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「外国固有名詞の表記法」にみる、日中における異文化受容の差異

日本語のニュースでなんか最近「チョルノービリ」っていう見慣れない言葉が出てくるなと思ったら、これって「チェルノブイリ」のことなんですね。

どうやら外務省が「日本政府としてウクライナ支援及びウクライナとの一層の連帯を示すための行動」(?)として、ウクライナの地名表記をこれまでのロシア語由来のものから、ウクライナ語由来に変更する指針を示したそうです。

おそらくはそれに伴い、各報道機関も表記をウクライナ語由来にするか、「チョルノービリ(チェルノブイリ)」のようにこれまで使われたものを併記する方針をとっているようです。

これにいかほどの意味があるのかどうかは置いておいて(あんま意味ねえだろと思ってるけど)(ああ書いちゃった)、この「外国固有名詞をどのように表現するか」ということにおいても、日本語と中国語で異同があるなあということを考えたので、今日はそれについて書いてみます。

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日本語では、外来語や外国語固有名詞を表現するのにカタカナを使います。

これはこれで表記揺れなど問題を生むこともありますが、おかげで日本語体系のままにいろんな国の地名を表現できるので、日本人にとっては便利な表記法と言えるでしょう。

ひるがえって、中国語においては外国の固有名詞は、基本的に発音をもとにした当て字が用いられて表記されます。

たとえば日本語における「チョルノービリ」( Chornobyl)であれば、中国語表記は「切尔诺贝利」(Qiè ěr nuò bèi lì)となります。こちらもロシア語発音が元になっているようです。拼音表記を見れば、中国語がわからない人でもなんとなく「チェルノブイリ」っぽいなと認識できるのではないのでしょうか。

実際の発音が気になる人はこちらの動画でどうぞ。

そのほか「ロシア」は「俄罗斯」(È luó sī)、「ウクライナ」は「乌克兰」(Wū kè lán)になります。国や地名などはすべて、このように一つ一つ中国語の表記が割り当てられています。

人名についても同様です。各国首脳を例にとると、「バイデン」は「拜登」(Bài dēng)、「プーチン」は「普京」(Pǔ jīng)、は「マクロン」は「马克龙」(Mǎ kè lóng)です。

また日本語と似た部分として、表記揺れが頻繁に見られることがあります。たとえばウクライナのゼレンスキー大統領に関しては、「泽连斯基」「泽伦斯基」の二通りの表記が見られることがあります。

このあたりは決まったガイドラインが存在していないらしく、各媒体・個人が各々で表記を設定するため、表記揺れが避けられないようです。

通常、これらの表記揺れ単語は時間をかけて一つの表記に収斂していくようですが、注目されたのが新しい単語であるほど表記が定まらず、揺れが起こりやすいのかもしれません。

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日本語と中国語、どちらも「自らの言語体系の中に外国語の単語を当てはめる」という意味では共通していますが、少し違うなと思う点もあります。それについて考えていると、なんだか両者の異文化受容のスタンスそのものが反映されているかもしれないな、と思えてきました。

以下、単なる自説の開陳に過ぎませんが、書いてみたいと思います。

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