「藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義(上)」藤巻健史

特に忘れてはいけないと判断したものをメモ

本著は主に為替のことについて記述している。

頭に入れておくべきは、為替の取引では「安く買い、高く売る」がすべてだということ。

オファード・レートとビッド・レート

(例)121(25ー35)

121円25銭をビッド・レートという

これは、1ドルをできるだけ高く売りたい売り手にとって、一番高いドルの買値。ほんとはもっと高く売りたいのに・・・のニュアンス

121円35銭をオファード・レートという

これは、1ドルをできるだけ安く買いたい買い手にとって、一番安いドルの売値。ほんとはもっと安く買いたいのに・・・のニュアンス


TTS、中値、TTB

121円30銭を中値(AM9:55のレート)とすると、TTS(Selling)は122円30銭TTB(Buying)は120円30銭。

これは、A銀行は1ドルを122円30銭で売るよ、ということ。


(為替の)先物

先物とは、「1年後にドルを売るぞ、1年後にドルを買うぞ」という将来の契約のこと。大事なのは契約だけということ。値段(レート)は決めちゃう。

先物レートとは

ドル預金をしても円預金をしても円貨で同じ収入になるドル/円レート

(例)

ドル/円 120円

円の金利 1年もの1%

ドルの金利 1年もの5%

手元に120万円ある


この例で、先物レートがなかった場合を考える。120万円を、円で1年預金した後の先物取引と、ドルで1年預金した後の先物取引では金額に大きな差ができてしまう。これでは円で預金する人などいなくなる。

この場合、先物レートは115円43銭になる。先物レートは「円預金」か「ドル預金」をするべきかのブレークイーブンポイント(損益分岐点)に使える。


このように、「1年の先物を売る/買う」というオペレーションを「ヘッジをする」と言う。それは、1年後先物レートを下回っても(ドルが下がっても)安心だから。レートは決めちゃったのだということ。

しかし先物で儲けるにはヘッジをしないことが基本。するならば、金利で儲かった分は為替で損してもいい、ということを頭にいれておく。


ヘッジファンドで儲ける

ヘッジファンドは先物で勝負する。

例えば、1年後に先物の「10億ドル買う」という約束をする。1ドル120円とすると、先物レートは115円43銭。仮に1年後も1ドル120円で変わらなければ、儲かる。なぜなら、1ドル115円43銭でドルを買い、1ドル120円でドルを売れるから。

高値、安値

ビッド・レート、オファード・レートはにらみ合いの値段。それに対し、高値、安値は実際にできたレート。実際に取引が行われた高値と安値。


国際収支

国際収支は①経常収支と②資本収支に分かれる。

①経常収支には2つ

 ア)モノ+サービス・・・給料やボーナス

 イ)所得収支・・・海外投資から得られる利息とか配当

②資本収支・・・元本(手元にのこるお金)の動き


円安が進みそうになると、外国人は日本株をどうする?

①日本株の担当者

 「円安になると日本経済は回復する」という認識のもと日本株を買う

②為替の担当者

 ヘッジをする。円の先物を売る(ドルの先物を買う)。つまり、円が下がる前にドルを買い、円安になった時点(ドルが上がった時点)で再びドルを売りたいのである。


為替を動かす要因

①金利差 ②国際収支 ③資本の動き(資本収支)④政治的圧力(ドル売り、ドル買いなど) ⑤質への逃避(有事のドル買い) ⑥経済情勢 ⑦社内レート ⑧為替介入(外貨準備が増えると通貨発行残高が増え、金融緩和になる(市中にお金があふれる))


アルゼンチン危機はなぜ起こったか

理由は2つ。「固定相場制だったこと」と「外貨建ての借金をたくさんしていたこと」

固定相場制だったために、ペソが実体経済よりも強くなりすぎた。ならば安くすればいいのだが、そうもできなかった。なぜなら、外貨建ての借金をたくさんしていたからだ。外貨建ての借金まみれの中ペソが安くなったら財政破綻に陥るのである。

例えば、日本が1ドル120円の状態で、ドルで借金をしていたとする。もし急に1ドル240円になるとどうなるか。借金していたドルを円に変えたとき、借金が2倍に膨れ上がるのだ。


