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中国人のおばちゃんに高鉄チケットの買い方を聞かれた話

こちらの記事でも書きましたが、先日所用で高鉄(新幹線のような中国の高速鉄道)に乗りました。今日はその時に体験した、ちょっとしたエピソードについて書きます。

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車両に乗り込み、自分の座席を目指すと、そこには50台後半〜60歳くらいのおばちゃんが一人で座っていました。座席の周りには大量の荷物が置かれており、遠出の様子です。

中国の高鉄は基本的に座席指定であり、チケットを買った座席以外のところに座ることは許されていません(「無座」という、座席なしのチケットも存在はしていますが)。そのため、一応そのおばちゃんに自分の購入画面を見せながら「ここ、僕の席なんですけど」というようなことを言ったのですが、おばちゃんは顔に満面の「?」を浮かべて僕の方をじっと見つめ返してきました。

おそらくこのおばちゃんはほとんど高鉄に乗ったことがない、もしくは初めてであり、高鉄に座席指定があること自体よくわかっていない様子でした。チケットも誰かに買ってもらったり、ここまで送ってきてもらったりしてなんとか乗り込んだのでしょう。よくある話です。

しょうがないので、通路を挟んだところにあった空いている席に座りました。本来なら違反ですが、このおばちゃんと押し問答をしてもしょうがないし、どうせ一駅区間しか乗らないからいいや、と思いながら、イヤホンをから音楽を流し、適当にスマホをいじり始めました。

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数分後、そのおばちゃんがなんと僕に声をかけてきました。スマホの画面を僕に見せながら、何やら頼み事をしてきている様子です。訛りがかなり強く、ギリ聞き取れるかどうかと言うレベルの中国語で、面食らいました。

必死で聞き取った結果、どうやらこの高鉄が着いた先で乗り換えをしなければならないらしく、そのチケットがまだ買えていないので手伝ってほしいということのようでした。おいおい、このおばちゃんをここまで連れてきたやつ、薄情すぎるだろ。ちゃんと最後まで責任持って面倒見てやれよ。

余談ですが僕は生来頼み事をされやすい体質らしく(1日のうちにそれぞれ違う人に6回道を尋ねられるレベル)、特に老人にこの手の頼み事をされることは珍しくありません。異国の地にまできてなんでこんなことを……と自分のナメられフェイスを呪いながらも、一応その度にできることはしてあげるようにしています。

しかし、なんせこのおばちゃんはあまりに訛りが強く、行きたい駅が本当に正しいのか、時間は間に合うのか、いまいちよくわかりません。渡されたスマホを片手に悪戦苦闘しつつ色々聞いてみますが、なかなか会話が噛み合わない。

これじゃ間違ったチケットを買って、逆に迷惑をかけてしまうかも……と思ったので、巡回している添乗員の女性を捕まえて、助けてあげるようにお願いしました。しかし添乗員は心底めんどくさそうにおばちゃんの話を聞き始め、「12306(中国の鉄道チケットが買えるサイト、アプリ)のアカウントはある? ない? ないの? じゃあどうしようもないわ!」とだけ言い残し、さっさと去って行ってしまいました。気まずい感じで取り残される僕とおばちゃん。

そうこうしているうちに、高鉄は僕が降りる駅に到着してしまいました。他に助けてくれそうな人はいないかと周りを見回してみるものの、誰もこちらを気にしてくれません。どうしようもないので、僕は黙って座席を後にしました。おばちゃんはWeChatの音声メモ機能でスマホに大声で喚きながら、誰かれに助けを求めているようでした(完全な方言で全く聞き取れなかったので、推測ですが)。

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中国の人は基本的にお年寄りに対して非常に優しく、バスや地下鉄だと真っ先に席を譲るような美しい光景がよく見られます。反面、テクノロジーや新しいものを解さない老人に対しては、もうちょっとなんとかしてやれよというくらい冷たい態度のこともあります。最近だと、行く先々で提示を求められるコロナ対策用の健康コードの操作がわからない老夫婦が、駅やモールの入り口で立ち往生しているのをよく見かけます。結局老人に対して優しいのか冷たいのか、よくわかりません。

最終的に、あのおばちゃんは無事に目的地に着けたのでしょうか。少し気がかりですが、今はもう知る術もありません。

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