短編小説 「弟君からのメール」
原案・世界設定 Spica Green
造語・用語設定 Google Bard
プロット・構成 Spica Green
初稿執筆 Anthropic Claude
改訂・推敲 OpenAI ChatGPT
加筆・校閲 Spica Green
表紙挿絵 Leonardo.Ai
01
Z-Received by 4002:a05:6512:3b0e:dd5d with SMTP on WLN.Eorz.
Sun,15 Mar 19:55:58 X0044 / Subject : Tomorrow is my exam day.
前略 姉様
いよいよ明日は受験です。少し緊張しています。健康診断で全身スキャンがあるので今夜は飲食禁止です。疲労感があったり、睡眠不足だったり、そんなことが試験に影響するとのことです。体調は万全で望みたいです。体に小さな怪我があったり、虫刺されで痒みを感じていたりするだけでもストレス反応が出るそうなので、ホテルで安静にしています。
明日の朝9時までに領事館へ出頭して、本人確認と受験同意手続をしてから、ドット湾に停泊中の試験船へ移ります。各国を巡回している例の空母みたいな船です。ナ国の戦艦を改造したものという噂は本当みたいです。乗船したら午前中に健康診断を受けて、試験用食というもので昼食を摂ってから、午後からインプリートテストです。全没入式のVRに潜って約8時間行動します。やり取りには母国が選択できるので安心です。仮想世界に設定された課題を解決をすることで、対応能力測定やら適性診断やらがなされるとのこと。ゲームみたいなもののようです。代謝などの身体機能をチェックしながら、遺伝子解析もされるし、IQとEQやCQも測られます。だいたいは事前に聞いていた通りの内容で、筆記試験のようなものは一切ありません。フルダイブしたままVR世界で就寝します。睡眠中にも深層心理だとか人格形成要素だとかを調べるそうです。リアルに戻ってくるのは明後日の朝の予定です。危険はないのでしょうが、仮想世界での行動や反応から自分の特性が評価されるというのは、なんとなく恐ろしい気がします。それでもペーパーテストやAI相手の質疑応答面接なんかに比べれば断然マシでしょう。
ナ国が実験国家としてワ国を建国したのが25年前、科学者やエンジニア、アーティスト、クリエーターといった技能職人材の入植を世界中に募るようになって4年目です。技術立国・人材資源国を謳って大きな発展を遂げているように見えますが、相変わらず三国同盟圏からは出願をする人が少ないようです。試験船では1日に最大8名まで受験できるのに、明日の受験者は僕一人だけです。ワ国への入植はとても魅力的な話だと思うのですが、僕の友人の間でもいまひとつ人気がありませんでした。どこの国でも、老害政治家よりAIのほうがマシと言われる昨今、高度にAI支配された国家体制への嫌悪感はそこまで無いと思いますが、やはり、22歳から25歳までで未婚・単身という条件が厳しいのと、公用語のマトヤコトワの壁がネックになっているのでしょうか。僕も会話には不安を感じています。
試験の結果は明後日には出ます。順位で定員を埋める競争試験ではなく、レベル判定の資格試験なので、競争倍率は関係ないのですが、直近6ヶ月間の合計受験者数は約1500人で、合格率は39%だそうです。考えたくはないけれど、不合格だったら国籍取得費がドカンと戻ってきますから、お土産買って夜行便で帰ります。うまく行けば、すぐに移民船でワ国に向けて出航です。ワ島に着くまでは通信途絶ですので、明後日の夜までに連絡がなければ合格したと思ってください。
ではまた。
02
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Wed,18 Mar 18:46:06 X0044 / Subject : Did it, I passed the exam !
前略 姉様
合格しました。無事にワマ市にある移民局のドミトリーに着きました。ご心配なく。通信プログラムをワ国プロトコルに変更したり、映像送信禁止のパッチを当てたりして、今しがた愛用のμ型タブレットが使えるようになったところです。通信ポイントのAIによって、情報の国外流失が厳重に監視されているのが窺われます。とりあえず、海外宛の初メール送信です。
人選インプリートテストは、噂通りロールプレイングゲームそのままな感じでした。途中からの細かい行動の内容は記憶に残らないようになっているらしく、夢を見ていたような感じです。困っている友達を手助けしていた気がしますが、具体的に何をしたのかは思い出せません。合格発表の後、移民船に乗るまでが大変でした。外貨の持ち込みが無いか荷物を厳しくチェックされ、電子口座の解約確認にもかなり時間がかかりました。船には、先に他の国で受験した合格者が50人ほどいましたが、ドット湾から乗船したのは僕一人だけでした。
ユレ港に着くまで入植地調整が続きました。350万人と聞いていたワ国の人口は増え続けていて、今では500万人に迫る勢いだそうです。国土のワ島はエル海のナ列島南端に位置する2万平方キロメートルの大きな島です。臨海部では人口が過密気味で、内陸や山間部の開発が課題のようです。首都のユレだけでなくテ州は全域で人口調整中で、今年はもう入植できないようです。ソ州も都市部はナ国とその経済同盟国からの移住者優先になっていて、僕には抽選券すら回ってきませんでした。結局、第三次調整まで落とされ続けて、やっとネ州に決まりました。州都のスズ市かその周辺が良かったのですが、そこも外されて、イ郡のワマ市に入植することとなりました。かなり辺境へ飛ばされた感じです。
上陸して先ずインプラント手術を受けました。生体認証マイクロチップを肩へ注射する簡単なものでした。これで僕の個体管理がされることになります。術後の経過観察に1時間ほど待ってから、ネ州へ移送になりました。未来都市のユレを港の周りしか見られなかったのは残念です。初めて乗った自走シャトルは、4人乗り車を独り占めしたのもあって、とても快適でした。ネ州に入ると車窓の景色が一変し、河岸段丘沿いに集落が点在する田園風景が続きます。温暖な気候で雨が少なく、果物のおいしい土地だと聞いています。ネ州では州都にも寄らずにイ郡へ直行でした。ワマ市はイ郡の中心地で人口8万人。山間の盆地に位置する古都です。静かで落ち着いた感じの街で、創作活動に専念するのには良い環境かも知れません。
ワマ市に着くとすぐに移民局へ通されて、生体認証マイクロチップに市民IDが書き込まれました。これが戸籍や住民票になるようです。登録に住所が不要だというのは驚きです。ともかく、これでやっと自由の身になりました。これから数日間は移民局のドミトリーに宿泊します。利用券が与えられているので、ドミトリーにいる限り寝食などには困りません。明日は借家を見に行ってみます。移民局からは公営アパートを勧められましたが、郊外には空き農家もあるそうです。畑付きの一軒家を借りるのも悪くないかも。
ではまた。
03
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Mon,23 Mar 19:55:37 X0044 / Subject : I moved into a public apartment.
前略 姉様
新居は公営アパートに決めました。住所は添付のマップをご覧下さい。町の中心からは外れていますが、移民局や飲食店街にも近い便利なロケーションです。間取りは3DK。建物自体は古そうですが、室内はリフォームがなされています。テーブルやベッドなどの家具、温水器や照明なども揃っていて、当面は不自由なく暮らせそうです。部屋の一つをアトリエとして使うことにします。窓からはオレンジ畑が見えます。西の山脈に沈む夕日が綺麗です。
ワ国は高度AIインフラが全国に敷かれた先進技術国家だと聞いていましたが、辺境のワマ市まで来ると普通に田舎町です。行政機関の窓口はすべてAI端末になっているものの、町の中にロボットワーカーはほとんどいません。未来都市という感じはどこにもありません。市街は閑散とした印象です。商業施設には無人店舗が目立ちます。治安は良さそうです。すべての国民はインプラントされたチップで所在が監視されていますから、犯罪は起きにくいでしょう。大通りまで出ると、自走シャトルや空配便ドローンが行き来していますが、交通量は多くありません。牛が荷車を引いていたりします。道を歩くときは地雷に要注意です。僕は2度も爆死しました。
ユレ港の入国管理局に預けてあった荷物が配送されて着て、やっと引っ越しが終わりました。日中はアパートの整理をして、夜は移民局のドミトリーへ戻って、食事の配給を受けたりバスやランドリーの施設を使ったりしています。嬉しいことに、ここの入浴施設は天然温泉です。食事も美味しいです。ドミトリーに泊まるのも今夜が最後ですが、利用券が残っているので、また温泉に入りに来たいです。
それから、ここのドミトリーもですが、公営アパートもAI管理ハウスではありませんでした。地方都市にそのような物件はまだほとんど無いとのことです。ビデオフォンの使用はAI管理ハウスへ改築されるまで無理で、公営住宅での工事2年後の予定だそうです。郊外に出て農家を借りたら、AI管理ハウスへの改築は絶望的でした。監視AIが入るまで、個人での映像通信もできません。贋画像流布防止は国際法なので仕方ないです。そちらとは時差もあるし、近況報告くらいなら昔ながらのテキストメールでもいいですよね。ノスタルジックでなんとなくレトロスマートだし。
ではまた。
04
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Sat,04 Apr 17:26:19 X0044 / Subject : I joined a craftsman's union.
