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半径5mで感じる、中国人の「ルール」との付き合い方

最近、自分の住んでいる小区(団地のような居住区)の中で、ある変化が起きていることに気がつきました。

そのことが、中国人の「ルール」との付き合い方を考えるにあたって、ちょうどいいサンプルになりそうだと思ったので、今日はそれについて書いてみたいと思います。

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以前、中国の人々の日常の足として使われる電動自転車についてnoteを書きました。

この電動自転車、便利は便利なのですが、充電中の発火や爆発事故が多いため、ほとんどの小区では自宅に電動自転車を持ち込んで充電することを禁止したり、敷地内への持ち込みを規制しているところが多いです。僕の住んでいる小区も例外ではなく、電動自転車の乗り入れは禁止されており、ちゃんと張り紙にしてそれが周知されていました。

にもかかわらず、誰もそのルールを気にせず、みんな普通に電動自転車を小区内に入れていました。「この方が便利だし」「他に停めるところないし」と言わんばかりに、普通に電動自転車が闖入してくるのです。また、保安(警備員)のおじちゃんも別にそれを咎めたりせずに、電動自転車を招き入れていました。事実上の黙認です。

そんな現状でしたが、数ヶ月前のある時、こういった流れが少し変わりました。どうやら管理会社が地方政府からお叱りを受けたらしく、「安全のため、小区には電動自転車乗り入れ禁止のルールを徹底すること」というお達しが改めて出たのです。すると、小区からは電動自転車が一掃され、保安のおじちゃんは電動自転車で侵入してこようとするおばちゃんを厳しく咎めるようになりました。

僕は個人的に、こういった流れを歓迎していました。僕自身は電動自転車に乗らないし、小区の中の狭い道を電動自転車でフラフラと爆走するおばちゃんを「危ないなあ」と思ったり、自分の住んでいる近くで爆発が起きたらいやだなあなんて思うこともあったからです。特にエレベーターで電動自転車と一緒になってしまった時は結構ヒヤヒヤしました(中国ではエレベーター内で電動自転車が密室爆発する事故が、過去に何件も起こっています)。

なので、電動自転車がなくなって快適だなあ……とか思っていたのですが。

そのお達しが出てから数ヶ月たった今、ふと気がついてみると、また小区内を電動自転車が爆走するようになっているのです。相変わらずおばちゃんがフラフラと買い物袋を下げながら僕の横スレスレを通っていきますし、エレベーターにはまた電動自転車が乗り込むようになっています。ヒヤヒヤです。

よく見れば、一時期厳しかったはずの保安のおじちゃんも、また電動自動車を素通しするようになっています。「電動自転車は乗り入れ禁止じゃないのか」と聞いてみたのですが、「俺に言うんじゃねーよ」と軽くあしらわれて終わりでした。

まことに中国らしい光景だよな、と思います。

この「ルールへの向き合い方」のようなことは、日本人から見た場合の中国人のわかりにくいところではあります。

「中国人はルールを守らない」「みんな好き勝手やってる」と言ってしまえば簡単なのですが、それだとちょっと解像度が低いです。中国の人々もルールの存在をまったく自覚していないわけではなく、「そのルールには、どの程度守るべき価値があるのか」ということをよく観察している、という言い方がふさわしいでしょうか。

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