筋ジストロフィーの新たな治療法開発に向けて
こんばんは。
結局、徹夜してしまいました(笑)。
少し寝たのである程度、頭は大丈夫です。
今日は「筋ジストロフィーの新たな治療法確立に向けて」というお話です。
こちらのプレスリリースよりご紹介。
ざっくり内容を述べると、
筋ジストロフィーの原因とされる物質のメカニズムが分かったので、そこにアプローチする治療法が開発できそう
というものになります。
筋ジストロフィーって?
身体の筋肉が壊れやすくなり、また修復も行われず、筋委縮や筋力低下を起こす病気で、根本的な治療法がないので難病指定されています。
また、その症状や発症年齢に応じて分類されます。
今回はジスフェルリン異常症というタイプについての研究になります。
このタイプの病気は成人後にかかることが多く、子供のころは体を動かせていたのに、大人になって急に車いす生活になる、といったことが起きます。
筋ジストロフィーの根本的な治療法はまだ開発されておらず、動物実験で有効だと証明できた医薬品について、臨床治験を進めているのが現状です。
今回の研究でも、マウスを使った実験により、筋ジストロフィーに有効だと思われる新しい方法を発見しました。
ジスフェルリンというたんぱく質
この「ジスフェルリン異常症タイプ」の「ジスフェルリン」というのはたんぱく質の一種です。
この「ジスフェルリン」が不完全なかたち(専門用語で欠損といいます)になると、筋細胞の修復作用が上手く行われなくなることが、これまでの研究で分かっています。
そういう意味で、「ジスフェルリン異常症タイプ」なんて呼ばれています。
ただ、「ジスフェルリン」が筋細胞の修復作用に関与することが分かっていても、そのメカニズムまではよく分かっていませんでした。
「なんか知らんけど、こいつ(完全な状態のジスフェルリン)がいないと修復が起きない」状態だったわけです。
そこで、今回の研究で明らかにしていきました。
分子のメカニズムを追求!
筋細胞が修復される際に、「ジスフェルリン」が他のたんぱく質と結合を行うようです。
測定装置を使って結合するたんぱく質を調べ、いくつかの候補の中から
AMPKタンパク質複合体
(AMP 活性化タンパク質リン酸化酵素, 詳しくは調べて頂戴!)
という物質に注目しました。
そして、この『AMPKタンパク質複合体』という物質が、ジスフェルリンとどのような反応をするか、マウスを使って調べます。
正常なジスフェルリンをもつマウスと、欠損したジスフェルリンをもつマウスの2種類を用意して、それぞれの骨格筋に傷を入れます。
すると、
正常なジスフェルリンを持つマウス
⇒ 『AMPKタンパク質複合体』が損傷した部位に集積し、筋細胞を修復
欠損したジスフェルリンを持つマウス
⇒ 『AMPKタンパク質複合体』が損傷した部位に集積が遅れ、修復されない
という結果になりました。
つまり、
『AMPKタンパク質複合体』が筋細胞の修復に重要な役割を持つ
欠損したジスフェルリンにはAMPK複合体がくっつきにくいため、修復機能が低下する
ということが分かりました。
これで、ジスフェルリンが欠損していると「ジスフェルリン異常症タイプ」の筋ジストロフィーが発症する理由が分かりました。
AMPKを活性化させる
先ほどの「ジスフェルリンが欠損した方のマウス」について、要するにAMPK複合体が本領を発揮できていない状態だったわけです。
そこで、活性化剤という薬を投与してみました。
「アカデシン」という活性化剤を使うと、筋修復機能が改善されました。
また、「メトホルミン」という活性化剤を使うと、モデル動物の筋力低下や筋損傷を改善することができました。
このことから、筋ジストロフィーの治療法として、「AMPK複合体」をターゲットに活性化剤のような医薬品が使えるかもしれない、という仮説を立てることができました。
今回はマウスを使った実験でしたので、最初に述べたように臨床治験を通して、治療法の開発を行っていくそうです。
筋ジストロフィーの根本治療についてはまだまだ先ですが、今回の研究は非常に貢献してくれているものだと思います。
それでは、本日は以上となります。
最後までお読みくださりありがとうございましたー。
【おまけ】
たんぱく質に異常が起きるのは、遺伝子が原因のようです。
遺伝子由来のメカニズムが分かれば、根本的な治療につながると思いますが、そのためには今回の研究のように、新しい発見を積み重ねる必要がありそうです。
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