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「寝そべり族」(躺平)は中国を変えるのか?

中国……というより中国に関心のある日本人の界隈で、ここ最近「躺平」(tǎng píng)という言葉が注目されています。

「躺平」とは本来「寝そべる、横たわる」というような意味ですが、ごく最近になって中国でにわかに流行語となっています。格差社会に苦しみ、家が買えず、結婚も難しい現代の生きづらさに疲れた若者が伝統的家族観を含む価値観にNOを突きつけ「自分のことだけを考え、欲望を抑え、頑張らずに生きる」というような文脈で用いられることが多いようです。

流行の発端は4月のある日、「百度貼吧」というネット上の討論掲示板のような場所になされた「躺平即是正义」(寝そべりこそ正義だ)というタイトルの投稿です。そこには中国の伝統的家族観念に対する怨嗟と、「年に1、2ヶ月だけ働き、1日に2回安い飯を食えれば十分だ」というような質素な生活への、皮肉を含んだ決意表明のような言葉が書かれていました(現在は削除)。

この投稿は大きな共感を呼び、すぐに同様の主張を呼びかけるような投稿が同じ百度貼吧や豆瓣などのプラットフォーム見られるようになりましたが、ほどなくしてこれらはそれぞれのプラットフォームで禁止ワードに指定され、すぐに沈静化したといいます。

そのほか国有メディアから「躺平」は恥であるという記事が出たり、タオバオなどの各ECサイトから「躺平」の文字がデザインされたシャツなどが一掃されたり、メインストリームから歓迎されない言葉になっていることは確かなようです。

日本のWeb記事などには「このような若者の登場に、中国共産党は危機感を強めている」というように締めくくられているものも見られます。

では、このような「躺平」主義者たちは、中国の社会に大きく影響を及ぼすものでしょうか。以下、あくまで個人的な観点からではありますが書いてみましたので、よろしければご覧下さい。

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