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誰が習近平の代わりをするのか?

中国ではもうすぐ、5年ごとの中国共産党大会が開かれます。そこでは指導者としてのポジションを含む、その後の5年間の中国共産党の行政における人事が発表されます。

この人事発表に関する予想として、現在すでに党総書記、国家主席、および軍のトップを兼任する習近平氏が、それぞれのポストで続投することがほぼ確実視されています。つまり、習近平氏がこれからも指導者としての役割を担う、ということになります。

これまで中国の指導者としての一部のポストには、「2期10年」を任期の限度とするという慣例があり、それは憲法にも記されていました。2012年に開始した習近平政権は、本来であれば今回で退くはずでした。

しかし2018年に憲法が改正され、「2期10年」の規定は撤廃されました。このあたりから、2022年以降の続投が既定路線となり、少なくとも次の5年、あるいは10年を習近平氏が指導者として振るまうことが確実となったと見られています。ひょっとしたら、さらに長期化するかもという見方もあります。

このことはおもに国外から強く問題視されており、独裁の長期化や権威の一極集中が招く弊害への懸念が高まっています。「習近平の永世皇帝化」や「中国共産党王朝の完成」などと、これを前近代的なものとして揶揄・批判する向きもあります。

しかし中国の現状や、いまの政権が曲がりなりにも残してきた成果のことなどを考えると、話はそう単純ではないように思います。

そのことは、タイトルにもあるように「誰が習近平の代わりをするのか?」という問題として語ることができます。今日はそれについて書きます。

「民意を得た」指導者

まず、いまの習近平政権への国民の支持はそれなりに強いものとなっています。

積極的・消極的支持にかかわらず、いまの政権をある程度高く評価する人が大部分であるというのが、中国に住んで中国人と交わる中での肌感覚です。

こういうと必ず「政府のプロパガンダのおかげだろう」「国民に都合の悪いことを教えていないだけでしょ」という反論が飛んできます。もちろんそういったものの成果もあるとは思いますが、決してそれだけではありません。

たとえばそれまで深刻化していた政治腐敗を、習近平政権は腐敗撲滅キャンペーンによって徹底的に叩きました。その裏には政治闘争もあったと言われていますが、ともあれこのような動きで習近平政権は「不正をただすリーダー」「党内や行政の問題に目を向けられる、公正な指導者」として評価されるようになりました。

実際、それまでの「改革開放」路線による市場経済の発展と、中国的な「ウチ」への優遇との悪魔合体による弊害として深刻化していた、カネとコネによってすべてが決まる世の中がかなり公平になった(少なくとも、だいぶマシになった)と考える人は少なくありません。

経済に関しても、たとえば中国が日本のGDPを抜いたのは2010年ですが、習政権のはじまった2012年というのはそういった経済の上り調子が、国民にも目に見えて実感できるようになった時期でもあります。

この時期にはシェアエコノミーやスマホ基準のインフラなど世界に先駆けて普及したものもあり、「世界に誇れる中国」の恩恵を国民が感じられるようになりました。

さらには、習近平政権は国内の貧困撲滅にも熱心です。どこまでも特定の場所・人間だけに富が集中していく構造を是正し、しっかりと末端にまで経済発展の恩恵を行き渡らせようとするリーダーとして、習近平政権は人気を集めています。特に地方の人々にとって、習近平氏に象徴されるいまの政権は「民のことを顧みてくれる数少ないリーダー」なのです。

そんなこんなで、習近平政権のこれまでの10年間は、経済的にも政治的にも国民の「生活がどんどん良くなっていく」感覚とともにあった10年間であったといえます。

そんななかで、習近平政権は民意を得てきたのです。

誰が代わりをできるのか?

さて、そんな「民意を得た」リーダーの代わりを務められる人間が、はたしてどこにいるのでしょうか?

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