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【好きな作品】帰ってきたウルトラマンを救いたい。感性極まる「人間ウルトラマン」

※以下がっつり個人の思想・解釈によるものです。あくまでこういう考えもあるんだな、と受け入れられない人、苦手だったりマウントとりたいギャオオオンな人はお帰りください。

前置き


最近ウルトラマンの円谷プロが大々的に宣伝・企画しているウルトラセブン55周年記念。
シン・ウルトラマンがあったからもしかして…なんて噂があるがただでさえシン・仮面ライダーでもうギャグじみてるのにそれはない。だとしたらもう特撮界隈の衰退じゃないか?割と綱渡り状態ではあるが…


で。初代ウルトラマンが1966年、半世紀以上前なので今年2022年は他にも周年記念に該当するウルトラシリーズがいくつかある。

ウルトラマンA(エース):1972年→50周年
ウルトラマンダイナ:1997年→25周年
ウルトラニャン:1997年→25周年
ウルトラマンジード:2017年→5周年

は?ウルトラニャン??と思うだろうが何となく入れた。正直あんまり覚えてないのに一ヶ月に数回はなぜか脳裏に浮かぶ妙なにゃんこ。
他に抜けがあったらご愛嬌。

昨年は初代ウルトラマンの周年記念だったのもあり30、40周年記念作品のティガやメビウスだとかで厚い。

ジードはまあ5年はわかる。昨年ティガ25周年記念だけで中身ないのにゴリ押ししたトリガーの続編としてデッカーが放送中。ダイナモチーフ?なのでダイナ25周年記念作品!と言っても過言ではない。

正直デッカーがダイナを「モチーフ」なのか「オマージュ」なのか未だに判断しかねる話は後日。



で。今年はウルトラマンAがめでたく50周年なのだ。半世紀。これって本当にすごーくめでたい。



だのにウルトラセブン55周年をかーなーり宣伝してる。これってどうなの?という声。

ぶっちゃけ数年前までならそこまで声が上がらなかったと思う。個人的にウルトラ6兄弟の中でも「観直さなくていいかな…」の部類に申し訳ないけど入る。
確かに男女合体変身にウルトラ兄弟に本腰を入れた客演、ヤプール率いる超獣と斬新な設定に溢れ、活気に満ちて…いない。全体的に観ててしんどいのだ。

エースの腕白と言っていいエネルギッシュな戦い方と奇抜なデザインの超獣。大半を占める爽快な切断技。
番組後半、変身してからの戦いは画面内の「多彩さ」にちびっ子視点で釘付けになるのだが、そこに行き着くまでがしんどい。


「超獣」
という従来の怪獣より強く、「空間に穴を開けて現れる」だとか突然現れたり常識を超えた概念に当てはまらない改造生物。

なので主人公が真っ先に超獣を見つけても他の隊員が駆けつけた時には既に姿を消しているパターンが割とあり、信頼されない嘘つき呼ばわりされる場面がしつこいぐらいある。何なら割と終盤まで信用されない。

いや、あんたら超獣撃退の防衛チームなんだからさすがに否定せず少しは信じてやれと…

この流れが正直しんどい。なんなら疑ってすまなかった!と謝った翌週にまた疑う。
特に序盤は頻繁にあったように思う。うつ病だから、かもしれないがそれがとにかくしんどい。見返す気になれない。



そんなエースが最近になって人気が出たのがやはりウルトラマンZの客演があったから、だと思う。


最近のウルトラマン:ニュージェネは時折過去のウルトラマンが客演する。その中でもウルトラ6兄弟中「単体として」まだ客演回がなかったのが実はエース。
その状況下でゼットと関係性を持たせつつ、更には勿論後付けではあるが本編中の戦い方の掘り下げ当時を髣髴とさせるアクション。

エースをしっかり観たことがない人でも「かっこいい」と思わせる素晴らしい客演回だった。

技名を呼ぶのにも監督の拘りがあり意味があったのも良い。

ゼットを経てギロチン王子から見事に返り咲いたウルトラマンA。近年そういった「キャラ付け」が良くも悪くも重視され、場合によるが今回は良い方向で機能したように思う。

前からエースが好きだった人もゼットをきっかけに好きになった人もセブン55周年にちょっとだけ不満を抱くのも無理はない…


ちょっと待った。これ、「ウルトラマンAについて」ではないのよ。



「帰ってきたウルトラマン」を救いたい


本題に入りましょっ

自分がウルトラシリーズで一番好きな「帰ってきたウルトラマン」
エースについて長々語ったけどそれ以上に不遇。多分一生大々的に祝われることはない…と断言できるまである。「呪われた作品」と言っても過言ではないかも。

何でかって?