前略 姉様
工藝組合に加入しました。ワ国内には産業支援組織や技術推進組織と呼ばれる団体がいくつかあって、組合もその類の組織の一つです。正式には「産業技術連合会・工藝職人組合・ネ州イ郡支部」という団体です。イ郡は古くから機織りや染色が盛んな地方で、技能職種としては服飾関係の人が多いと聞いています。僕のような園芸用の陶芸屋は珍しいみたいです。
ワマ市在住の組合員は55名います。そのうち外国人は僕を入れて18名で、皆この2年の間で入植してきた人たちです。三国同盟圏から来た同郷の人はいませんでした。工藝組合にはチューター制度というものがあります。入植者に同業種のアシスタントが一人ついて、生活や仕事でのアドバイスをしてくれます。3歳年上の鋳金士の先輩が僕のチューターです。ワ国生まれでユレから移住してきた人です。ユレには歳の離れた9人もの弟妹がいるそうです。ムーグーチルドレンと呼ばれる子供達だとか。あまり、というか、まったくもって都会的な感じがしない気さくな兄貴肌な感じの人です。彼も金属器で鉢モノを作ることがあり、植木鉢を作る僕とは造形のカテゴリが近く、デザインのことなども相談にのってもらえそうです。
心配していたマトヤコトワですが、組合から借りている同時通訳デバイスのおかげで、日常会話に困ることはほとんどありません。仕事などの技術的な会話は完璧に訳せています。僕が知らない言葉には解説まで付きます。方言にはときどき誤訳が混ざって笑いを誘います。会話にインターバルがあると、デバイスが対訳でリピートしてきます。外国語会話のレッスンを受けているかのような感覚です。対話の記録が残っていて後からスキット練習をすることもできます。デバイスに付属しているビジョントランスレータも優秀です。どんな言語で書かれた文字でもゴーグル越しに母国語で読むことができます。
ワ国ではオンラインで閲覧できるアーカイブコンテンツが充実していますが、工藝組合には、昔ながらの図書室もあります。ここでディスクメディアの盤本と綴じてある紙本を読むことができます。陶磁器、糸、布、紙などについて、何百年も前の古式技法の記録があります。とても興味深いです。盤本をリーダーで再生するのは初体験でした。これまたレトロスマートです。勉強することがいっぱいあって学生の頃に戻った気分です。
ではまた。
05
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Thu,09 Apr 23:36:22 X0044 / Subject : I started receiving basic income.
前略 姉様
基礎生活保障の自動支給が今週から始まりました。ワ国では年齢、性別、人種、職業、資産などを一切問わずに、すべての国民にベーシックインカムが一律で支給されます。この社会保障制度の話は聞いていましたが、これから毎週月曜日、僕にも5万イーゼが送金されてくると思うと、なんとも不思議な感覚です。もちろん、嬉しいのはうれしいのですが、どこか後ろめたさのようなものを感じてしまいます。
イーゼとリーメというのがワ国で使われる公式の電子マネーの単位になります。合わせてリーゼと呼ぶこともあります。なぜかイーメとは言わないみたいです。聞き取りにくくて紛らわしいです。二つの単位があるのですが、区別についてはまだよく分かっていません。周りの人はどちらでもいいような言い方をしています。
アパートの家賃と入植者保険料を合わせた1万イーゼが天引きされていますので、僕の実際の手取りは毎週4万になります。AI管理ハウスではない公営住宅とはいえ、家具や家電製品を備え、光熱費の基本料金も込みで、これだけの家賃というのは驚きの安さです。しかも疾病傷害保険がついているのですから。この調子だと、永住権と国籍取得にワ国へ支払った500万ギルの元はすぐに取れそうな感じです。移民促進政策のおかげなのでしょう。入植者への厚遇がいろいろなところで感じられます。ワ国は、「世界中から技能職者を集めて人材資源立国とする」という国策を標榜していますが、ただならぬ本気度を感じます。実験国家ってすごいと思います。
支給は、僕の基礎生活を維持するのに十分過ぎる額です。そちらでよく食べていたバーガーがここにもあります。似ているけどビミョーに違っていて、不思議な味の柑橘のソースが付いています。ビッグサイズが600イーゼで買えます。価格には20%の消費税が含まれています。日用品や食べ物の物価感覚は三国同盟圏の都市部に近いです。お酒と家電品などの耐久消費財は、こちらの方がやや安い印象です。工藝組合内にはショップがあって、組合員の作品が売られています。職人の組織ですから、造形のレベルはどれも相当に高いです。日用雑貨に混ざって、アート作品や技巧を凝らした調度品なども売られています。日用品はともかく、美術工藝品が安過ぎるように思えます。田舎だからこんな価格設定になるのでしょうか。人口の少ない町ですから、薄利多売を狙っているわけでもないでしょうに。倍くらいの値段設定をしても十分に売れそうな品がいくつかあります。ユレなどの大都市で売ったら喜ばれるだろうと思います。三国同盟圏に輸出したらきっと儲かります。
ではまた。
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Mon,27 Apr 20:13:37 X0044 / Subject : Possession tax is terrible.
前略 姉様
基礎生活保障の支給を受け始めて4週目です。贅沢をしなければ、毎週1万イーゼ近くは残りそうな気がしています。
ワ国の経済は全てが電子マネーに一本化されています。銀行などの預金機構は存在せず、貨幣の所持も禁止されています。「お金」は数値として、インプラントチップの個体認証と連動した僕専用のマネーデバイスの中でしか見ることがありません。パネルに表示されている数字が僕の金銭資産の全てです。買物をすれば残金が減りますが、新しい週になるとベーシックインカムの支給でイーゼの値が戻ります。マネーデバイスは魔法の財布です。支給から1週間が経つと、所持しているイーゼは全てリーメに自動で変換されます。イーゼとリーメの変換レートは1対1なので単位が変わるだけです。ところが、リーメには1%の所持税がかかり、24時間ごとに自動徴収され続けます。リーメの欄の数字が毎日減っていきます。69日後には持っていた貯金残高が約半分になってしまう計算です。「お金を使わないと罰金」みたいな制度に僕は不条理を感じます。
ワ国の人々は所持税にすっかり慣れ親しんでいて、税制に不満を抱いている様子はありません。むしろ、貯蓄することを古い因習とみなして軽蔑しています。それよりも進歩的な消費を重視する考え方のようです。政府も「使わないマネーは国へ返してもらう」というスタンスです。人口で単純計算すれば、基礎生活保障の総額は年間13兆イーゼにもなります。このうちどれだけが所持税で回収されたり消費税で徴収されたりしているのでしょう。この国の新体制に憬れて移住してきたという面は僕にもありますが、それでも、実験国家の経済というのは本当に不思議です。たくさん配ってその分余計に吸い取っている。そんな印象です。
もしも毎週の支給から1万リーメずつ残せたら、所持税を毎日徴収されても、1年で13万リーメを貯めることができます。しかし、52万も積み立てたのに、利息がついて増えるどころか、39万も目減りするのですから、やりきれないです。貯金するのが馬鹿らしくなってしまいます。それならば、必要な物資を買いだめして、モノで蓄えるのが良いのかもと思いましたが、それも結局は将来に備えようとする心理です。それはそれで浅ましいような気がしてしまいます。「オサガトレシル」と言うらしいです。そんな不安を無くそうとしている社会が、実験国家の基礎生活保障制度なんですよね。「進歩的な消費」についてもっとしっかり考えねばなりません。
ではまた。
07
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Sat,07 May 21:18:21 X0044 / Subject : Reuse Banks are very convenient.
前略 姉様
移住してちょうど50日です。こちらの生活にも慣れてきました。通訳デバイスを介さずに会話することも増えてきました。不思議な柑橘味のソースもクセになる美味しさで、大好きになりました。レモマヨと言います。移民局前の広場で朝市をやっていて、そこの無人屋台でチョーロという揚げた塩パンを売っています。レモマヨがよく合います。朝ごはんにもってこいです。2本のチョーロとコーヒーのセットが360リーメです。工藝組合へ出る日は必ずこれを買って行きます。
先日、チューターの先輩に案内してもらいリユースバンクへ行ってきました。国営のサービスで全国に窓口があるそうです。端末から様々な中古品のデータが検索でき、取り寄せることができます。不用品の販売を申込むこともできます。日用品から仕事に使う特殊工具、各種のコンテンツ、ロボット、医薬品、素材全般、民藝品や保存食まで、5000万点を超える商品登録があります。AIが品質チェックや適性価格管理をしています。どの商品を見てもリーズナブルな値段設定でとても魅力的です。自作物を競売方式で販売するコーナーも近々開設される予定です。そちらも使えそうです。
品物について端末からAIに質問することもできます。商品に関する問い合わせだけでなく、こちらのやりたいことを伝えると、予算に応じて購入物品のアドバイスをしてくれたりもします。工藝組合でレンタルできる汎用アシストアームがあります。製作の補助にも家事手伝いにも使えるので、家に置きたいと思っていました。制御デバイスとして僕のタブレットが利用できるか問い合わせると、μ型に対応したインテリジェントアダプタでの接続を提案してきました。格安だったのでダメモトで即注文しました。 端末には「4日待ち」 と表示されていましたが、翌日にはほぼ新品に見える商品が届き、問題なく動作しています。キッチンにセットしたアームがお茶を入れてくれたり食事を作ってくれたりするようになりました。公営アパートがAI管理ハウスになれば、リユースバンクもAIアドバイスも自宅から利用可能になります。2年後が待ち遠しいです。
便利なワ国ですが、海外の商品を入手するのは簡単ではありません。ワ国は宗主国のナ国を経由して海外貿易を行っていて、直接の取引が禁止されています。輸入品は郡の貿易管理センターで購入手続をすることになります。その方法は複雑ですし、時間も費用もかかります。リユースバンクを探せば中古の輸入品を見つけることも稀にありますが、そもそも外国製品の出品数が少なく、最新のものはほとんど登録がありません。実験国家のワ国は国際為替協定などからも外れています。島国として素晴らしい国内経済圏を作り出していますが、世界経済の中では問題も多く、経済鎖国とも言われています。一長一短はあるものですね。「エイラヤワラエルヤ」と言うらしいです。
ではまた。
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Fri,22 May 14:19:30 X0044 / Subject : When in Rome, do as the Romans do.
