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音楽と脳②脳はどこで音楽を聴いているのか

「私たちの音楽的な感性にとって、音を本当に聴かずに漠然と聞いてしまうことほど致命的なものはない。」byトバイアス・マテイ(ピアニスト)


前回の「音楽と脳①」では、聞こえてくる音そのものと脳の処理についてお話ししました。下記にリンクがありますので、よろしければご覧ください。今回は、”音楽”を脳のどの領域が”聴いて”いるのかについてのお話です。

音程(音の周波数)や音量の知覚など、音楽を認識する上での最初の処理は左右両半球の一次聴覚野と、二次聴覚野でなされます。二次聴覚野は、和声(和音)や旋律(メロディー)、リズムといった、より複雑な音楽パターンも処理します。

そして、三次聴覚野はこれらを統合して”音楽”という総体的な形で認識させると考えられています。脳卒中患者に関する研究では、音楽の認識は階層的に行われるということがわかっているそうです。

左脳音の間隔やリズムなどの基本要素を処理し、右脳拍子や音調曲線(音の上昇・下降パターン)といった全体的特徴を認識します。左脳が傷ついた患者はリズムを知覚できなくなったり、右脳が傷ついた患者はメロディーや拍子が認識できなくなってしまう、などです。

しかし、脳のどの領域が活動するかは、聴き手の関心がどこに向いているのかや、過去の経験によって異なってきます。

左脳:リズム
音楽経験の浅い人が楽音の長さの違いなどメロディーの単純なリズム関係を認識するときは、左脳の「運動前野」と呼ばれるところと、頭頂葉の一部を使って処理しています。さらに複雑なリズムになると、右脳の運動前野と前頭葉も働き始めます。
これとは対照的に、プロの音楽家などの音楽経験が豊富な人の場合は、主に右脳の前頭葉と側頭葉の一部が使われます。

右脳:音程と旋律
音楽経験の浅い人が音の高低を比較するときは、右脳の「後前頭回」と「上側頭回」が活動します。そして、のちの使用、比較に備えて側頭葉の聴覚ワーキングメモリに記憶されます。
対照的に、音楽経験豊富な人が音程を聞き分けたり和音を認識したりするときは、左脳の動きが活発化します。
聴き手がメロディー全体に集中するときは、右脳を中心に活動します。

不思議なことに、過去の経験と訓練によって処理する脳の領域は違ってきます。次回は、そのことについても少し詳しくお話しします。

参考文献:Music in Your Head  /  Eckart O Altenmuller





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