祝われない「周年」の宿命

まず真っ先にこれが酷い。残酷。

帰ってきたウルトラマンは1971年。なのでめでたーいエース50周年の前年にめでたーい50周年があった…あった?

そう。帰ってきたウルトラマン50周年はウルトラマンティガ25周年に「喰われた」。

で。今後も帰ってきたウルトラマンの周年記念はティガに「一生喰われます」。


これ。相当不遇だと思う。


補足しておくと自分はティガのことが嫌いではない。むしろ大好き。

なんなら世代と言ってもあながち間違いではない。記憶は定かではないがガイア放送後に再放送があったらしく、そっちで観た覚えがある。
なので再放送では断片的にか観ておらず、のちにTSUTAYAでVHSやDVDを借りて全部観たはず。
ティガが好きすぎてトリガーが嫌いな話は度々触れたので割愛。

観てないので把握してないがこの前放送したウルトラマン総選挙?も確かティガが1位だったか。セブンと同じくらい作品として素晴らしいし納得。ファンが多いのもわかるし自分も好き。

だから帰ってきたウルトラマンが必ず喰われる。

55周年の時はティガ30周年!60周年の時はティガ35周年!
さすがに50周年の2021年は譲ってくれる…と思ったらティガパロディのトリガー。
ティガそのものが悪いわけではないが居た堪れない…



ブレスレットが本体です。

帰ってきたウルトラマンといえばウルトラブレスレット。…と言っても仕方ない。
本編もメリハリがないから!ってんでテコ入れとしてセブンが授ける形で装備するようになる。ここまで明確なテコ入れすごい。

以降大体最後のトドメはブレスレット。みんなのトラウマ:スノーゴンによるバラバラもブレスレットでほら元通り。なんなら惑星もブレスレット1つで破壊してしまう。万能すぎでは?

終いにはブレスレットが星人に操られて危うく倒される話もあった。発想は良いけどこれがある意味全ての元凶。10年ぐらい前までブレスレットが本体、とネタにされていた。無理はない。

勿論ブレスレットだけで倒せない怪獣もおり、ウルトラマン自身が自分の力で倒したこともある。

あまりに見かねたのか2010年代に入ってからだったか、気づいたら帰ってきたウルトラマンはブレスレットの名手というがっつり後付け設定が盛られていた。


ウルトラブレスレットは帰ってきたウルトラマンだけの装備ではない。
2009年に上映されたウルトラマンゼロ初登場の映画:ウルトラ銀河伝説においてモブキャラの宇宙警備隊員が装備していた。実は専用武器ではなく量産されている。

ぶっちゃけ個性が潰されたとも言えるが、ウルトラブレスレットは本編で膨大な形態に変化するのだがモブ隊員達はそこまで変化できない。
あれだけ多種多様に使いこなせたのは帰ってきたウルトラマンの力量あってこそ!というもの。それがブレスレットの名手たる所以。



コテ入れに後付けと後から設定が盛られがちな帰ってきたウルトラマン。


ところでさ、「帰ってきた」って何?


そもそも存在が曖昧

頻繁に「帰ってきた〇〇」とパロディネタにされがちだが、そもそもどこから帰ってきたの?と。

最近だとマクドナルドのチキンタツタ。マクドナルドが1971年日本に上陸した同期だからか!と特撮オタク達は仮説を立てたが実際はただの帰ってきたパロディネタだった。ズコー。嬉しかったけどね。
他にもマグナムドライの替え歌だとか。

実は帰ってきたウルトラマンは帰ってきたウルトラマンではなかった。

どゆこと?