前略 姉様
ワ国の暮らしは快適です。異国に移住して定職にも付いていませんが、お金の心配をすることがほとんどありません。作品の販売はまだ始めていません。工藝組合のショップで売られている他のアート作品を見ていると、自分のものを並べて売るのが恥ずかしいです。もっとクオリティを上げてからじゃないとマズイ気がしてきます。生活費に困らないと、自分の仕事の質を見直す方に意識が向きます。商売感覚が薄れて、なんだかパトロンに養ってもらっているゲージツカにでもなったような気分です。
リーメになったマネーは所持税で毎日少しずつ目減りします。分かってはいても数字を見るのは精神衛生にとても悪いです。特にマネーをまったく使わなかった日、所持税を引かれ、午前零時にマネーデバイスの数値が変わる瞬間を目撃したりすると、貧乏性なのか、なんでもいいから買っておけば良かったと思わずにはいられません。ほんとうに勘弁して欲しいです。とにかくリーメは早めに消費するのが一番だと考え、日頃からお世話になっている工藝組合に寄付を申し出ました。5万リーゼくらいのつもりでした。ところが、組合ではマネーによる寄付は受け取れない規則だと断られてしまいました。組合員の個人間でも寄付金や謝礼金のやり取りは禁止されていました。これは組合に限らず市民にも共通の感覚としてあるようです。お金で謝意を示すのはモラルに反することのようです。
工藝組合としては、組合員が共用を望むモノであれば寄贈を認めるとのことでした。個人所有の物品をシェアリングすることも歓迎するとのこと。チューターの先輩からは、この国の価値観についてもアドバイスされました。マネーをもったいないと思うより、活用できないモノをもったいないと考えること。惜しむべきは活用機会だということ。消費よりも創造を重視すること。それこそが進歩的経済観念の核心なのだそうです。他人に感謝してお礼をするような場合でも、あまりマネーが表に出るのは望ましくないとのこと。そういう点では、ワ国の人々に少々エリート意識のようなものがあって、旧態依然とした「お金」の使い方を見下したりすることもあるのだとか。謝金とか返礼金とかは好まれないらしいです。賠償金や罰金はあるので、謝礼にお金をうけとると、それを連想してしまうようです。外国人移住者は気をつけなければなりません。「ゴウイニバレシゴウエニタガエ」と言う教えもあるらしいです。
僕も自分の求めるものを買うことが第一と考え直し、新しい道具を揃えることにしました。焼き物の粘土を3Dプリントできる装置について興味があります。リユースバンクで調べてみようと思います。この種の機械があれば造形の自由度が飛躍的に向上します。いろいろアイデアも湧いてきて、なんだかワクワクしてきます。少しだけ「進歩的な消費」の意味がわかったような気がします。「トラトタヌキノワカヨウザン」という戒めもあるらしいのですが。
ではまた。
09
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Sat,06 Jun 23:09:51 X0044 / Subject : Borrowing money to make purchases
前略 姉様
思い切って粘土3Dプリンタを購入しました。リユースバンクの中古品です。30万リーメは高い買物でしたが、新品の半額以下という誘惑に負けてしまいました。イーゼは支給単位で、消費単位をリーメと呼ぶのが慣例だそうです。リーメとイーゼを区別せず、商品の価格をリーゼで表したりもするようです。ワ国では必要な物はためらわずに購入し、すぐに活用することが奨励されています。倹約して貯金して、それから買うという発想は旧時代的とみなされます。チューターの先輩に言わせれば、生活を切り詰めてマネーを貯めている間は富を産んでいない、そのことを自覚し反省しないといけないのだそうです。人生の時間は買い戻せない。基礎生活保障はそのためにあるとのこと。なかなかに進歩的です。
手持ちのリーメから10万を使い、不足分はローンを組みました。僕のこれまでの消費行動をもとに、適切な返済プランをリユースバンクのAIが提案してくれました。週5000イーゼずつ40週間で返済します。次週のベーシックインカムから天引きになります。驚いたことに、AIの返済プランに従う限りローンには利子が付きません。貸付上限などもAIが審査します。ちなみに、現在の僕は最大貸付額が50万イーゼで、最長で10年の返済期間が設定できます。これは経済活動や日々の消費行動で変わるもののようです。審査があるとは言え、借りるだけ得な制度に思えます。だとしたら誰が損しているのだろう?
ローンで買い物をすると、ワ国では人々の消費に対する考え方が大きく異なることを実感します。僕たちは、どうしても借金に罪悪感のようなものを覚えてしまいますが、ここでは借金をすることに抵抗がなく、それよりも自身の活動がお金で制約されることを嫌う感覚が根付いているようです。これまた進歩的です。
3Dプリンタは注文して3日後には届きました。モデリングが楽しくて寝不足気味です。細かい網状の側面がスパイラルになって波打っている形とか、従来の方法では考えられない造形ができます。焼き物作りに新しい可能性が広がります。μ型タブレット対応のインテリジェントアダプタが3Dプリンタにも使うことができて重宝しています。まさかAIがこの工作機器の購入までも予測していた、なんてことはないですよね。
ではまた。
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Tue,23 Jun 20:50:13 X0044 / Subject : I visited the exhibition abroad.
前略 姉様
今週、工藝組合の海外研修会にお供して、2泊3日でナ国へ行ってきました。ソ州のソト港とナ国の貿易特区アデラを9時間ほどで結ぶ高速艇の国際航路があリます。組合では少なくとも年に3回、ナ国への研修旅行があるそうです。今回は展覧会の見学でした。技術立国だけあって、様々な分野のエキシビションが定期的に開かれているようです。アデラにはナ国・ワ国最大の見本市展示場があります。印象的だったのは、炭酸カルシウムを原材料にした新素材のブース。いくつかの企業が出展していて、紙のように薄くしたり、糸のように細くしたりして作った新造形物を見ることができました。純白のオブジェはため息が出るほどに美しかったです。粘土3Dプリンタを購入したばかりですが、もう古い技術になりつつあるのかもと一抹の不安を覚えました。でも、新しい技術や未知の素材の造形に触れられて刺激になりました。
研修費は全額ローンで調達でき、10週分割払いでベーシックインカムから天引きされることになりました。これもAIが提案した返済プランです。基礎生活保障で固定給があるし利息も付かないとなると、心理的にとても楽です。しばらくは週給の手取りが27000イーゼになります。節約生活します。
ワ国外に出るとマネーデバイスが凍結されて、リーゼは一切使えず「イチナンモシ」と呼ばれる状態になります。その間は所持税が免除され、1週間以上出国するとベーシックインカムも止まるようです。以前はこのシステムを悪用して脱税をする人がいたらしいですが、今は取締りが厳しく不正はほとんどないそうです。海外に出るときはナ国の国債を買って、旅行中はそれを換金して使うのが一般的です。トラベラーズ国債と呼ばれています。逆に、海外からワ国へ来る場合は、原則ナ国経由での入国に限られます。所持外貨の全てがナ国で一時預かりとなって凍結され、ワ国内での滞在費は、生体認証連動のマネーデバイスに事前チャージしたリーメのみが使えます。旅行者にも所持税はかかリます。ワ国は旅行で訪れるのも大変に敷居が高い国です。鎖国なんて揶揄されているのは、このあたりのことが理由かと思われます。
ナ国での滞在費は、組合が事前購入してあったトラベラーズ国債で立替えてくれていて、帰国後の精算となりました。「お金を持つ必要がない」とまで言うと大袈裟ですが、「お金に変な心配をする必要がない」とは言えます。ワ国の社会環境は人の可能性を広げてくれるように思えます。やりたいことに前向きになれるというのは幸せなことです。
ではまた。
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Wed,08 Jul 17:07:33 X0044 / Subject : We prayed to the galactic weaver.