アジア危機はなぜ起こったか

理由は2つ。「アジア諸国が固定相場制をとっていたせい」と「金融機関が外貨建てでお金を大量にかりていたから」

経済発展をするために途上国が固定相場制をとることは大事である。なぜなら、通貨が安定しないところに人々は投資しないから。

為替の先物を考えると、固定相場制では自国通貨の金利をを米金利と同じにしなければならない。なぜなら、例えば、1ドル120円は先物取引の時点でも1ドル120円であることから、人は金利の高い通貨でしか預金しないからである。

ソロスのポンド売り

簡単に言うと、ソロスがイギリスのポンドの下落を見越して、ポンドを売りまくり、ポンドに打撃を与えて大儲けしたということ。

イギリスは、無理をしてポンドを高く維持していた。通貨固定が通貨統合に参加できる条件だったのである。そこでソロスは事前にポンドを大量買いした後、大量のポンド売りをした。それによってイギリスのポンド維持はノックダウンし、ポンドは約20%下がった。


ー短期金融マーケットー

長期金利はマーケットが決めるが、短期金利は所詮は日銀の手のひらの上で動いている。日銀のコントロール下にあるという。長期金利はオープンマーケットであるのに対し、短期金利マーケットの中心は銀行間マーケットである。

まずは日銀の話。日銀の資本金は1億円。55%を政府、45%を民間が出資している会社である。

日銀の業務


①発券業務(日銀券(1万円札、5千円札))

ちなみに、日本銀行券は日銀の負債である。これは、昔紙幣が金と兌換できることを想像すればわかる。市中に回る日本銀行券とは、「(日銀が)金を借りました」という一種の証書になる。日銀が金で返さないといけない・・・というニュアンス

現在は兌換紙幣ではない。すると、日銀券の価値は、日銀券を保証している資産の健全性が非常に重要。日銀のバランスシートを見ると、発行銀行券を担保しているものは国債となる。

②政府の銀行

・国庫事務(年金や公務員給料の支払いなどを市中金融機関に委託)

・外国為替事務

・国際業務

③銀行の銀行

民間銀行の送金は、日銀においてある各銀行の当座預金を操作している。

ちなみに、民間銀行は当座預金(金利ゼロ)に加え日銀に準備預金を積まなければならない。


日銀はなぜ偉い

①金融政策を決定する

 (ア)公定歩合操作

公定歩合とは、日銀が民間金融機関に対して貸し出しを行うときに適用する基準レートのこと。

公定歩合があがれば、各銀行から一般人への金利も当然上がる。ただ、これはアナウンスメント効果に過ぎない。

 (イ)債券手形オペレーション

買いオペ・・・日銀の資金供給。債券やTBやCPを日銀が買い、市中に資金が回る。

売りオペ・・・日銀の資金回収。債券やTBやCPを日銀が売り、お金を回収する。

 (ハ)支払準備金操作

各銀行から日銀へ置くべき準備預金などの率を変えることを準備預金操作という。


準備金の率を上げると、市中に回る資金は減る。お金をたくさん日銀に置かなければならないからである。


②日銀検査

民間金融機関は日銀検査を受けなければならない。なぜなら、日銀に当座預金をもっているからである。


量的緩和

量的緩和とは、日銀にある当座預金残高を増やすこと。

昔は金利を下げて景気を刺激しようとしたが、金利が0%になった現代では金利を下げるわけにいかない。こうして量的緩和という手段に切り替わったのである。お金を0%の口座に置いておくのは馬鹿馬鹿しい故、金利の取れる貸出しに回すだろうと想定したもの。

量的緩和が発動される以前は、当座預金にお金を余分に置くことは許されなかった。市中にお金が回らないからである。


LIBOR(ライボ)

LIBORというのはロンドン市場で取引しているユーロ円のレートである。ユーロ円とは日本国外の金融機関に預けられている円である。

なぜLIBORが重要か。それは、短期金利の話ではあるが、海外での貸付や金融取引はLIBORベースが基本だからである。

ジャパンプレミアム

ジャパンプレミアムというのは、邦銀が欧米の銀行から要求される上乗せ金利。


金融先物市場とは

金融先物とは、その特定の金融商品が(3)ヶ月金利ということ。

イールドカーブ(時間と金利の対応関係)は基本右上がり。イールドカーブの形状を見ると、’’マーケットが’’金利をどう考えているかがわかる。普通は長期にわたるほど金利はあがる。また、信用力の一番高いものは金利が低くなる。