意図的に「帰ってきたウルトラマン」と連呼してきたが、後年帰ってきたウルトラマンは「ジャック」と呼ばれるようになる。言い換えれば

ジャックは帰ってきたウルトラマンではなかった。

番組の企画段階では1966年の初代ウルトラマン自身が帰ってくるという設定だった。
その為番組名が「帰ってきたウルトラマン」。が、商品展開を意識した結果別人にすべき!とスポンサー様から要望があり別人になった。


初代ウルトラマンが帰ってくるはずが全く知らないウルトラマンが帰ってきた。

何というウルトラパネマジ…!

なんなら本編中でも初代ウルトラマンと同一人物かどうか明確な描写は一切なく進み、有名なナックル星人とブラックキングが登場する前後編の37・38話で初めて初代ウルトラマンが客演として登場する。

強いて言えば当時の児童誌で「ウルトラ兄弟」という設定が生まれた為それを境に別人、という認識が生まれただろうがさすがに時期が分からない。ウルトラ兄弟という有名なものすら逆輸入。

下手したら半年以上初代ウルトラマン本人からどうかわからんウルトラマンを応援してた当時のちびっ子。すごい。


おまけに先に挙げたジャックについても紆余曲折ある。さすがにもうかわいそう…


客演回で突如現れた初代ウルトラマン。なので毎週戦ってるウルトラマンは別人なのは分かったが何と呼べばいいの?問題。

本編中では初代ウルトラマンとウルトラマンで分けられていた気がするが問題は翌年のエースから。呼び方が定まらずウルトラマン2世新ウルトラマン、なんなら略して新マンだの呼ばれていた。番組内で略称て。

そんな中唐突に付けられた名前がジャック
これまでのテレビシリーズの再編集、いわゆる総集編の劇場版にて定められた。それが1984年。10年以上名前が無かった…

名前がついたしめでたしめでたし!ともならなかった。
1984年当時はテレビシリーズの新作が80からティガまでない空白期間。故に先の総集編映画や雑誌の展開ぐらいで浸透性があまりなかった。

おまけに小さい頃観てた2世だの新マンだの呼ばれたウルトラマンが10年経って突然ジャックです!と言われてすぐ納得するはずもなく…



2006年のウルトラマンメビウスにてテレビシリーズとして恐らく初めて?ジャックテレビで呼ばれ始めたがさすがに間が空きすぎたのもあるだろう。
結果未だに帰ってきたウルトラマンをジャックと呼ぶのに否定する面倒くさい人がぼちぼちいる。さすがに老害と言うか石頭と言わざるを得ない。

正直自分も一時期悩んだ。通ぶって「帰りマン」と呼んでいたが「手マン」と馬鹿にされたことをきっかけに作品名を指す時は帰ってきたウルトラマン、個人を指す時はジャックと呼ぶようになった。
勿論世代による愛着もあるだろうが大半はただ通ぶりたい、見栄を張りたいイキりオタクだと勝手に思ってる。特にジャック呼び否定は何やねんと。特撮界隈らしいというか。

おまけに更に後年本命が明かされたウルトラの父=ケンウルトラの母=マリー
この名前が付いたのは2009年。先に挙げた銀河伝説で何と初登場から40年近く経っての後付け。おまけに割と許容的で批判は少ない。この差って一体…

そして有名な裏話だが実はジャックは没ネーム。どういうこと?

企画段階ではウルトラマンタロウがジャックと呼ばれるはずだったが、当時ハイジャックが世界的問題だったらしい。そこで自粛して今のタロウ、という名前になったそうなのだ。
つまり

帰ってきたウルトラマン
ウルトラマンA
ウルトラマンジャック
ウルトラマンレオ

になった可能性もあるということ。

どこまで不憫なんだ、帰ってきた新ウルトラマンジャック2世…



あなたの長所は何ですか?

極め付けにこれである。
ブレスレットだ曖昧な存在だの触れた上で、じゃあ帰ってきたウルトラマンの個性って何?