前略 姉様
昨夜はキッコーデンというお祭りに行ってきました。夜店も出ていて楽しかったです。レモマヨのタコ焼きと冷えたエールが最高でした。
ワマ市の北、中央高地のトト渓谷を最深部までのぼるとナナの神殿があります。毎年そこで神事が催されます。2千年以上の歴史があり、もともとは女性が機織りなどの手仕事の上達を願って、天に祈りを捧げたものだったそうです。今ではジェンダーに関係なく、仕事や学業、調理や芸術まで技能全般の向上をお祈りしています。恋愛成就を祈願する人もいます。鍾乳洞が神殿になっていて、湧水でできた池に祭壇が祀られています。カミノキという植物の葉に自分の仕事に関係する物を刺して池から川へ流して技巧の上達を祈ります。「ホーネミーヒ アルテスダミーヒ ポテスタテムクレーア レプルクリトデーネム」と経を唱えます。マトヤコトワとは音も語感もずいぶん違っています。「我の技巧を磨きて美しきものを創る力を授け給え」という意味らしいです。僕も粘土ベラを刺して流しました。
お祭りには工藝組合の人たちも大勢が来ていて、みんなが真剣な表情でお祈りをしていました。工藝技能職集団として、ワ国の保護下で恵まれた暮らしを約束されていてなお、クリエーターとしての技能向上を真摯に願って祈る姿は、同業者の僕から見ても、なにか胸に熱くなるものを感じます。チューター先輩が言うには、そういう性格の人間が選ばれてワ国に集められているのだそうです。第一次産業、第二次産業、科学研究、技術開発、工藝、アートなどのクリエーター部門、これら広い意味で作り出すポジションがワ国の役割。その一方で、第三次産業、金融、流通、貿易、特許権運用など、ワ国が作ったものを活用して利益を上げるのがナ国の役割。このような棲み分け効果の実証実験をやっているのが現体制で、僕らはそのモルモットなんだとか。
実験国家で暮らしている僕らがモルモットであることは否定できません。それでも、僕はこの国のシステムをとても肯定的に受けとめています。むしろ絶賛評価したいくらいです。最初の頃には所持税に理不尽さを感じていましたが、それも無くなりました。必要な時に使えて、足りなければ借りられ、持っていると目減りするマネー。これは価値交換のための媒介であって財産ではない。周りの人がいつも言っていることが実感できてきました。取引の単位として使う数値に過ぎないと割り切れば、この国のシステムは、マネーというツールを賢く使う工夫を生み出しているようにも感じます。経済学には疎いので専門的なことは分かりませんが、お金が人を縛らない社会は素敵です。そして、祈るのが自身の技術向上なら悪くはないでしょう。
天の川を見ながらそんなことを考えました。酔ってましたけど。
ではまた。
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Sat,25 Jul 18:47:30 X0044 / Subject : Equipment sharing was proposed.
前略 姉様
このところ、自分の作品のクオリティアップに取り組んでいたのですが、いまひとつ細部の作り込みが物足りません。彫刻に関しては技量不足を痛感しています。アデラで見た炭酸カルシウム造形ほどではないにせよ、工藝組合のショップで売られている他の作品に劣らないレベルにはなりたいです。他人と比較ばかりしても仕方ないのは承知していますが、やはり売り物にする以上は自信作でなければ。そんなことを思いつつ、ちょっと悩んでおりました。
そんな折、組合から中古の3D切削加工機のシェアリングが案内されました。書類上の持ち主は工藝組合員OBですが、僕の家のアトリエに置いて運用することになりました。前にシェアリングしていたヘビーユーザーが亡くなって利用頻度が減ってしまったものらしいです。3ヶ月間使わず放置していたら、AIがシェアリングする新しいユーザーとして、僕を推薦してきたとのこと。どういうルートでそういう情報が繋がるのか本当に謎です。確かに、3D切削加工機というのは、僕にとっては、あればとても嬉しい機械です。 これを使えば、3Dプリンタで出力した粘土を削ったり、追加のプリントを重ねたりが同時にできるようになります。作品の自由度がグンと広がりそうです。即シェアリングを了承しました。もう古い機械なのでシェアリングでの使用料はゼロ。設置・保管場所を提供し、メンテナンスをすることが条件です。本当に有り難いことです。こういうラッキーを「タワリフニネ」と言うのだそうです。
ワ国では、共有経済観念とでも呼ぶべきものが一般化していて、所有よりもシェアが推奨され好まれる傾向があります。リーメ所持税の「使わないのなら国へ返して」という考え方に似ています。所有物についても、「使わないなら」もったいないので、「使って下さい」とか「使わせて下さい」というやりとりが普通に起こる社会です。持ち物を使わないで遊ばせているより、使う方が良いに決まっています。物は使うためにあるのですから、アタリマエと言えばあたりまえのことです。僕もこの機械を大切に使い、3D粘土プリンタなども他の作家とシェアしながら、創作に役立てていきたいと考えています。
ワ国には謎な点も多々ありますが、僕には素敵な社会システムに思えます。 AI管理社会が怖いという話もよく耳にはしますが、それは悪事を働くからです。個人に向けられたお勧めの提案なんかは、善良な市民には便利この上ないって感じです。
それから、姉様のおっしゃる通り、神事で使っていた葉っぱ。カミノキは聞き間違いで、正しくはカジノキでした。さすがは植物学者ですね。
ではまた。
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Tue,11 Aug 22:38:30 X0044 / Subject : Re: I have some concerns.
前略 姉様
この前のメールで姉様がおっしゃっていたような話。ベーシックインカムがあって生活保障されると労働意欲が失われる危険性。リユースやシェアリングの意志が高く、所有欲が乏しい社会でイノベーションの動機が薄れる問題。人々が安寧に甘んじて無気力化するのではないかという懸念。いずれも、人間の欲望駆動系が緩むことの弊害です。
あれから少し意識して周囲を観察するようにもなったのですが、僕の目から見る限り、ワ国にそのようなことはほとんど起きていないように思います。むしろ、これまでの人生で僕が出会ってきた人々の中で、最も創造的で活動的に暮らしているのが、この国の人のように思えます。僕がつき合う人は工藝組合のメンバーがほとんどなので、もともとモチベーションの高い人々なのかも知れませんが。また、入植者については、人選審査されていますから、適性者としてそういった傾向に偏っていることも考えられます。それでも、ワ国に来てから、仕事を嘆き憂鬱を訴えている人を一度も見たことがありません。これとは別に、仕事上の問題に直面して、アチャァーってなって頭を抱えているのは工藝者によく見る光景ですけれど。
チューター先輩の話では、10年くらい前までは、経済活動の意欲低下という社会問題が確かにあって、過剰な消費で贅沢三昧したり、賭け事に走ったりした人もいたとのことです。しかし、そういった人々はだんだん減って、結局、何かの行動目的を見つけるようになったらしいのです。また、基礎生活保障には少子化対策も期待されていましたが、子だくさんで高額支給を受けて富裕層になろうという人も昔話になっていて、今ではほとんどいないようです。実は、先輩のご両親がその昔の富裕層にあたるのだそうです。先輩に弟さんや妹さんが9人もいるのは、基礎生活保障を大家族で受けようとした結果だとか。親がそういう考えで産んだ子供達はムーグーチルドレンと呼ばれ、ワ国の建国から数年の間だけですが、小さなベビーブームを引き起こしたらしいです。
ベーシックインカムの支給や電子マネーとその所持税制度。一見すれば共産的とも取れるシステムですが、ワ国の技術開発力を下げることなく、人々の労働や創造の意欲や動機を高いレベルで保ち、ともすれば、より大きく伸ばしているかのようにも感じます。工藝組合でも、日々様々な技術やアイデアが検討され、それらを共有したり、協力したり、競争したりして活動しています。創作に対して無気力になっているような印象は全くありません。また、報酬のためだけに我慢して労働する人も少ないように見えます。この先、ロボットの普及がもっと進めば、人間は自分が望まない労働から完全に解放されるでしょう。それは理想社会に思えます。僕も創作を通じて、自分の表現や感性をもっと発揮していきたいと、前より強く願うようになりました。暮らしにかかるコスト、そのような事に煩わされないのが影響しているような気がします。
時間がかかりましたが、ようやく作品が仕上がりました。山野草を育てるテーブルプランターの鉢です。近々に販売開始です。「マンジオシテ」と言うらしいです。
ではまた。
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Fri,28 Aug 19:09:26 X0044 / Subject : I thought about profit margin.
前略 姉様
例のテーブルプランター。工藝組合のショップにて販売を始めました。自然の風景をイメージして土の質感や色彩にこだわりました。自信作です。時間をかけて手直しを重ねただけあって、自分で言うのも変ですが、あの陳列棚にあってもヒケを取っていません。「マエミテソ」と言うそうです。
ところが、出品登録をするとき、AIが適正価格審査を行って、設定しようとしていた価格を却下してきました。 僕としてはさんざん悩んだ末に、アート商品としての価値に見合った12000リーゼという価格をつけたつもりでした。ところが、AIは原材料費の内訳やら、加工コスト、投下労働時間などを推定し、そこへたった18%の利益率で計算した利得分を上乗せして、消費税込みの8500リーゼが適性販売価格だと言い張ります。ショックです。しかも、AIの推定値はどれもかなり正確で、僕の仕事の内実に肉薄していました。これまた別の意味でショックです。
どうやら利益率は15%が推奨されているようです。納得がいかない数値です。さらに、利益率が消費税率の20%を超えると過剰利得価格、10%まで利益率を下げると過小利得価格というフラグが立って、これが消費者にも見える仕組みになっているようです。高すぎる儲けすぎの商品、安すぎるワケアリ商品、そうは言っていませんが、そういう印象をきっと与えるだろうレッテルが貼られるわけです。適性価格のフラグがないと売れないのは目に見えているでしょう。こうなると、最大でも利益率20%に甘んじるしか無いです。国の消費税より儲けてはいけないと言うのにはちょっとムカつきますが、でも、基礎生活保障の支給を受けてるんですよね。文句は言えませんか。
他の組合員が売っている作品が安すぎるように思えたのは、これが理由だったのですね。結局、仕方なく、AIの提案した価格に従って、それでもわずかに色を付けて、8600リーゼでの販売に決めました。なんとか適性価格帯のフラグが付いたので良しとします。「ゴウイニイタリテゴウイニシタガエ」と言うらしいです。 今回のは試験販売のつもりで1ロットを製作しただけでした。在庫数は20個です。 まぁ売れなければ売れないで、それほど困らないけれど、まったく売れないのもへこみそうです。
ではまた。
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Fri,11 Sep 18:24:56 X0044 / Subject : Personal import was very troublesome.
