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止めないでダーリン、私はお風呂に入るのよ。

お風呂という偉大な文化について考えてみた気になってみた夜。

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最近どこかで読んだ文章のなかに、
「入浴」の本質について書かれたものがあったことを思い出したので書き残しておこうと思う。

「入浴」という単語を聞くや否や、僕たちは頭の中ですなわち「お風呂に入ること」が連想され、
それとほぼ同時に「体の汚れを落とすこと」だと思い至る。

しかし、それが実はそうでもないらしいのだ。
というのも、「入浴」という言葉の中には、どこを見たって「体を洗うこと」を示唆する文字はなく、よってその意図もない。

では僕たちはなんために入浴するのか。お風呂に入ることで一体何を得られるのか。

たしかに、体は綺麗になる。
一日の汚れを落とし、また綺麗な体になって、明日を迎えることができる。

だが、それがどうしたのだ、と、その野生の文章は告げていた。

曰く、「入浴」とは本来読んで字の如く、「湯に浸かる」ことを目的とした行為なのだという。

それ以上でも以下でもない。
湯船にお湯を貼ってザブーン、ほわわー、アチチーが入浴の全てである、という意図の文章であったと大雑把に記憶して、ついでに大雑把に書き記している。

その文章の中では、「ぬるま湯にゆっくり浸かる」であるとか「半身浴」であるとか、
いわゆる「海を越えてやってきた入浴観」は全体的に否定されていた。
というより、日本人はそんなことをやる必要がないのだ、というような論調であったように記憶している。(大雑把に)

曰く、西洋人というのは基礎体温が非常に高いらしい。
本当かどうかは知らないが、フランスなどに住んでいるヨーロッパ系白人の平熱は、37度を超えるとかどうとか。どうりで冬でも短パンで歩いている。
かように体温が高い彼らが「体温を下げる」ことでリラックスするために行うのが
「ぬるま湯浴」であったり、「半身浴」であるのだ、というのだ。

なるほど、確かに毎日「なんか微熱っぽいなあ」と思っているのなら、半身浴でもして汗をかいて、体温を下げて落ち着きたいと思うかもしれない。
それで彼らの使う浴槽は「寝型」なのであろう。
ご存知ない方もあるかもしれないのでざっくりと説明すると、海外型の浴槽というのは日本型の浴槽と比較すると、平均して15-20cmほど『浅い』。
肩まで浸かろうと思えば完全に寝っ転がるくらいのイメージで挑まなければならず、なんともこう、落ち着かないお風呂なのだ。

対して日本型の浴槽は「居座り型」、もっと言えば「風呂釜」である。
本当かどうかは知らないが、この「深み」のある浴槽に浸かろうとすると、体表面に500kg近い圧がかかるという。
この圧力が身体中の毛細血管を刺激し、血流を向上させ、発汗作用に働きかけて老廃物を排出し、結果的に体温が上がって健康になる、というのである。

ほほーん、と思う。

というのも、かつて遠い異国の地に住んでいた僕は、
何度かこの「海外式」の浴槽に浸かったことがあるのだ。
その時のことはいまだに覚えている。

日本の地を離れて数ヶ月、やっと久しぶりにありつけた貴重な「湯船」に、僕は胸を高鳴らせていた。
ところが、いざ肩まで浸かってみた久しぶりのお風呂はどこかイマイチで、なんとも納得の行かない、歯切れの悪いコンニャク麺を食べているような気分になった。

お風呂の話をしているのに食べ物で例えるのはいかがなものかと思ったので、
いっそ感嘆詞でお伝えしようと思う。


「んふわあ”ぁ〜〜〜〜〜〜……っっっ!!」


これが日本式の浴槽だとしたら、海外式のそれは、せいぜい

「……はぁー。」なのだ。

誓って言うが、嘘はない。本当にそうなのだ。
ハッキリって、全くの別物である。
大葉とパクチーくらいの差があるといってほとんど良い。
これをして「半身浴がー」とか「デトックスがー」とか、同列に一概に取り扱うべきではないだろうなと、今ならわかる。

そして、風呂の温度。

本来湯船に貼るお湯の温度は45°C近くであるべきだという。
当然熱い。熱すぎる。
熱すぎるからまず日本人は湯を「浴びる」のだ。
ケロヨン桶にお湯を入れ、徐々に体を熱さに慣らし、
頭の上に冷たい手拭いを乗せて、わざわざ熱さに耐えるのだ。

なんのために? そりゃあもちろん、カッコイイからに決まってる。

まあ、ついでに癌に効くらしいし、免疫力も上がるらしいし、
瞬間的に「体重」から解放されるからとんでもないリラックス効果が
あったりするらしいけど、そんなのは二の次 三の次だ。

熱々の湯に誰よりも長く入(へぇ)って、
ちょいと小粋な都都逸(どどいつ)口ずさむんでェ、

江戸っ子はヨ。



今時の子供たちは、「100まで数えなさいよ」なんて、言われないんだろうな。

てやんでえ、べらぼうめ。

オメエの血は何色だ。




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