長期シリーズの個性を兼ねた差別化は前にも触れた。

ブレスレットだの宇宙怪獣、脚本の多方面化だのテコ入れは挙げられるがウルトラマン自身の個性って?
そこで帰ってきたウルトラマン本編を観たことがない人でも全話観た人でも必ず挙がる要素がある。

夕陽が似合うウルトラマン


風景じゃねえか


まあ確かにわかる。帰ってきたウルトラマンの代表的な怪獣:グドンとツインテールだとか先に挙げた初代ウルトラマン客演回など印象的な話は夕陽が多い。

帰ってきたウルトラマンの特徴でお馴染みのカラータイマー3分間とは別に太陽エネルギーという設定がある。つまり陽が落ちる夕方、夕陽になると著しく体力が低下する。なので劣悪な状況下での戦いが危機的ながらも美しく印象に残る、という。

正直この太陽エネルギーの設定も曖昧でよくわからん。だが自分も夕陽に映える帰ってきたウルトラマンは好きだ。

ただでさえ曖昧なまま生まれたから個性も何もあったもんじゃないのはわかるが、仮面ライダーでは深海用改造人間だの電気改造人間。ウルトラマンでも超獣退治のエキスパートに6兄弟の末っ子だの昭和の頃から個性を押し出す差別化は行われていた。

唯一といえばやっぱりウルトラブレスレット。外付けのテコ入れ要素。


特に近年のキャラ付け風潮において個性化はやはり販促に強く影響する。
ブレスレットの名手といった苦し紛れの後付け設定が盛られつつも、やはり帰ってきたウルトラマン単体を売り出すのは相当厳しいのだ。


ちなみにニュージェネでの単独客演回は判断が微妙。というのも星人がかつて戦った、というぼんやりとした回想として夕陽込みで映ったのみ。…やっぱ夕陽なんだな…


そんな絶望的なまでに不遇な帰ってきたウルトラマン。昨今「ウルトラレプリカ」という大人用変身アイテムが商品化されているが何ならテレビシリーズで唯一?変身アイテムが存在しない。

だが自分は帰ってきたウルトラマンがウルトラシリーズで一番好きだ。


帰ってきたウルトラマンの魅力

「個」ではなく「全体」

先に挙げたように帰ってきたウルトラマンには目立った個性がない。
じゃあ人気ないの?という訳でもない。平成や令和に入りシリーズ作品が増えても確固たる人気はある。

帰ってきたウルトラマンは「作品」として面白い。苦し紛れに絞り込んで出した感想ではない。

自分はクリエイターでもないのに度々作品がー作品がーとほざいている。

令和ライダー然りトリガー然り、俳優さん自身の演技は良いが脚本に動かされて「死んでいる」登場人物に違和感があり、果たしてそれは「作品」なの?と疑う特撮が立て続けだった。

趣味と義務感を線引きした結果

過去に挙げたのは「脚本が先行して肝心の出演者が納得していない」といった不和。作品は脚本と出演者は勿論全体で造ってこその作品、と述べた。


帰ってきたウルトラマンはそれに付随してとにかく「絵」が映える。
その点で夕陽が挙がるのは勿論ただ夕陽を背景に戦わせよう!だけではない。更に引き立てるようなカメラアングル。これが上手い。

代表的なのがそれこそグドンとツインテールの5、6話。ツインテールを相手にしていたらもう一匹怪獣が現れる絶望感。それをただ3体のキャラが映るように撮るのではなく橋の下から見上げるような癖のあるアングル。一度見たら印象に残ると思う。
最近のニュージェネでも「映画みたい」と言わせるこだわったカメラアングルで圧巻させられるがその始まりは帰ってきたウルトラマンのようにも思える。

勿論アングルだけではない。変身した後の睨み合い。これもかなり多用されていて今から始まる闘いの緊迫感が必ずといっていいほど醸し出される。この「間」もまた画面に区切りになる。


そして何より偉大な初代ウルトラマンやセブンにはない帰ってきたウルトラマンから始まった要素。


「人間ウルトラマン」

これを嫌う人もいるが自分は好きだ。

初代ウルトラマンのハヤタ隊員は最終回最後の記憶喪失があるので断定はできないが終始ハヤタ隊員とウルトラマンは各々の意識。
ウルトラセブンことダンは憑依することなく人間の姿を借りた宇宙人M78星雲人そのもの。

帰ってきたウルトラマンは郷隊員とウルトラマンと2つの意識が同時に存在する初めてのパターン。
だからこそ序盤はウルトラマンとしての自分に度々苦悩する。そのリアルさが好き。