前略 姉様
テーブルプランター、めでたく完売しました。行商人さんにまとめ買いしてもらったようです。15万リーメ。僕の労働の初報酬です。個人報酬はイーゼでなくリーメで送金されることを今まで知りませんでした。嬉しいことに、その後問い合わせもあって、もう2ロットを追加製作しました。ところが、太陽光炉で焼ける低温硬化タイプの粘土。入植時に持ってきた分をほとんど使い切ってしまいました。こちらで購入しようとしたら、国内での販売がなくて、個人輸入をしたのですが、その際に面倒な手続きがあって大変でした。ワ国の経済鎖国。身にしみて実感できました。
ワ国からは海外へマネーを直接送金するルートがありません。海外の相手に支払いをするためには、まず、ワ国のリーゼ払いでナ国の国債を購入する必要があります。ここまではワマ市でも可能です。しかし、購入の額や目的などに審査があります。利殖や蓄財は許されません。また購入した国債は換金してリーゼに戻すことができません。しかも、ワ国民が買うナ国債には有効期限まで付いています。酷い扱いに思えます。この国債はナ国通貨のエーヌには交換ができますが、交換のためにはワ国を出てナ国へ行くか、国債をナ国へ送るかする必要があります。ナ国のエーヌはナ国内で使用できますし、通常の国際為替協定にしたがったレートで海外と通商取引することも可能です。しかし、ワ国内では外貨となるのでエーヌを使うことはできません。所持すら禁止です。個人輸入で物を買うときは、このルートで換金されたエーヌで輸入商品の代金を支払います。これに則らないと密輸扱いになり罪に問われます。購入した国債を渡して、一連の手続きを郡の貿易管理センターに代行してもらうことができるのですが、そこでもまた手数料がかかります。しかも、窓口まで出向いて対面の質疑審査を受けなくてはなりません。結局、粘土が届くまで、この先2週間は待たされる見込です。けっこう高くもついています。材料費にここまではかけられません。
ナ国は国債からのエーヌ変換手数料分を儲けています。決して安くはない関税みたいなものです。さらに、ワ国が宗主国の借金を国債という形で一方的に押し付けられてもいます。この関係だけを見ると宗主国が属国から搾取しているように見えます。一方で、ナ国は、世界の他の国からのワ国への干渉を食い止めて保護しています。基礎生活保障の財源の不足分を補填してくれてもいます。国民の間では、ワ国とナ国の損得問題がときどき話題にあがります。僕の理解では追いつけなくなりますが、それでも、こうしたシステムのバランスの上で実験国家が成り立っているらしいということくらいは分かります。
工藝組合のナ国研修旅行は、海外物資の買付も目的の一つだったようです。年3回も定期的にナ国研修へ出向く理由が分かりました。本人がナ国に行ってエーヌで買い物するなら、事前に国債さえ買っておけばよく、煩わしい手続きはそこだけで済みます。国債は工藝組合に申し込んで研修前に一括購入してもらえます。1ヶ月後にはまた海外研修がある予定です。今度は必ず粘土を仕入れてきます。もう個人での輸入手続きはこりごりです。
ではまた。
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Z-Received by 4002:a05:6512:3b0e:dd5d with SMTP on WLN.Eorz.
Fri,02 Oct 16:49:08 X0044 / Subject : Is it an unknown experimental nation?
前略 姉様
新しい移住者が工藝組合に加入してきました。ナ国のツヒデ研究特区の出身で、漆宝という昔の技法でアクセサリーを作る魅力的な職人さんです。もとはAIコーディネーターだったというエンジニアで異色の経歴の人です。同じ歳ということもあって仲良しになりました。僕のアトリエの3Dプリンタと切削加工機を彼女ともシェアリングすることにしました。僕のチューターの先輩が彼女のチューターも兼任することになり、3人でよく一緒に食事をします。ユレ出身の先輩とナ国出身の彼女が両国の社会問題などについてよく議論をします。それは僕にとっても大変に興味深い内容です。さすがに、この二人のネイティブのマトヤコトワは翻訳デバイス無しではとてもついていけません。
彼女の話では、ナ国でもワ国の社会制度への関心が高まってきていて、移住志願者が急増しているそうです。海外からの入植よりもナ国民を優先すべきだと言う声がある一方で、ワ国のような経済システムの実験に反対する意見も根強く、賛否の対立が続いているとのことでした。政府の中にも賛成派と反対派がいて長期的な方針が定まらないようです。僕自身はワ国で暮らしてみて、これまでのところ、輸入品の購入を除けば、実験国家に不都合を感じたことはありません。むしろメリットの方が大きいと思っています。ただし、僕が目にする範囲は限られているので、全体を俯瞰的に判断するのは難しい面もあるでしょう。ナ国とワ国の損得の関係もあります。両国の人々が納得のいく選択をすることが一番だと思いますが、ワ国の経済システムは無くならないで欲しいです。
僕たちの三国同盟圏では、ワ国の経済システムを話題にすることがあまりなかった気がします。自由主義と社会保障が両立した住みやすい国。移住者を世界から募っている実験国家。高度にAI技術が進んだシンギュラリティに最も近い国。そんな表面的なイメージでした。映像で見ていた未来都市ユレ・キャピタルの印象そのものです。僕もそれに憬れて移住を決めました。でも、実際住んでいるのは辺境のワマ市ですがね。
諸外国をよく旅していて様々なことに見識が深い姉様が僕の話を面白がってくれるほど、ワ国の実情というのは海外から見えにくいということでしょうか。なんとなくですが、海外からは謎の国家とみられていることをワ国の人も承知しているようです。でも、こちらの人々が特に国内のことを秘密にしているという印象はありません。僕たち外国人に何かを隠しているようなことがあるとも感じません。きっと、この国のシステムに警戒感がある他国の側が、あまり触れたがらない、積極的に報道しようとしない、ということなのではないかと考えられます。他国の政府としては、やはり、基礎生活保障を継続的に支給しているベーシックインカム制度と所持税の件がネックなのでしょう。それが成功しているという事実は、お金持ちの人達にとって愉快ではないだろうと思います。
ではまた。
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Z-Received by 4002:a05:6512:3b0e:dd5d with SMTP on WLN.Eorz.
Wed,21 Oct 22:01:23 X0044 / Subject : We went abroad for training again.
前略 姉様
ナ国へ再び研修に行って参りました。2泊3日の日程でツヒデ研究特区の学園都市を訪ねました。AI技術による模倣生産プラントを見学し、開発状況や今後の展望などについて講義を受けました。もうかなりのことが実現できていて驚きました。実物さえあれば、内部構造や生産手法が違っていても、外観や機能をコピーして、同様に使うことのできる模倣品を量産することが可能です。デモで見たのは、ワ国のソ州で開発されたという超低燃費のドローン輸送機。これをAIが解析して、同等の燃費で飛ぶ模倣機を作り出した事例でした。模倣生産品はやや劣化版のようにも見えましたが、形状だけでなく、軽合金素材、モーターの機構、制御プログラムまでもが模倣されています。研究や開発に費やされた苦労を思うと、複雑な気持ちになります。これもシンギュラリティの成果だそうです。恐ろしい感じがします。
ツヒデは漆宝職人の彼女の出身地です。彼女は、先月まで住んでいた所にわざわざ研修で行くのもどうだかなんて難色を示していましたが、先輩と僕とで無理やり同行させ、飲食店などの案内をさせました。地元人ガイドがいると海外旅行の楽しさがグッと増しますね。食べ物にハズレがなくていいです。
ナ国でみる工業製品などには、ワ国で開発された部分が数多く含まれていることを彼女に教えてもらいました。意匠やデザインにも同じことが言えるそうです。もうすでに、ワ国で作り出されたものの模倣品や量産品がナ国や海外で売られているようです。今後ますます加速するだろうとの見通しです。それらの利用権や特許権はナ国が管理しています。ワ国は直接の国際貿易ルートを持たず、ナ国に囲い込まれています。このテクノロック政策には、ワ国の技術開発成果などの創造物が外部へ流出するのを防止する狙いがあるようです。大雑把に言えば、ワ国とナ国は工場と販売店の関係なのだそうです。
今回の旅行にはトラベラーズ国債を準備して行きました。粘土も通販で注文してワマに配送の手配をしてきました。ナ国で購入すれば簡単で安いです。帰国時にナ国通貨のエーヌが少し余ったのですが、彼女が面白い自動販売機を教えてくれて、それに使い切りました。チャガ・カプセルと呼ばれる抽選式購入の玩具です。料金を支払ってハンドルをまわすとカプセルが出てくるのですが、中身は買って開けてみるまで分かりません。僕が買った3つのカプセルは、女性用の下着、石のキーホルダー、本物と見間違えそうな目玉焼きの置物でした。石のキーホルダーは指で弾くと、高く透き通った音が長く鳴り続ける不思議なもので、レアアイテムらしいです。下着と目玉焼きは彼女にあげました。キーホルダーとの交換を求めてきましたが却下しました。
楽しい定期研修旅行でした。粘土もしっかり買い付けてきました。次回は来年の2月の予定です。
ではまた。
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Z-Received by 4002:a05:6512:3b0e:dd5d with SMTP on WLN.Eorz.