(例)将来金利が上がりそうなとき

借り手・・・なるべく長く借りたい

貸し手・・・なるべく短く貸したい

(例)将来金利が上がるとき

借り手・・・短い期間「少」、長い期間「多」

貸し手・・・短い期間「多」、長い期間「少」


金利が上がると騒がれている中1億円が先の3ヶ月必要な場合

①金利が上がらないことを祈る

②借りて、3ヶ月が来るまで貸す


メモ欄

マイナス金利とは、置いておくだけで儲かる。

15年国債とは、短期債の集合体。金利が見直されるたびに変更する。


長期国債マーケット

長期金利はオープンマーケットであるため基本的にはマーケットが決める。

国債の金利が長期金利を決める

長期金利マーケットは先を見る。公定歩合が上がったとき短期金利は上がるが、長期金利は下がることもある。

国債の金利を決めるもの

①需給 (例)野村證券が買うか否か 影響は少ない

②ファンダメンタルズ(景気) 需給よりはるかに重要

景気が良くなれば、利益が上がる。すると、金利があったとてお金を借りようというモチベーションが生まれる。お金を借りることのリターンが良いからである。従って、金利が上がる。

つまり、景気が良くなると金利が上がる。

これは数値でもいえる。以下の式がまさに表している。

 名目金利=実質金利+期待インフレ+リスクプレミアム


マーケットが景気を気にする具体的な要因


①景気指標 主な例はGDP。ただし速報性に欠ける。

②日銀短観 大企業製造業の業況判断指数 相対的

③マネーサプライ

 Mv=Py

Mはマネーサプライ、vはベロシティー(貨幣の回転速度)、Pはプライス、yはGDP

vとyは一定とするとMとPは比例する。すなわちマネーサプライが上がるとプライスが上がる。

マネーサプライが増えれば、みんなお金を貸したがる。すると金利は下がる。しかしインフレが始まるので景気は良くなる。最終的に金利は上がる。

④日銀の政策

⑤為替 円が安くなると景気が良くなり長期金利が上がる?

⑥リスクプレミアム =お金が返ってこない可能性

⑦チャート


国債マーケット基礎用語

・JGB(Japanese Government Bond)=日本国債

・ブルマーケット=強気(価格が上がる)のマーケット

・ベアマーケット=弱いマーケット

・ビル=1年未満の債券

・ノート=1年から10年の債券

・ボンド=10年以上の債券

・表面利率(クーポン)=額面(債券の金額)に対する1年あたりの利子の割合

・利回り

  →「利回りが上がるということは価格が下がる」

価格と利回りの関係は逆。同じ金額の利子を受け取るなら、金額が下がると利回り(利子の割合)は上がるのと同じ。

・単利=現在価値を考えていない利回り

・複利=現在価値を考えた利回り


現物債マーケット

一番の特徴は金利で取引されること。

また、プライマリー市場(発行市場)とセカンダリー市場(流通市場)がある。


債券先物市場

債券先物市場は長期金利を決める大本である。現物債マーケットより遙かに大きいマーケットなのである。

債券先物とは、まず「6%残存10年の再建がある」と仮定する。1枚1億円。実際にはないがあると仮定して値段で取引する。

そして、将来一定の期日で取引する。今日の時点で取り決めた価格を、3月、6月、9月、12月の20日に取引する。重要なことは、今日の時点では契約だけだということ。

為替先物と違い、債権先物はだれでもできる。ただし、証拠金を置かなくてはならない。1億円の約束につき250万円のイニシャルマージンを証券取引所に預けるのである。もし損をしたら、損をした分だけバリエーションマージンとして追加で預ける。

ちなみに、1ベーシスポイント(0.01)で1万円変化するというのは覚えておくべき。


例えば、始値139円06銭である債券先物がある。139円20銭いったときに1枚(1億円)売れた人がいるとする。終値は138円65銭。このときに先ほど売った1枚の債権を買い戻したとする。これは、売ったときから55銭さがっている。1枚1ベーシスポイント1万円の儲けだから、55ベーシスポイントで55万円の儲けが生まれたことになる。

その人はその日のうちに買い戻したため取引が残っていない。それゆえイニシャルマージンを置く必要もない。お金を1銭も使わず55万円儲かったことになる。

次の日に持ち込んでも250万円を置くだけである。

これを「レバレッジが効く」という。少しのお金で大きなお金が動く事である。

ちなみに、決済は現物債で取引する。証券会社などが、先物を解除しながらちょこちょこ現物債を受け取るからである。


債券先物のメリット

①レバレッジが効く

②バランスシートがいらない

③クレジットラインを使わない=証券会社の倒産は無関係


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