スーツアクターのきくち英一さんのアクション:殺陣も魅力的で説得性が増してることも触れたい。


郷隊員とウルトラマンは変身前後で意識が変わる…ではない。
変身前は郷隊員のままだが変身後は終始ウルトラマンそのものでもない。途中から郷隊員の意識も混ざり合っている。ちょっと怖くね?
ウルトラマンの時に怪我をしたら人間の時にも同じ怪我を…は後年でもほとんどあるが意識の一体化は珍しいと思う。

巷では帰ってきたウルトラマンの動きが弱々しいと目にする。確かに荒々しいエースとは違い何処か慌ただしく感じられるが郷隊員の意識や精神状態も変身後に反映されるから。
自分達がいきなり熊と戦え!と言われて立ち向かえるだろうか?

それを踏まえての先に挙げた睨み合い。戦いは当たり前でもなく消化試合でもなく一戦一戦が正に命懸け。文字通りの殺陣を魅せてくれるのもきくち英一さんの演技力の賜物であり人間らしさが垣間見える帰ってきたウルトラマンの醍醐味。

帰ってきたウルトラマンには没になった主題歌が存在する。常に緊迫感ある曲調で歌詞にがっつり「死」という言葉が入っていることからも方向性が伺える。本当に紆余曲折。




又、前2作は防衛チームを主軸としているため限りなくフィクションである。
空想特撮シリーズという「作品」だから当たり前っちゃ当たり前なのだが、あくまでもテレビを通した画面内の出来事であり非現実。当然ながら自分達のいる世界とは違う。

帰ってきたウルトラマンはそこに坂田兄弟という防衛チーム外の日常をねじ込んできた。それまで完全なフィクション:造りものだったウルトラマンが急に現実味を帯びてきたのだ。

勿論フィクションであることに変わりはないが、非現実と自分達の世界の境界線を跨ぎ少し近づいてきた錯覚に陥り主人公の郷隊員がより身近にいるかのような親近感を得る。

等身大ヒーローの代表格:仮面ライダーも後のスーパー戦隊もただ怪人達と戦うだけでなく日常との交流があった。やや距離感があったウルトラマンも親しみを得てより夢中に、より応援したくなるヒーロー像に昇華した…と勝手に思ってる。おまけにあの長身イケメン。お子様どころか奥様方もゾッコンになるわけで。

この親近感は後の超絶爽やか好感度増し増しの光太郎=タロウ以降も続いていたり、何ならキャラ付けに溢れる現代においてニュージェネにすら繋がると言っても過言ではない。



ウルトラマン単体として見れば没個性かもしれないがそういった作品全体を踏まえて観ると一気に魅力的なヒーローになる。


日常ついでに作品として「絵」が映えるだとかについてもうちょっと掘り下げる。


郷愁溢れる不思議

自分は平成生まれなので当たり前だがリアル世代ではない。なのだが不思議とどこか懐かしさを感じさせる。

自分が特撮を好きな理由の一つとして当時のことが知れる歴史的資料の側面もあるから。

スマホなんて10年ちょっと前は当たり前だが存在しない。教科書で見たようなカバンみたいに馬鹿でかい携帯を持ち歩いた時代もあれば、今では信じられないが病院の待合室でタバコを吸えていた。えっ具合悪くて診察来てるのに?と驚いた。

経験したことのない昔の風景に出来事。意識的なのかどうかは分からないが頻繁に情景を映すカットが散見される。それも数話だけでなく度々。

直近で近い描写だったのがアニメ作品のSSSS.GRIDMAN。主人公らが学生だから学校を中心に生徒同士のやりとりや空気感が妙にリアル。自分達が実際に経験した学校生活そのものではないのにどこか懐かしい、その感覚に似ている。

初代ウルトラマンやセブンがヒーロー色強いフィクションだったからこそのギャップかもしれない。
これまたすごい個人的なニュアンスで、大人向けとも評されるウルトラセブンの印象が喫茶店の2階で外を眺めつつコーヒーを嗜みながら小説を読む昼下がり。伝われ。

対して帰ってきたウルトラマンが放課後友達の家に遊びに行き、帰ったらカレーの匂いがする食卓。なんならコントローラーを持ち寄ってスマブラだのカービィのエアライドを遊ぶあの懐かしさ。伝われ。