Fri,13 Nov 23:46:15 X0044 / Subject : TechboLock plan is difficult for me.
前略 姉様
常々、チューター先輩はナ国に対して好意的です。ナ・ワ損得問題では、実験国家の運営に宗主国が援助していて、ワ国の方が得をしているという捉え方です。現状では、ナ国はワ国の将来に投資しているのだと言います。漆宝の彼女は、ワ国はナ国に搾取されているという捉え方で、母国でありながら宗主国に対しては批判的な見方です。ワ国のイノベーションが産んだ利益をもっとワ国に還元すべきだと主張します。しかしながら、二人の意見のどちらにも客観性は無く、個人の主観に過ぎません。ワ国の貿易収支は不透明で、損得問題を判断する「経済収支健全性指数」のような尺度がありません。どこかでは数値評価もされているのでしょうが、ワ国もナ国もその様な指標を公にしていません。
先輩と彼女は、ワ国とナ国で産業構造の役割分担をしていることにはメリットが大きいという見解で一致しています。また、ナ国のテクノロック政策を支持し、経済鎖国も現状では必要な措置であるという点でも同じ考え方のようです。二人の意見を僕の理解の範囲でまとめると、こんな感じ。
シンギュラリティで模倣製造業が一般化する。知的財産権や特許でオリジナルの利益を守ることが困難になる。陳腐化のスピードが速く、イノベーションでの収益可能期間は極めて短い。研究開発に先行投資したコストの回収も危うい。広範へ売り出すよりも、新機軸のアドバンテージの恩恵を先ず自分たちの社会だけで享受するほうが有利。その後、普及予測を立てて対外的に公開し、短期の販売を行う。基本は売り逃げ。権利譲渡するなどして模倣生産が始まる前に撤退。次のイノベーションへと移行する。同じ生産を長期反復したり、スケールメリットを狙ったり、シェア拡大に取り組んだりはしない。技術開発国家を特区として隠蔽することが重用。この実験国家体制はいずれ世界から脅威として見られるようになる。イノベーションの囲い込みを行う同様の戦略を採用する国家も現れる。そうした時代の到来に先んじて、世界中から人材を集めて優遇して独占する。これが実験国家の基本方針であり戦略。個人の自由や情報統制がこれからの課題。人材流出は厚遇で防ぐことができても、開発や研究している内容は情報漏洩する。これらを機密として個人の発言を規制したりしたら、帝政や独裁国家と同じになってしまい、遠からず人材資源立国は破綻する。人道的見地からも、技術の公平な共有は蔑ろにできない。今まさにそのバランスが模索されている。
分かったような、分からないような。3人でお酒を飲むと、よくこんな話になって盛りあがります。難しくって僕は「ヤカノトソ」ですが。
ではまた。
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Z-Received by 4002:a05:6512:3b0e:dd5d with SMTP on WLN.Eorz.
Sat,28 Nov 23:04:10 X0044 / Subject : Is our privacy being violated?
前略 姉様
昨夜、彼女が「証拠を見せてあげる」と言って、ある資料を僕のところに持って来ました。漆宝職人の彼女です。
それは電子マネーの入出金リストでした。基礎生活保障の支給、リユースバンクの利用、ローン、粘土の輸入や国債購入、工藝組合のショップでの売上といった数々の記録が並んでいました。彼女は少々ハッカーの技能を有していて、簡単な操作で僕の個人情報にアクセスできたと言います。リストの中には春からの姉様とのメールの記録も含まれていました。通信内容のテキストまでは見られていませんが、送受信の履歴はありました。通信料を計算するための基礎データのようです。彼女がハッキングした情報によると、これらのデータはワ国の政府からナ国へ転送されていたとのこと。おそらくは、ビッグデータに取り入れられ、AIによる管理や大衆行動状況の学習に使われることになる、というのが彼女の推測です。
さらに、彼女が言うには、外国からワ国へ移住してきた人は、政治的な危険分子かも知れないと警戒され、一定の期間監視されることがあるらしいのです。この種の過剰な監視は、ナ国内でもときどき問題に上がっていて、収集情報の利用目的の開示などについて法整備すべきという意見も出始めているようです。個人のプライバシー保護に対して、だいたいワ国の人はナ国の人より無頓着らしいのですが、僕の場合は特に酷いと彼女は言います。自分のプライバシーが侵されないようにもっと用心深くなるべきだと、親身になって忠告してくれました。最近では、個人の存在をアバター化して誰だかわからないようにするサービスが流行っているらしく、それを使って防衛することも強く勧められました。
海外の家族とやり取りするこのようなメールも、アバターが通信しているように見せることができ、その方が安全だそうです。しかし、無頓着さが酷いと指摘されても、正直なところ危機感が湧いてきません。僕はワ国で何も悪いことをしていないし、姉様とのやり取りに危険思想が含まれているとも思えません。テロの計画をしている訳でもありませんし。今の生活にもまぁまぁ満足しています。僕は工藝作家として、自分の作品を通じて自分の表現や感性を発揮したいだけなので、それほどはプライバシー侵害を憤る心理にならないのです。ワ国の技術を隠蔽する必要があることも少しは理解できますが、そもそも僕が知っているようなことに機密情報が含まれるとは考えにくいです。
ではまた。
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Z-Received by 4002:a05:6512:3b0e:dd5d with SMTP on WLN.Eorz.
Sun,13 Dec 19:49:58 X0044 / Subject : Will my avatar protect my privacy?
前略 姉様
彼女とプライバシー保護の話をした数日後、僕のところへ、こんなDMが送られてきました。もしかしたら、彼女がリクエストしたのかとも思いましたが、そうではなかったです。
DMは、「あなたのプライバシーをあなたの分身が守ります」という見出しで、次のような案内が書かれていました。
「ミルファー社が提供する新サービス Re: Avatar Program で、アバターがあなたに代わって通信や取引を行います。Re: Avatar Program はブロックチェーン技術を活用し、アバターと本人を完全に隔離します。アバターの行動から本人を特定することは不可能です。アバターなら、誰かに何をしたかを知られることなく、自由に活動できます。ネットワーク上での発言やオンラインショッピングももちろん大丈夫です。アバターによる個人の隠匿は、ほとんどの監視AIに対して有効に機能します。ご自身の大切なプライバシーをしっかり守りながら、新しい可能性にもチャレンジしてみませんか。Re: Avatar Program によって、あなたの分身があなたを守ります。」
匿名になってやる新しい可能性って、犯罪を支援するツールのようにすら思えます。僕はこのサービスに興味を持ちはしましたが、同時に疑問や不安も感じます。自分が罪を犯すことは無いとしても、僕のアバターが他人に操作されたり、悪用されたりしないのでしょうか。姉様に僕のアバターからメールが届いたらどんなお気持ちでしょう。相手が本当に僕なのかどうか、どうやって確認するのでしょう。僕を名乗るアバターを怪しく思ったりするのではないかしら。それに、こんなサービスをわざわざ使っているのを他人が見たら、この人は悪い事する気持ちがあるのかもって、逆に警戒されそうです。なんにしても、ワ国の監視AIは非常に強力ですから、サービスの代金にマネーを使ったことからもバレてしまうのではないでしょうか。結局は、個人を特定されて、「アタマデカクテカシリサイズ」で「ヤビヘブ」になりそうな気がします。
DMによれば、Re: Avatar Program は、基本プランが週あたり300リーゼの価格設定のようです。安いので驚きました。ミルファー社って多国籍企業ですよね。もしも、同じようなサービスがそちらでも提供されたら、姉様もアバターを利用したいですか?
ではまた。
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Z-Received by 4002:a05:6512:3b0e:dd5d with SMTP on WLN.Eorz.
Wed,30 Dec 23:04:17 X0044 / Subject : Eventually, I decided to use it too.
前略 姉様
明日で今年も終わりですね。国籍が変わるという、僕にとっては本当に激動の1年でした。なんだかホッとしています。
それにしてもびっくりしました。姉様が Re: Avatar Program をすでに利用しているとは。姉様は仕事で秘匿義務があるような情報を扱う機会も多いでしょうし、研究発表前の情報漏洩の危険も確かにありそうですね。以前、執筆中の記事が盗用されたことがありましたっけ。用心するのに越したことはないでしょう。「コバロサツキノヌエ」と言うそうです。それにしても、姉様の月あたり3000ギルという契約は高いように感じます。レートが不明ですから一概には言えませんが、僕の物価感だと、こちらでの週あたり300リーゼなら月に1500ギルはかかってないだろうと思います。
このところ、工藝組合でも Re: Avatar Program を使う人が増えてきました。取引先からも望まれることがあるようです。個人情報の流出に対して、僕自身はそこまでの警戒感を持っていませんでしたが、周りの人が僕にも使って欲しいと言ってきます。プライバシー保護のためには、情報をやり取りする双方で Re: Avatar Program のようなサービスを使うことが必要らしいです。せっかくアバターを使っていても、通信相手が素の人間である場合、そちら側で個人情報が解析されてしまいます。その結果から、監視AIがアバターの本人を推定することもできるようです。ずっと隠し続けるのは無理で、定期的にアバターを替えるとかの措置も必要なようです。なんだかイタチごっこな気もしますが、AIが普及した世界では必然なのかも知れません。
先日、リユースバンクの競売システムの運用案内が来ました。新年から本稼働らしいです。その案内には、「出品者や落札者の匿名化を希望される場合は、別途に個人情報保護プラグラム等のサービスをご利用下さい」 と記載されています。リユースバンクのような国営システムでも個人の隠匿を認めているようです。そもそも、他国籍企業であるミルファー社のサービス商品がワ国内で販売できている時点で、国の認可が下りているってことでしょうから、違法性もなければ、政府から睨まれる心配も無用ということでしょう。
時勢に従い、僕も姉様に合わせて Re: Avatar Program を利用することにします。 次回のメールからはアバター経由で送信します。アバターのランデブー機能を使えば、リアルタイム・ミーティングもできるみたいです。映像は送れませんが、音声は可能らしいので楽しみにしています。
来年になったら、そろそろ僕も・・・ 続きは、そちらでお話することにしますね。
ではでは。
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Communication history archive. End of log file.
