見出し画像

日本の国花、植物の種名 花の名は。Vol.4

日本の国花はサクラ、キク、どちらでしょう? 答えは両方、なんですけど、本稿の主題は別にあります。サクラとキクを事例に、植物の名称と分類上の「階級」について考えてみましょう。分類学でいう「階級」とは、目・科・属・種・変種・品種というようなグルーピングです。

まずはサクラ。和名ですが、サクラに該当する1種の植物はありません。バラ科サクラ属の総称です。以前はバラ科スモモ属サクラ亜属とされていて・・・という話は割愛。サクラ属には約100種があり、そのうち日本に自生している野生種は約10種。「10種」ではなく「約10種」とした訳も・・・割愛。

サクラの代表格にヤマザクラ、ソメイヨシノ、ヤエザクラがあります。ヤマザクラは日本に自生する1つの種です。ソメイヨシノは江戸時代に発見された自然交雑種とされています。独立した種として学名がつけられていますが、「約10種」には含まれていません。ヤエザクラはどうでしょう。実は1つの種ではありません。

すでに、かなり、ややこしいです。

ヤエザクラは主にサトザクラのうち、花びらの数が多いものの総称です。サトザクラとは、人為的に交配されて作られたサクラのことです。膨大な品種があり、一重(花びらが5枚)も八重もあります。代表的なヤエザクラの品種は「関山」です。花びらを塩漬けにして、お祝い事の席で飲用するためにも栽培されている品種です。

サクラについてまとめます。

サクラとは世界に約100種あるバラ科サクラ属の総称、日本にはうち約10種(ヤマザクラなど)が自生。他に自然交雑種(ソメイヨシノなど)や人為的な交配種(サトザクラなど)が多数。サトザクラには一重、八重を含む数百もの品種(「関山」など)があります。

「サクラは何種類ありますか?」という問いに「数百もあります」と答える場合は、品種のレベルで数えていることになります。「(約)10種です」だと日本の自生種になります。

次にキク。これも総称ですが、ほぼ、イエギクと同義で使われています。イエギクは、複数の野生のキクから人工的に交配されて作られた種です。サトザクラと同じ位置付けで膨大な品種があります。大別すると大菊、中菊、小菊など。

イエギクに対してノギク。こちらは野生の菊です。ノギクという和名、当てはまる1つの種どころか、属まで多数にまたがります。どこまでノギクに含まれるのか、専門家の見解すらまちまちです。

日本に自生するノジギクを、ノギクの代表格とすることはできます。対してノコンギク、ヨメナ、ミヤマヨメナ、ハマベノギク、いずれも、いかにもノギクという風情です。しかもこの5種、キク科までは同じながら、属のレベルから異なります(諸説あり)。もう、カオスです。

栽培されているだけでも膨大な植物の名前。その使われ方が統一性がなくややこしい、ということ。この国で誰からも愛されている国花ですら、一筋縄ではないのです。

ヤマザクラ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?