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【寄稿】日本のアフリカ投資動向について(エネルギー/気候変動)

※2023年3月に米国Washington DCを拠点とする政策シンクタンクAtlantic Council EnergySourceに寄稿したものを、簡単にまとめたものです。

背景

2022年、中国、米国、印、露、そして日本がアフリカとの関係を強化しようとする「アフリカ+1」サミットやハイレベルな外交/外遊が展開されました。オバマ政権以来、8年ぶりに2022年12月にワシントンDCで開催されたアフリカと米国間のサミットも、アフリカ系アメリカ人などの俳優やアーティストも参加するなど、文化・経済交流・多様な側面で、米国にとってアフリカの重要性を再定義しようと試みたものと言え、開発支援プログラムに加え、アフリカの潜在的市場としての魅力を強調し、アフリカ大陸への投資・貿易取引加速が重視されました。

The new U.S. Strategy Toward Sub-Saharan Africa represents a reframing of Africa’s importance to U.S. national security interests.

White House FACT SHEET: U.S. STRATEGY TOWARD SUB-SAHARAN AFRICA

でも、、アフリカとの経済取引活性化には困難も伴う

日本の対アフリカ輸出は2010年代に入り停滞し続けており、市場シェアも2000年の7位(4%超)から2018年には17位(2%未満)に後退し、また対アフリカ輸出は自動車や鉄鋼等に偏っています。

一方、中国はこの20年でアフリカ大陸との経済交流を活発化させ、世界で断トツ一位のポジションにあります。とはいえ、これまで中国が世界を上回る投資をアフリカにしてきた中、2016年以降減少傾向にあります。

2022年のTICAD8での日本官民による発表とは?

2022年にチュニジアで開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD)サミットで、日本は新たな「アフリカとのグリーン成長イニシアティブ(GGA)を発表。公的資金と民間資金を組み合わせた40億ドル規模で発足し、積極的な投資を通じて気候変動の緩和と適応事業を着実に拡大することを目指しているとされます。

豊田通商は、TICADで多数の「グリーン・エコノミー」協定を発表。同社のアフリカを拠点とする事業の売上高は過去5年間で倍増し、2022年には日本企業として初の、1兆円に到達しています。その他、官民による90件に上るの覚書の締結が発表されました。

前述のGGAの構成要素にもなっていますが、公的資金や慈善団体(フィランソロピー)資金と民間の投資・融資を組み合わせたブレンデッド・ファイナンスなどの手法を活用も発表内容に組み込まれていました。このような、事業を構造化する上で、日本の公的機関がより柔軟な役割を果たすようになったことは注目に値すると思います。

日本によるインフラへの「リスクマネー」供給

さらには、日本貿易保険(NEXI)のLEADイニシアチブという融資を組成するための公的保険スキームの動員も経済新興国との関係をみるうえで興味深いです。例えば、スエズ湾に近い、エジプトの将来的には最大級の陸上風力発電所は、日本の公的銀行と商業銀行を中心とする銀行の多国籍コンソーシアムによって共同融資されています。これらのプロジェクトは日本貿易保険(NEXI)によるLEADイニシアチブを駆動したものでもあり、最高額の商業リスク保険が適用されたようです。

日本は、2025年までにLEADイニシアチブのポートフォリオを通じて総額1兆円規模の案件を組成することを目指しているとされ。2023年の広島G7サミットでも、「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」の中で、世界全体に対するインフラ案件向けリスクマネーの供給拡大における日本の役割を推進しながら、日本企業の受注・参入を一層後押しする政策パッケージが発表されています。

次のTICADは2025年、横浜で開催!

次の会議は横浜で2年後に開催されます。今回の記事ではアフリカでの政治側面には言及していませんが、今後も日本とアフリカ間の経済交流のについて引き続き追っていきたいと思います。また広報の視点で、アフリカとの関係を深められるような貢献を深化させていきたいと思っています。

Studio Ramiについて LinkedIn 
ワシントンDCを拠点に、パブリックリレーションズ・パブリックアフェアーズを支援しています。米国企業の日本/アジア展開、国際機関の日本展開、日本企業や組織の海外進出など、クロスボーダー案件を得意としています。



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