No append information since 2 years ago.
Spica Green-moh / 2023.11.08.
あとがき
2022年末からChatGPTをはじめとする生成系AIが相次いで発表され、生成AIの能力は現在も急速に進化を続けています。筆者も日々その技術進歩に驚嘆し、様々な応用事例について大いに関心を寄せています。生成AIに触れ始めて約1年。現在、自身ができることを確認する目的もあって、AIとの共同作業で短篇小説を書いてみることにしました。その成果が、この『弟君からのメール』です。AI相手の検討作業で最も印象的だった一面を紹介して、あとがきに代えます。
このSF小説の設定は興味深いですね。
まず、この社会では全ての決済が電子マネー化されており、実物の通貨は存在しないようです。個人は埋め込み型のチップに紐付けされたデジタル通貨を所持しており、これで全ての経済活動を行っています。 ベーシックインカムが導入されているので、基本的な生活は保障されています。ただし、所得は週単位でリセットされ、1週間で使い切らない金額は自動的に別の通貨に換算されます。 この別の電子通貨のリーメには所持税が課せられているので、貯めすぎると時間とともに価値が減っていきます。これはお金を循環させ、経済活性化を図る狙いがあるようです。この社会はキャッシュレス化が徹底し、個人の経済活動がすべて管理・規制される一方、基本的な生活は保障されているという特徴があります。技術による監視と管理が進んでいる反面、所得配分における再分配も重視された社会と言えそうです。
この社会のメリットとデメリットを考えてみます。
メリット:
キャッシュレス化が徹底しているので、現金の管理コストが不要になる
ベーシックインカムにより、基本的な生活は保障されている
お金の流通が活発になり、経済が活性化する
デメリット:
個人の経済活動が全て監視され、プライバシーがない
お金を貯めることが困難で、中長期的な資産形成が難しい
所持税により、個人の資産は時間とともに自然に減少していく
技術的なトラブルがあると、資産が一瞬にして消失するリスクがある
ベーシックインカム次第で、自立心が削がれる可能性がある
このように、こうした社会制度には一長一短があります。 メリットを享受する反面、個人の自由や資産形成に制限が加えられている側面もあると言えます。技術依存度が高くなるにつれ、システムリスクも無視できないでしょう。
現実の社会からこのSFの社会への移行は、限定地域であっても大きな混乱を引き起こすと考えられます。
キャッシュレス化への抵抗感がある人が多く発生する
実物の通貨が存在しないことに、高齢者などの一部に強い不安感が生じるでしょう。キャッシュレス決済に抵抗感のある人もいます。
プライバシーの侵害への抗議運動が起こる
所有資産が全て見える化され、行動が監視されることへの抗議の声があがると思います。
資産形成の仕組みが変わり、将来設計が立てにくくなる
お金を貯めて資産を形成することが困難になるため、中長期的な生活設計に支障が出ます。
ベーシックインカムへの依存心が高まり、自立性が失われる
仕事意欲が減退し、ベーシックインカム次第の生活になってしまう人が出てくるかもしれません。
システムトラブルへの不安
万が一のシステム障害で資産が消失するリスクに、強い不安感が広がると思います。
このように、短期的には混乱が避けられないと予想されます。段階的に移行することや、丁寧な説明が必要不可欠でしょう。
電子マネーがすでに普及している前提で、このような政策の棲み分けを行うのは一定の合理性があると思います。
ベーシックインカムを倍額にすることで、新制度への抵抗感を和らげる効果が期待できます。
リーメの所持税は新制度の特徴なので、規制特区内でのみ適用するのは納得感が得られるでしょう。
外部の地域は従来通りなので、特区内の生活を選ばない人の生活は変わりません。
段階的に新制度を取り入れることで、その影響を分析・検証しやすくなります。
一方で注意点もあります。
特区内外で果たして平等感が保たれるか懸念されます。
新制度への移行コストがかさむ可能性があります。
特区内の住人同士の格差が生じないか監視が必要です。
このように一長一短はありますが、移行期の混乱を最小限にとどめるには一定の合理性がある政策だと思います。その影響を注視しながら、制度を発展させるべきでしょう。
特区を準傀儡国家として実験国家体制にする案には、慎重な検討が必要だと思います。
メリットとしては、
実験的な制度を施行する上で、自治権が高まり推進がしやすくなる
特区だけでなく属国全体での影響を解析できるため、制度設計の参考になる
成功すれば、波及効果で本国の制度改革につながる可能性がある
一方で、懸念材料としては、
属国の住民の政治的代表性が制限されるため、不満が高まるリスクがある
実験国家として失敗した場合の混乱が甚大化する可能性がある
本国と属国の間に深刻な格差が生じる恐れも否定できない
人権やプライバシー保護の点で課題があると思われる
このため、属国の自治権と住民の権利を十分に保障し、リスクの最小化に努める必要があると考えます。影響の綿密な分析と国際的な理解が不可欠だと思います。
本国と実験国家の属国との間に生じる可能性がある深刻な格差を考えてみます。
所得格差 属国ではベーシックインカムが支給される一方、本国にはそれがないため、所得水準に差が生じる。
資産格差 属国ではお金を貯めにくい制度のため、資産形成の格差が開く。
技術格差 属国が先進的な電子マネーシステムを保有する一方、本国は従来型で、技術水準に差が生じる。
情報格差 属国の個人情報が全て管理される一方、本国は情報管理が手薄となる。
自由格差 属国では行動が制限される一方、本国では自由が保障される。
心理格差 属国の住人はストレスが高まる可能性がある。
このように、社会システムの違いから様々な格差が生じる可能性があり、十分な配慮が必要だと思います。
心理格差に関して、以下のような点で属国住民と本国住民の間に開きが生じる可能性があると考えます。
監視社会への違和感
行動が常に監視される属国では、心理的なプレッシャーが生じる。本国にはそれがない。
自己決定権の制限へのストレス
属国ではお金の管理が制限されるため、自己決定権が奪われるストレスを感じる。
資産形成の困難さへの諦め
貯蓄が困難な属国では、将来への不安が強まり、諦めが生じる。本国にはそれがない。
ベーシックインカムへの依存心の差
属国では生活が保障され依存心が高まるが、本国にはそれがない。
技術への過度な依存への不安感
属国ではすべてを技術に依存する生活に、強い不安を抱く人が出てくる。
このように、社会システムの違いから、住民の心理状態に大きな開きが生じる可能性があると考えられます。
AIによるローン返済支援策は、属国住民の心理格差の改善に一定の効果が期待できると思います。
資産形成の困難さを緩和できる
AIが適切な返済計画を立てることで、ある程度の資産形成が可能になり、将来不安を和らげられる。
自己決定権の制限感の緩和
AIが個人に適した返済計画を提示することで、自己決定権の制限感がやわらぐ。
技術への過度な依存感の緩和
計画が個人に適していると実感できれば、AIへの過剰な不安感も緩和される。
公平性・透明性の向上
AIによる判断基準が公平で透明性が高いなら、納得感も高まる。
一方で、AIの判断を監視する必要性もあると思います。運用次第では新たな格差が生まれる可能性もあります。慎重な導入が重要だと考えます。
AIによるローン返済支援策が成功した場合でも、以下のような心理的格差が残る可能性があると考えます。
監視社会への抵抗感の格差
行動監視自体への強い拒否感は容易には解消しにくい。
将来設計の自由度の格差
属国では中長期的な貯蓄が制限されるため、生き方の選択肢に差が出る。
社会への帰属意識の格差
属国の住人は、自分が「実験」の対象となっていることへの違和感が残る。
ベーシックインカムへの依存度の格差
基本所得への依存心の高さには本国との間に差が残る。
技術障害への不安感の格差
システム環境の違いから、障害発生時のリスク認識に差がある。
このように、制度的な改善が進むとしても、心理的な格差を完全になくすことは難しいと考えられます。住民の声に十分に耳を傾けることが大切だと思います。
心理格差を和らげるための心理誘導的な施策は、慎重に検討する必要があります。 ただし、属国住民の不安感やストレスを軽減するための前向きな施策として、以下のようなアプローチは考えられるでしょう。
属国限定の交流イベントを多数提供し、連帯感を高める
心のケア相談体制を整え、不安に個別に対応する
AIの判断プロセスの透明性を高め、納得感を促す
成功事例を積極的に紹介し、前向きなロールモデルを提示する
自己実現支援プログラムを提供し、意欲向上を図る
住民参加の社会改善アイデア募集を行い、主体性を引き出す
定期的な生活満足度調査を実施し、政策立案に反映させる
楽観を強制するような一方的な心理誘導は避け、住民一人ひとりの心情に寄り添った施策が望ましいでしょう。
