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阿武隈アボリジニー

「なぜ、孫の手トラベルのFoodCampを推すか?」シリーズ13回目。幼少期の話に遡ります。この原体験がきっと今に続いてるに違いないから。

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常備薬は三大薬草酒

 私は、阿武隈高地のほぼ中央、大滝根山の麓で生まれ育ちました。公園など気の利いたものはなく、遊び場は近くの山、畑、小川などでした。祖母が山菜を採りに行くと言えば山にお供し、畑に芋を植えに行くと言えば畑にお供し、イナゴを佃煮にして売るからと言われれば、田んぼでイナゴをたんまり獲ってきて祖母を喜ばせていました。

 末っ子の私が3歳になり、保育園へ預けられるようになると、母は近くの縫製工場へ働きに出るようになりました。保育園には、一緒に暮らしていた祖母がいつもお迎えに来てくれました。

 家に帰ってからも、両親が帰宅するまでは祖母にくっついて、祖母の手仕事を見ていました。繭を茹で、中の蚕さまを取り除き生綿をつくる様子や、着なくなったセーターを解いて毛糸の玉に纏めたり、豆の選別を手伝ったりして遊んでいました。ですから、年齢の割に古いことを知っているねとよく言われますが、多分、それは祖母から受け継いだものが多いからだと思います。

 その代表的なものが薬草酒ではないでしょうか。大正9年生まれの祖母は、同じ町内から嫁いできました。よって、山里の暮らしはお手の物。ほぼ自給自足の生活をしてきた祖母は、なんでも自分たちの手によってまかなっていました。

 鼻水がツルッと垂れたら、寝る前にまたたび酒を飲まされました。お猪口一杯くらいを一気に飲み干します。またたび酒はとても苦く、しかもストレートで飲むのですから、喉から食道を通って胃に到着するのがわかるようでした。次第に身体がホカホカし、夜、汗をかき、翌朝にはすっかり良くなりました。

 野山を駆け回って擦り傷を作ると、オトギリ草の焼酎漬けを手拭いに染み込ませて、患部を消毒してくれました。

 また、子どもの頃から口内炎にしばしば悩まされていた私は、キハダという木の皮を焼酎につけたものを患部に当て処方していました。

 実家には、薬という薬は、正露丸くらいしかなく、それ以外は祖母が仕込んだ薬草酒で、家族みんな対処していました。

 このほかにも、柿の葉を煮出した汁で目を洗うといいとか、祖母の部屋にはその知恵が詰まった様々なギヤマンがありました。体の不調があると、みんな祖母の部屋に行って、症状に見合ったギヤマンを開けてもらうのでした。

薪割り、五右衛門風呂、ボットン便所

 兼業農家だったので、両親は平日は会社勤めをし、土日や平日の早朝に農作業をするという生活でした。

 小学生になると、兄たちは薪割りを仕込まれ、風呂を沸かすのが子どもの仕事でした。我が家は、五右衛門風呂だったので、夕飯ができるまでの間、日替わりで兄弟が火の番や風呂掃除をしていました。

 風呂場とトイレは外にあり、焚き付け小屋からなかなか出でこないと、火遊びしてるか、焚き付けがうまくいってないのかと見に来られました。火遊びするとオネショすると叱られたこともありました。また、焚き付けは豆殻(大豆の鞘を乾燥させたもの)やスギパ(杉の枯れ葉)を使い、だんだんと太い薪をくべるようにとか、空気が通る隙間をあけるようにとか、教えられました。

 トイレは汲み取り式で、3ヶ月に1回は、母が汚物を汲み上げ、庭の先の畑にある肥溜に運んでいました。決まってその日は、母から2つ言付けがありました。一つは、ニオイが入らないよう家の窓を締め切ること、2つ目は作業が終わり次第すぐに母がお風呂に入れるよう、早めにお風呂を沸かしておくことでした。

自家製味噌、梅干し、たくあん、白菜漬け

 農協には、お米だけを出荷していましたが、家で食べる野菜は作っていました。大豆、青豆、黒豆、小豆などの豆類、えごま、赤紫蘇、青紫蘇、白菜、キャベツ、レタス、ブロッコリー、大根、人参、ネギ、玉ねぎ、ジャガイモ、里芋、さつま芋、ゴボウ、トマト、きゅうり、ナス、とうもろこし、苺、西瓜、メロン、ニラ、ニンニクetc.

 庭には、さくらんぼ、杏、枇杷の木があり、果物も美味しそうに色づくのを待ち構えて、近所の子供たちと採って楽しんでいました。

 また、家の土手には梅の木があり、7月は梅干し作りの時期でした。味噌も自家製でしたし、冬場は、たくあんや白菜漬けは大量につくり、桶に入れて土蔵に貯蔵していました。

 味噌が発酵した匂いは大好きなんだけど、味噌豆を作っているときの大豆を蒸した匂いがちょっと苦手。でも、祖母が作ってくれた味噌で作るけんちん汁は抜群に美味しくて、私が最後の晩餐で食べたい一品です。

 こうした暮らしは、私の家だけでなく、農家や古くからこの土地に住んでいた人たちは、だいたい同じで、昭和初期の農村の暮らしがまだ色濃く残っていた山里では、当たり前のことでした。

 そんな私にとって、アウトドアやボーイスカウトでやるようなことは日常だったし、いま流行りのキャンプは、キレイに切り取られた娯楽で、似たようなことをやろうとは思ってもいませんでした。

(つづく)

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