基地内での隊員同士のやり取りや戦いだけではなく情景を映すことで引き立つ日常。経験したことのない懐かしさがどこか美しいと思える。


とまあ世代でないくせに長々語ったがやはり帰ってきたウルトラマンは個性よりかは作品として人気がある。これが難しいところで天下の円谷様も売り出し方に悩んでいるだろうがそこで主観的に推したい帰ってきたウルトラマンの個性。


最も兄弟想いなウルトラマン


帰ってきたウルトラマン以降ウルトラ兄弟という設定が逆輸入され、度々本編で客演することで度々盛り上がっている。

ぶっちゃけ栄光の7人ライダーの客演に比べたらウルトラ6兄弟の客演の扱いが妙に散々なことは割愛。ノウハウがまだなかったのだろう。


当時から人気があったのかセブンの単独客演回数はぶっちぎりだが、次いで多いのは実は帰ってきたウルトラマン。というか長兄ゾフィーを除きこの2人しかない。

単独客演したのはタロウの52話でカラータイマーを盗まれるシーンで有名なドロボン回、レオの34話で令和に大活躍したセブンガーのオリジナルが登場するアシュラン回の2つ。
やっぱりどっちも扱いが酷いや。

だがドロボン回ではタロウの身代わりとなって罠に落ち、アシュラン回では変身不能になったセブンの身を案じてセブンガーを持ってきた。
ファイヤーモンスやトータス親子のとりあえずセブンで!というビール感覚ではなく兄弟想いが強調されている所を是非推したい。

直後にアストラを○す!とたち変わってるけどまあ状況が状況だから…うん…


今日から君も通ぶれる!おすすめエピソード

最後に帰ってきたウルトラマンで自分が好きな回を。決まってムルチの怪獣使いと少年だとか前後編が挙げられるのであえて有名どころから外したチョイス。


25話「ふるさと地球を去る
隕石怪獣ザゴラスの回。
めちゃくちゃマイナーだし正直怪獣自体はパッとしない。ゴジラのショッキラスみたいな扱い。

好きな理由は南隊員が「じゃみっ子」に自分を見出して助力しようとする流れ。
ある意味では怪獣使いと少年の別回答ともとれる深く良い話…なんだけど先の怪獣が地味だったりラストの子どもが銃をぶっ放す場面だけ語られるのがちょっと勿体ない。

あと個人的に序盤からめっちゃ良い人の南隊員の掘り下げだから、というのも好き。さすがだぜイチロー。
じゃみっ子ってなんだ?と思ったら是非。



27話「この一発で地獄へ行け!
タイトルが滅茶苦茶物騒だけど更に上がある。
八つ切り怪獣グロンケンの回。
ウルトラシリーズでは珍しく主人公の三角関係がメイン。これがびっくりした。

郷隊員がキックボクサーと知り合いになるがボクサーは気になる女の子がいた。今度の試合に勝てばプロポーズするつもりだが負けたら故郷へ帰ると。
その女の子が実は郷隊員の彼女なのだが試合直前になってその事実を知る。ボクサーの結末は如何に。

この感情の揺れ動く青春と面白いことにウルトラマンと怪獣、ボクサーの試合が同時進行で進む。その対比も面白い。



また、今回の怪獣グロンケンは操る宇宙人がいない野生怪獣なのだがどう見ても改造されたかのような武器を備えている。
実は次回作エースの宿敵ヤプールが生み出した超獣の実験体では?なんて考察もあって面白い。


どちらも中盤の話だが、盤石な序盤は勿論中盤から魅力的な怪獣や脚本が多数あって本当に面白い。飽きない。この幅広さも帰ってきたウルトラマンの魅力の一つ。


今後も一生周年記念を大々的に祝われることがないであろう不遇っぷり、されど一番大好きな帰ってきたウルトラマン
監督の手腕次第や後付けとはいえここ数年でセブンやレオ、タロウにエースと新たなキャラ付けがなされ、どれも好評な傾向にある。昔ほど雑じゃない。

なので是非、夕陽以外に(これ大事)帰ってきたウルトラマンにも活躍の場を。何卒よろしくお願いします…

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