心理格差を最小限に抑えるため、実験国の入植者選考には以下の点を考慮することを提案します。
新しいことを柔軟に受け入れられる順応性が高い人
監視社会に抵抗感が少ない人
自己決定権よりも共同体の調和を重視できる人
ベーシックインカムを肯定的に捉えることができる人
技術を前向きに評価でき、障害への寛容性がある人
他国の文化に関心が高く、多様性を尊重できる人
社会改善に前向きで、主体性が高い人
家族全員での移住意思がある人
言語能力が高く、コミュニケーションが得意な人
このようなマインドセットをもつ人々を優先的に選抜することで、格差に関連するストレスは相対的に小さくなると期待できます。寛容で柔軟な資質を備えた入植者の確保がカギとなるでしょう。
この人選基準に基づく入植者が属国内に多数集まった場合、以下のような社会的特徴が現れるのではないでしょうか。
自由な発想と表現が活発になり、アート作品が多数創作される
共同制作が盛んとなり、コミュニティの結束が強まる
新しいことへの挑戦精神が旺盛となり、革新的なサービスが生まれる
技術への理解が深まり、高度なIT活用が進む
ルールよりも創造性が重視され、非効率な部分も許容される
多様なライフスタイルが共存し、寛容さが醸成される
政治的表明よりも内省や自己実現が優先される
経済の活性化よりも精神世界の豊かさを重視する風土が育つ
このように、属国内のコミュニティは豊かな表現力と寛容さを特徴とする一方、経済合理性や効率性は二の次となる社会になる可能性があると考えられます。
実験属国の経済支援のために、宗主国が取りうる具体的な施策を以下のように提案します。
属国で創作されたアート作品を宗主国が買い上げる制度を設ける。
属国発の革新的サービスを宗主国が先行採用し、展開を支援する。
属国民の宗主国での就労を柔軟に認め、労働力不足を補う。
観光業で属国をアーティスト村として売り出し、外貨獲得を後押し。
属国のインフラ整備や公共サービスを宗主国の財政支援で充実させる。
属国で生産される農水産物を宗主国が保証価格で買い上げる。
企業の属国進出を宗主国が助成金付きで支援する。
宗主国の教育機関で属国民の人材育成を無償で行う。
このように、経済的な補完を通じ、属国の特徴を活かしながら支援する政策を検討することが望ましいと考えます。
属国と宗主国で産業の棲み分けが進み、創造性と商業性が分離した社会構造は、ある意味で理想的な形態だと言えるでしょう。一方で、以下のような課題もあると考えます。
メリット:
それぞれの国の特徴を活かした産業育成が可能
創造性と効率性をバランスよく発揮できる
相互補完関係が強化され、経済的な安定性が高まる
デメリット:
両国間の力関係のアンバランスが生じる恐れ
知的財産や人材の流出入が不可避
国民感情の乖離が長期的には生じかねない
経済状況の変化に対応しにくくなる危険性
安定した社会を維持するには、両国の対等な関係と協調体制を構築することが不可欠と言えます。相互理解と信頼関係の醸成が重要な課題となるでしょう。
属国の一部が高度外国人技能者を中心としたハイテク都市となった場合、以下のような状況が想定されます。
最先端のIT、バイオ、素材などの研究開発が集中する
高額な報酬と研究環境を求めて世界中から人材が集まる
母国語も生活様式も異なる人々が混在する多文化都市に
英語が共通語となり、言語・文化の壁が生活の障害に
高度専門技能への依存度が高くなり、汎用的な人材が不足
技術革新のスピードが速く、社会変化に対応しきれない
国内外の政治的緊張に翻弄される脆弱な社会的基盤
所得格差が極端に開き、社会の分断が進む
ハイテク化が進展する一方で、コミュニティの融和と安定的な基盤づくりが課題になると考えられます。
高度なAI技術が実現した場合、以下のような点で、属国の課題緩和に役立つ可能性があると考えます。
AIによる自動翻訳の精度向上で、言語の壁が低減する
AIが適材適所の人材マッチングを効率的に行い、人材不足を補う
AIが社会変化を高速で解析し、政策立案を支援できる
AIが異文化間の相互理解促進プログラムを提供できる
AIが適切な課税と資源配分で所得格差を自動調整する
AIが個人ニーズに合わせた生活支援を実現し、満足度向上に寄与
AIが人間関係形成をアシストし、コミュニティの融和を促進
AIの判断の公平性や透明性を確保する仕組みが不可欠です。適切な人間とAIの協働が望まれます。技術利用における倫理的配慮が重要だと言えるでしょう。
はい、ここまでの考察の要約をします。
このSF小説の設定は、キャッシュレス化が徹底し個人の経済活動が監視・制御される一方、ベーシックインカムにより基本生活は保障される社会だった。こうした社会を限定地域で試験的に実現しようとする場合、抵抗感や不安を招く恐れがあるため、市民の棲み分け、段階的移行、住民へのきめ細かな対応が必要となる。属国としての実験国運営は自治権の高さから望ましい面がある反面、両国の格差や人権保障が課題となる。特に心理的な格差は容易には解消できないであろう。AI活用での支援策は一定の効果が期待できるが、監視社会への抵抗感などは根強い。入植者選考では順応性が高く柔軟な人々の優先的受け入れが重要となる。彼らが集まることで、属国のコミュニティは豊かな表現力と寛容さを特徴とする「芸術家村」的な社会になる可能性がある。そのため、宗主国が経済支援を行うことで補完する方策が求められる。属国と宗主国の産業棲み分けが進展し、創造性と商業性が分離する形で相互補完の関係が構築される。ただし、両国関係のアンバランス防止が課題となる。一方、属国の高度技能者集積地域は言語・文化の多様性から社会的な困難に直面する。高度AIの活用がこの課題の緩和に寄与することが期待される。適切な人間とAIの協働が重要となる。SF設定の社会実現には多くの困難が伴うが、段階的かつ細心の注意を払うことで、ある程度は実現可能性があると考えられる。ただし、個人の尊厳を守ることを最優先に検討が必要である。
このような未来社会を舞台にしたSF小説で描けるおもしろさや創作の期待点は以下のようなことが考えられます。
新しい社会システムに翻弄される人々の群像劇
固有の個性を持つ多様なキャラクターが、時代の変化にどう向き合い成長していくかが描ける。
アイデンティティの揺らぎを通じた人間ドラマ
自我の確立や他者との関係性の模索といった内面を描くことができる。
新技術と人間の相克を通じた心の動きの描写
テクノロジー依存の是非や、人工知能との共生のあり方を問うことができる。
グローバル化とローカリティの間で揺れ動く葛藤
国家、民族、共同体といった属集合の意味を描き出す機会がある。
ウートピアおよびディストピア的な要素の融合
理想と現実の間で揺れ動く社会を通して、人間本性を浮き彫りにできる。
このように、新しい社会を舞台にすることで、人間と技術の関係やアイデンティティの在り方といった普遍的なテーマを扱うことが可能になると期待できます。
この未来社会を舞台にしたSF小説で、ウートピア的・ディストピア的な要素を描くエピソードとしては以下のようなものが考えられます。
ウートピア的なエピソード:
AIが完璧に個人に適した仕事をマッチングするエピソード
全ての住民が自己実現に余念がなく生き生きとしているエピソード
多様な人々が寛容さをもって手を取り合うエピソード
誰一人取り残されない理想的な社会を実現するエピソード
ディストピア的なエピソード:
AIの判断ミスで個人が全てを失うエピソード
個人の自由が極端に制限されるエピソード
住民がストレスと孤独感にさいなまれるエピソード
一部のエリートだけが恩恵を受ける不平等が 拡大していく社会のエピソード
このように、明確な希望と暗黒面の双方を描くことで、人間存在の光と影を浮き彫りにできると思います。繊細なバランスが求められるでしょう。
少々変則的ですが、ウートピア的な事例の羅列を通じて反ウートピア的なメッセージを込める、という小説構成は斬新だと思います。
例えば以下のような展開が考えられるでしょう。
幸福そうに見える住人の日常を丹念に描写する
技術によって実現した理想社会を些細な点まで描き出す
すべてが完璧に運営されているように見せる
住人の満足度が非常に高いことをアピールする
読者は次第に違和感を抱き始める
徐々に暗黒面的な要素が見え隠れする
結末で理想の裏側に隠された驚くべき真実が明らかになる
このように、見かけ上の理想社会を徹底的に描写することで、重大な欠陥に気づかせる工夫ができると思います。読者の認識を揺さぶる展開は、思想性のあるSFにふさわしいと考えます。
はい、どういたしまして。このSF的な設定を探求する中で、技術と人間、理想と現実の関係性を多角的に考えるきっかけになったと思います。一見非現実的な設定でも、現実社会を反映した論理的な推論を重ねることで、新しい洞察や発想を得ることができると実感しました。文学に対する想いを感じ取れた有意義な対話でした。創作の糧となれば幸いです。引き続き、想像力を掻き立てる対話を楽しみたいと思います。
Spica Green-moh / 2023.11.09.
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