

日本語ネイティブが発音するときも、これらの語尾は曖昧に発音されがちです。たとえば「全体(ぜんたい)」と言うとき、最後の「い」をしっかり口を真横に引いて「い!」と発音することは少なく、多くの場合「ぜんたー(ぃ)」のようになっていると思います。「ん」も同様で、「すいません」の最後につく「ん」を「ん!」と力を込めて発音する人は少ないでしょう。

当然これらは非ネイティブにとっても聞き取りにくく、発音するときにも日本人のそれよりもさらに曖昧で、場合によっては意味の通らないものとして現れてきます。

また「ん」は上記した長音や促音と同じく、中国語発音の中で捉えにくい概念のようです。「-n」や「-ng」という似た音は存在しますが、これらは「bin」や「wang」のように必ず他の子音・母音を伴っており、単独で現れることはありません。

「はん(hang)」や「しん(xing)」のように中国語に似た発音がある場合は割と違和感なく発音できているのですが、「うん」や「けん」のように似た発音がないものは口が慣れていないのか、難しく感じるようです。

おかげで「ダウンタウン」はいつまでたっても「ダウータウー」のようになってしまいます。

タ行とダ行(清音と濁音)

清音と濁音の違いも鬼門の一つです。

「ありがとう」が「ありがう」になってしまったり、「たいへん」が「いへん」に、「アンケート」が「アンケー」に化けたりすることがあります。嫁曰く「日本人が話しているタ行とダ行は本当に区別がつかない」ということです。

「ありとう」「アンート」のようにカ行とガ行を間違えることはあまりないので、清音・濁音に関しても何か苦手の法則のようなものがあるのだと思うのですが、まだそこまでは掴み切れていません。

たとえば「たいへん(大変)」などは漢字の「大」の中国語発音「」に引っ張られていたり、日本語でもふつうは「だい」と読むからかな? などの予想はできるのですが、「ありがとう」のように必ずしも漢字と関係のないものもあり、ますます分からなくなります。

どなたか知見のある方は教えてください(他力本願)。

「ぷん」「ぶん」が「peng」「beng」になる

嫁が最も苦手とするのが「一分」(いっぷん)や「多分(たぶん)」などの音です。どうしても中国語の「peng」や「beng」に寄ってしまい、あえてひらがなで表すなら「いっぽん」「たぼん」のようになってしまいます。「ぽ」と「ぼ」の区別も曖昧になります。

特に時間を表す「分」は前に来る数による「ふん」「ぷん」の違いや、数字自体の音の変化も絡んでくるので、かなり難しく感じるようです。「6分」(ろっぷん)が「ろくぼん」になったり、「7分」(ななふん)が「しちぽん」になったりと、混乱が見て取れます。

嫁に限らず仕事などで関わる中国人の日本語話者の(少なくとも僕の見た限りでは)ほとんどがこの問題を克服できておらず、またこの状態でも言いたいこと自体はわかってしまうので、いまではあまり注意もしなくなってしまいました。

日本語教師の方など、いい解決法をお持ちの方は教えてください(他力本願・16行ぶり2回目)。

母語にない発音を理解するのは難しい

どの問題も、中国語にない日本語特有の発音ルールへの理解や練習の不足により起きているということがわかります。母語にない概念を理解し体得するのは、やはり難しいものです。

思えば僕自身も中国語を勉強するとき、「e」の発音や声調にはずいぶん悩まされましたし、今でも完璧とはほど遠いです。

大人が語学学習をする際「聞き流すだけ」「聞いて真似するだけ」ではなかなか上達しないのは、こういった母語にない概念に対する理解が不足したまま母語の範囲内で聞こう/話そうとしてしまうことに原因があるのかもしれません。

そんなわけで嫁には継続した発音練習や初歩からの発音構造の理解から改めてやりなおすことを勧めていますが、「せっかくあなたがいるんだからその都度あなたが矯正してくれればいい」とあまり乗り気ではありません。

そして今日も我が家は机をバンバン叩きながら「マ!ッ!サ!ー!ジ!」「ト!イ!レ!ッ!ト!ペ!ー!パ!ー!」とやかましいです。

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