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広報機能の進化、拡大する役割

広報チームが担当する業務は広がりを見せています。
伝統的な広報の役割にある、「記事露出の獲得」だけでなく、Diversity Equity Includion(DEI)イニシアチブ、サステイナビリティ・ESGに関するコミュニケーションなど、また、メディアの分散化(de-centralization)といった情報伝達ツールの日進月歩にも注意を払わなければなりません。


日本広報学会も、「広報」の定義をアップデート

日本広報学会は 約 2 年間かけて「広報の定義」を作成し、今年の6月に発表しました。このアップデートの目的は、①広報に対する共通認識の形成、②隣接領域との関係の明確化、③広報領域の地位向上をめざしているということです。

広報とは、組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。
A management function in which organizations and individuals build and maintain socially desirable relationships through two-way communication with diverse stakeholders in order to achieve objectives and solve problems.

日本広報学会

経営機能である。
これは、広報に携わるものとして、噛みしめなければいけないと思っています。「企業の市場価値の25%は評判に関連」とされるデータもありますが、現場の広報やコミュニケーション担当者、代理店も含め、社会の変化に呼応する形で、広報、パブリック・リレーションズ、コーポレート・コミュニケーション、イシュー・クライシスマネジメント、、様々な局面で変化を感じ取っているのではないでしょうか。

ここから先は、PRの効果を計測する新しい方法を提唱しているMEMOという会社が行った調査報告書が行った調査をまとめています。

調査期間:2023年6月15日~2023年6月21日、オンライン調査(英語)
対象:従業員数100人以上の企業(企業内・代理店)、フルタイムで広報・コミュニケーションに携わっている18歳以上の担当者
サンプル数:1,000人

注)「広報チーム」は、「広報」「パブリック・リレーションズ」「コーポレート・コミュニケーション」を総称して使っています。「広報チームリーダー」はVice President以上のコミュニケーション担当者職位を指します。


広報チームはどこ直属?

広報チームは一般的に、会社やリーダーの評判管理、ブランドに対するリスクの予測、市場に対する深い理解を担っている。

Memo founder Eddie Kim on Axios interview

報告書によれば、多くの広報担当者はChief Marketing Officer(CMO)の直属にあり、CEOとCMOに報告する割合がほぼ均衡しています。実に、広報担当者の9割近くが、会社規模に関係なく、社内でCEOかCMOどちらかに報告をしていることになります。

図1 コミュニケーション担当者(Vice President職以上)のレポートラインは?

欧米で行われた調査ですが、広報チームは組織の中心に位置し、意思決定権を持つ、事業の核となる部門と連携しているということがわかります。

広報チームリーダーの重大任務は?

広報チームリーダー(Vice President以上の職位)の責務としては、7割が「社内コミュニケーション(Internal Comms)」と「マーケティングキャンペーン(Marketing Campaigns)」と回答。

さらに、広報チームは対内外コミュニケーションを広く担い、また、多くの場合「企業の社会的責任(Social or Corp. Responsibility)」に関わっています。

以外と、欧米の広報チームは、「リアクティブなメディアリレーション」が低めに出ている(57%)点が、日本で調査した場合、異なってくるかもしれませんね。

図2: COM担当職位別の優先事項には、様々なものが含まれる

各広報担当者の優先課題は?

広報担当といっても、今はとても幅広いですよね。この図では、各広報担当が何のプロかに応じて優先課題をまとめています。

図3: Com担当者の責務に応じた優先事項
  • 一般的な広報担当者は、「認知度の向上 (Build awareness)」、「報道量の増加 (Increase coverage volume)」、「地域社会への関与(Community Engagement)」に重点

  • 企業内の広報担当者も同様に、「地域社会への関与(Community Engagement)」に重点を置いているが、ほぼ同じ程度「特定の重要なキーメッセージの増幅(Amplify Specific Key Messages)」を優先

  • 社内広報担当者の4割は「認識の変化(change perception)」とこたえ、会社に対する社員の認識を変えることを重視

対外的な広報で、企業や製品などの「認知を変える」ことを目指すことが多いことはわかりますが、対内的な広報でも従業員がもつその企業に対する認知を何らかの形で変えるという責務を、社内広報担当者が背負っているということは、Change managementであったり、企業文化の浸透やポストコロナ後の働き方の中で、広報チームの重要性が浮き出てくるように思います。また、そういった社内における目的を持ったコミュニケーションをいかに設計できるかが急務とされていることを示唆しているように思います。

パンデミックで変わる、広報リーダーの姿

少し話題が変わりますが、欧米では、Chief Communication Officer(CCO)という役割が増えてきているようです。

例えば、2023年の以下の報告書では、以下の3点がハイライトされています。この調査は、Fortune 500 社のChief Communication Executiveから収集した回答をもとにしています。

  • Chief Communication OfficerとChief Marketing Officerの関係変化:4割のCCO は CEO に直属し、CCOがマーケティング最高責任者に報告する割合は過去数年に比べ減少。

  • コミュニケーション・エグゼクティブの職務範囲が広がる:CCO の重要な役割として、コーポレートコミュニケーション、メディアリレーション、イシュー&クライシスマネジメント、ソーシャル&デジタルメディアが、変わらず主要な職務範囲。さらに言えば、 コーポレート・レピュテーション(2023 年 95%、2014-2015 年 89%)、インターナル・コミュニケーション(2023 年 96%、2014-2015 年 91%)が前回の調査よりも増加。

  • コミュニケーションチームの拡大:回答者の25%が100人以上のチームを持っており、2014-2015年の16%から増加。組織のレピュテーション、価値観、文化に関わる CCO の任務の拡張は、Comチームの拡大に反映されている。

今日のダイナミックで混沌としたビジネス環境において、CCO は組織の全ステークホルダーを把握できる唯一の役員です。明確で説得力のあるストーリーを持つことの必要性はかつてないほど高まっており、その結果、その役割と割り当てられるリソースは、ビジネスの需要に応えるために形を変えつつあります。

Richard Marshall, Korn Ferry’s Global Managing Director

パンデミックは、コミュニケーションのビジネス価値に対する新たな理解に火をつけた可能性もあります。変化の多い環境において、コミュニケーションリーダーが、企業と社会をつなぐ脳幹的役割が、さらに期待されているのかもしれません。


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ワシントンDCを拠点として、北米マーケットに向けた広報活動や米国議会の動向調査などを行っているコンサルタントです。気軽にご連絡くださいね。
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